転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第181話 包囲される村

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 十日後の正午過ぎ。

 コボルトの村の前を流れる川の向こうにセイレイン王領地方軍五百の兵が現れ、矢が届かない約五百メートル先に本陣を築き始めた。

 さらに、兵を分散させ、村の周囲を包囲するように、いくつかの部隊が動き始める。

 コボルト達は、それを確認しても動揺することなく、覚悟を決めていた。

 それは、戦うということをだ。

 だが、その覚悟を地方軍側が察してはいけないので、前日からその為の演技は仕込んである。

 それは、敵の使者がやってきた時に効果を発揮した。

「我は、セイレイン王領地方軍の使者である! 今日は、コボルトの村の諸君に、警告する! 明日の朝までにこの村から全員、大人しく去れ! 現在所持している財産については、食糧と生活道具以外、村から運び出すことを許さない! それらが出来なければ、我々に敵対する意思ありと判断し、この村を総攻撃することになる! 命が惜しければ、速やかにこの村を明け渡すのだ!」

 地方軍の使者は、村をタダで明け渡させ、財産全て没収する気満々の発言をする。

 相手がコボルトということで、歯向かう勇気がないと踏んだのだ。

 もし、拒否したとしても、それによって地方軍は略奪行為を正当化するつもりだろう。

 抵抗したから殺した、という風にである。

 使者が村の正面出入り口前で、大きな声で宣言すると、村からは動揺の声が上がった。

「もう、おしまいだ!」

「ここは前回のように立て籠もって抵抗しよう!」

「だが、相手は地方軍で、沢山の兵士がいるんだぞ!?」

「そうだ、ここは言うことを聞いた方がみんな助かる選択をした方が良い!」

 使者の耳に聞こえるような声で、コボルト達は動揺と抵抗する意思を見せる。

 使者は、思った通りの反応だと感じたのか、ニヤリと笑みを浮かべ、改めて口を開く。

「抵抗しても無駄だぞ! 我々はセイレイン王領の正規軍五百の軍勢である。立て籠もってもそれは通じない。こちらにはその時の為の準備もしてあるのだからな! 大人しくこの村と財産を明け渡さなければ、反乱の意思ありと定めて皆殺しにするぞ!」

 使者はコボルトの反応を見て、脅す方が効果的と考えたのか、残忍な宣告をする。

 そして、堂々と自分達の陣地に戻っていくのであった。


「やはり、思った通りの内容でしたね。──みなさん、見事な演技でした。これで、あちらは僕達が逃げ腰のまま籠城すると考えたはずです。それでは、村のことはお任せして僕は移動します」

 コウはそう説明すると、自らは完全包囲される前に、村から抜け出してアイダーノ山脈がある東側に移動する。

 もちろん、逃げるわけではなく、戦う為だ。

 完全包囲されてからでは、戦いも不利になる。

 それに、コボルトの村の主力は、すでに村にはいないから、その部隊と合流する為でもあった。

 そう、コボルトの主力である精鋭機動歩兵部隊五十名は、村から離れた森で息を殺して潜んでいたのだ。

 これが、コウの作戦である。

 敵は、村に立て籠ると考えるだろうから、その外に兵を伏せ、夜になったら敵本陣に奇襲を仕掛けるというものだ。

 敵は、包囲したコボルトが、外に兵を伏せていると思わないだろうから、背後は警戒していないはず。

 そこから、一気に攻めて糧秣を焼き払い、敵将の首を狙うのが大まかな作戦である。

 もちろん、それだけでは終わらず、村の警備隊と予備兵部隊も奇襲に呼応して打って出る手はずになっていた。

 女子供は、防壁内で大きな音を鳴らし、包囲している兵の動揺を誘うことにもなっており、文字通り、コボルトの村全体の戦いとなる。

 当然ながら、奇襲が失敗すれば、第二作戦も用意しているが、それは、奥の手となるドワーフ部隊の投入であり、これはなるべく使いたくない手だ。

 地方軍の次は中央軍になるだろうから、その時までは、秘密にしておきたいからである。

 奇襲の成功如何で、コボルトの村のみならず、エルダーロックの街にも大きく関わってくる作戦だから、コウはこの作戦を確実に成功させる為、奇襲部隊に合流するのであった。


「そうか! 動揺しつつも立て籠もる様子だったか! わははっ! 私の手のひらの上で踊っているだけとも知らず、愚かなことだな!」

 地方軍五百を率いる司令官は、セイレイン王領の武官の一人で、今回、コボルトの村に移譲を迫る提案をした人物である。

 前回、盗賊に村を襲撃させて数を間引きする、という作戦もこの人物で、地方官吏からは成功したが、村に籠城して多少抵抗はしたようだ、という報告を受けていたから、今回もその功により、司令官を命じられたという経緯があった。

 もちろん、地方官吏は盗賊によるコボルト襲撃が失敗に終わったことを知っていたのだが、その失敗を自分達が押し付けられることを恐れて、成功したと報告していたのである。

 その為、司令官は一流の兵法家気取りで、悦に入っていた。

「さすが、司令官殿です。ですが、本陣だけでなく、包囲している部隊にも本格的に陣を築かせていませんが、よろしいので?」

 部下の一人が、司令官にゴマを磨りつつ、懸念を口にする。

「明日の昼を待たずして、あの村を攻め落とすことになる。そんな早く終わる戦いの為に、わざわざ陣を築いていては、セイレイン陛下から預かった軍資金を無駄にしてしまうではないか。まあ、防壁を超える為に、梯子車は複数組み立てさせているがな。それよりも、食事の用意をさせよ。今日は英気を養うぞ! 明日、戦いが始まったら私が一番にあの村に乗り込むのだからな!」

 司令官は、自分の勇猛さを部下に示したいのかそう告げると、本陣内に張ったテントへと戻っていくのであった。

 そして、陽は落ち、コボルトの村のある緩衝地帯に夜が訪れる。

 地方軍の本陣のみならず、村を包囲する部隊の陣からも宴会をする声や音が聞こえていた。

 どうやら、コボルトは、村に引き籠って怯えていると思っているようだ。


「コウ殿、敵は油断していますね……」

 精鋭機動歩兵部隊に配属されたコボルトのレトリーが、コウに声をかけた。

「寝静まった頃に、奇襲を仕掛けますので、今はみなさんもゆっくり休んでください。僕も少し休みますので」

 そういうとコウは、みんなが緊張する中、森の中の暗い茂みの中で、就寝する。

 その肝の太さに緊張していたレトリーも呆れるのであったが、一番頼りにしているコウが大丈夫だというのだから大丈夫なのだろうと、みんなも安心して見張り以外は、仮眠を取ることにするのであった。
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