魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき

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第2章 

密猟者の拠点

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密猟者の拠点は、森の奥深くで異様な存在感を放っていた。

その入り口には、切り拓かれた木々の間に、場違いなほど強固な石造りの大門がそびえ立っている。

カイルがその門へ近づくと、サーチスキルの精度が向上した。意識を集中させるまでもなく、脳裏には拠点の内部構造が克明に浮かび上がる。

檻の中で重い鎖に繋がれ、魔力抑制の香炉によって意識を混濁させられたワーウルフたちの姿。彼らの細く震える鼓動が、カイルの心に痛々しく響いた。

「早く助けてあげないと。みんな、すごく苦しそうだ」

カイルは門に手をかけ、押し開けようとした。しかし、重厚な石門は固く閉ざされ、巨大な錠前が魔法的に封印されている。

レベル0の魔物使いの腕力では、びくともしない。

「鍵がかかってる。どうしよう、シリウス」

カイルは隣に座るシリウスを見つめた。
ふと、魔物使いの基礎教本に記されていた一節を思い出す。

『魔物使いは、契約した魔物と魔力を共鳴させることで、その能力を一時的に引き出すことができる』

カイルはわらをも掴む思いで、シリウスとの魔力パスに意識を向けた。

シリウス、力を貸して。みんなを助けるために。

カイルが念じた瞬間、深層で繋がっていたシリウスとカイルの魔力と混ざり合い、力が溢れ出す。

「うわっ、なにこれ。止まらない」

カイルが驚いて門を突き放すように手をかざした瞬間、爆音と共に世界が揺れた。

共鳴し、増幅された魔力は物理的な衝撃波へと変換され、数トンはあるはずの石門を根元から引き剥がした。門は紙屑のように宙を舞い、そのまま拠点の中央へと直撃する。

轟音と共に砦の一部が砕け散り、巨大な砂塵が舞い上がった。

あまりの振動と爆音に、拠点の中から武装した闇ギルドのメンバーたちが次々と飛び出してきた。

「敵襲だ。迎撃しろ」
「門が吹っ飛んでるぞ!何が起きてやがる」

男たちは殺気立ち、剣や斧を構えて周囲を警戒する。しかし、砂埃の先に立っていたのは、一人の少年と小さな子犬だけだった。

「なんだ、ただのガキじゃねえか。おい、ここで何してやがる」

一人の男がカイルを威圧するように一歩踏み出す。だが、別の男がその隣でシリウスに目を留め、下卑た笑みを浮かべた。

「待て。あの犬を見ろ。珍しいワーウルフの個体だぞ!おい、ガキ。その犬を置いてさっさと失せろ。」

男たちが武器を鳴らし、カイルとシリウスを取り囲む。

「ダメです。シリウスは渡しません。僕が守るんだ」

カイルは震える足でシリウスの前に立ち、必死に両手を広げた。

レベル0の自分に勝ち目がないことは分かっている。それでも、この小さな家族だけは譲れなかった。

「ハッ、死にたいらしいな。死んで文句は言うなよー

男たちが一斉にカイルへ襲いかかった。その瞬間だった。
シリウスが低く唸り、目にも留まらぬ速さで地を蹴った。

カイルの視界には、襲いかかってきた男たちが次の瞬間には全員、木の葉のように後方へ吹き飛んでいた。

「えっ」

カイルが目を丸くする。眼前には誰もいない。男たちは壁に激突し、悲鳴を上げる暇もなく意識を失っていた。

「すごい突風だ。運が良かったみたいだ」

カイルは、それがシリウスによる蹂躙だとは夢にも思わず、山の天気が急変したせいだと錯覚した。

拠点を覆っていた結界はすでに霧散し、中への道は完全に拓かれている。カイルはシリウスを連れ、静まり返ったアジトの中へと足を踏み入れた。

アジトの最深部、そこには不衛生な檻が並び、ワーウルフたちが詰め込まれていた。
彼らの首や足には、魔力を吸い取り自由を奪う「奴隷の鎖」が巻き付いている。

カイルはその光景に、胸を締め付けられるような怒りを感じた。

「今、助けるからね。もう大丈夫だよ」

カイルは一番近くにいたワーウルフに駆け寄った。

本来、専用の鍵か高度な解除魔法が必要なはずの奴隷の鎖。しかし、シリウスと魔力が共鳴し続けている今のカイルにとって、それはただの古びた紐も同然だった。

カイルが鎖を両手で掴み、無造作に力を込める。

バキィッ、という、金属が砕けるとは思えない音が地下室に響き渡った。

高純度の魔導金属で作られたはずの鎖が、カイルの力任せの引き絞りに耐えきれず、まるで飴細工のように引きちぎれた。

「えいっ。これも、これも」

カイルは次々とワーウルフたちの元を回り、素手で鎖を破壊していく。

やがて、拘束から解放されたワーウルフたちが、ゆっくりと意識を取り戻した。彼らの眼前にいたのは、返り血一つ浴びていない少年と、その隣で静かに佇む一匹の獣。

意識の戻ったワーウルフたちは、一斉にアジトの出口へと駆け出していった。

「こんな場所からはすぐ逃げ出したいよね。」

カイルは、彼らの反応が自分たちに向けられた畏怖であることには気づかず、ただ彼らの無事を喜んだ。

「さて、シリウス。倒れてる人たちを捕まえよう。このまま、放っておくわけにもいかないし」

カイルは、外で気絶しているギルドメンバーたちをどうにかしようと振り返った。

しかし、シリウスはそんなことには全く興味がない様子で、さっさと出口へと歩き出してしまう。

「あ、ちょっと待ってよシリウス。一人で行っちゃ危ないよ」

カイルは慌ててシリウスの後を追いかけた。
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