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約束と運命の鎖
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ボールペンがもろくなっているということは、僕の天力だって限界のはずだ。
「たのむ、鎖!」
千切れてくれ!
もう一度、腕を思い切り振り上げて、落とす。
暑い。
空気が熱くて苦しい。
まだ、鎖は千切れない。
「僕には、これくらいしか、できないのに!」
これくらいのことも、まともにできないなんて。
畜生!
果たして自分が声に出しているのか、それとも心の中で叫んでいるのかすらもわからなかった。
「これで、終わりにしてくれっ!」
金属音が耳に障る。
最後の一撃は、鎖を砕くように千切った。
そして、ボールペンも砕けてインクが染み出した。
破片が少し、手に刺さった。
「……やっ、た」
鎖はすべて千切れて、杏奈ちゃんは解放された。
這うように水を溜めたバケツに寄り、残った力で、ひとつ転がす。
床に水が広がった。
「これで、少しは保つのかな……」
残った一つのバケツと杏奈ちゃんを抱えて、2階へと戻らなければいけない。
しかし僕には、既に立ち上がる力すら残っていない。
服が濡れていて重い。
杏奈ちゃんに這いよると、彼女の口がわずかに動いた。
「ごめん、なさい」
彼女の隣に寝ころんだとき、もう僕にはそれ以上動く力は残っていなかった。
「もうすぐ、消防の人が来るから」
僕にはもう、彼女を勇気づけることしかできなかった。
視界がぼやける。
視点が定まらない。
本当は、彼女を抱えて格好良く2階へと戻っていくつもりだったのに。
素人考えで突っ込むんじゃなかった。
「今なら、間に合うかも、動けるなら……2階に」
――君だけでも。
彼女は、静かに首を横に振る。
そして。
「でき、ません」
かすれた声で、そう言った。
「やっぱり、動けないの? だったら、安静に……」
「動けても」
小さな声だったが、強さがあった。
「独りで、いきたくない」
「そんな」
彼女の大きな目は、半分くらいしか開いていない。
閉じてしまいそうなのを、必死に耐えているようだった。
「せっかく、会えた、のに……」
――もし、ここで彼女が目を閉じたら、もう一生覚めることはないんじゃないか。
えもいわれぬ恐怖が僕を襲う。
「杏奈ちゃん、しっかりして!」
僕の声は届いているのだろうか。
彼女はゆっくりとしたまばたきをしばらく繰り返し――僕の願いも儚く、そのまま目を閉じてしまった。
「杏奈ちゃん、……杏奈ちゃん!」
息はある、けれど。
今の僕には、とてもポジティブに考えるなんて出来なかった。
今になって無理に体を起こして彼女を揺さぶり、ありったけの声で叫んだ僕は、ガクンと全身の力が抜けて、彼女の上に被さるようにして倒れた。
今度はもう、指先にも力が入らない。
僕、死んじゃうのかな。
杏奈ちゃんの盾くらいには、なれるかな。
本当は、無事に助けてあげたかった。
「ごめんね――」
ああ、なんてあっけないんだ。
最後に視界に入ったのは、彼女の顔だった。
閉じようとする瞼に抵抗することもなく、僕は暗闇の中に吸い込まれていった。
僕の無くした記憶の最後は、一体どんな景色だったんだろう、なんて考えながら。
「たのむ、鎖!」
千切れてくれ!
もう一度、腕を思い切り振り上げて、落とす。
暑い。
空気が熱くて苦しい。
まだ、鎖は千切れない。
「僕には、これくらいしか、できないのに!」
これくらいのことも、まともにできないなんて。
畜生!
果たして自分が声に出しているのか、それとも心の中で叫んでいるのかすらもわからなかった。
「これで、終わりにしてくれっ!」
金属音が耳に障る。
最後の一撃は、鎖を砕くように千切った。
そして、ボールペンも砕けてインクが染み出した。
破片が少し、手に刺さった。
「……やっ、た」
鎖はすべて千切れて、杏奈ちゃんは解放された。
這うように水を溜めたバケツに寄り、残った力で、ひとつ転がす。
床に水が広がった。
「これで、少しは保つのかな……」
残った一つのバケツと杏奈ちゃんを抱えて、2階へと戻らなければいけない。
しかし僕には、既に立ち上がる力すら残っていない。
服が濡れていて重い。
杏奈ちゃんに這いよると、彼女の口がわずかに動いた。
「ごめん、なさい」
彼女の隣に寝ころんだとき、もう僕にはそれ以上動く力は残っていなかった。
「もうすぐ、消防の人が来るから」
僕にはもう、彼女を勇気づけることしかできなかった。
視界がぼやける。
視点が定まらない。
本当は、彼女を抱えて格好良く2階へと戻っていくつもりだったのに。
素人考えで突っ込むんじゃなかった。
「今なら、間に合うかも、動けるなら……2階に」
――君だけでも。
彼女は、静かに首を横に振る。
そして。
「でき、ません」
かすれた声で、そう言った。
「やっぱり、動けないの? だったら、安静に……」
「動けても」
小さな声だったが、強さがあった。
「独りで、いきたくない」
「そんな」
彼女の大きな目は、半分くらいしか開いていない。
閉じてしまいそうなのを、必死に耐えているようだった。
「せっかく、会えた、のに……」
――もし、ここで彼女が目を閉じたら、もう一生覚めることはないんじゃないか。
えもいわれぬ恐怖が僕を襲う。
「杏奈ちゃん、しっかりして!」
僕の声は届いているのだろうか。
彼女はゆっくりとしたまばたきをしばらく繰り返し――僕の願いも儚く、そのまま目を閉じてしまった。
「杏奈ちゃん、……杏奈ちゃん!」
息はある、けれど。
今の僕には、とてもポジティブに考えるなんて出来なかった。
今になって無理に体を起こして彼女を揺さぶり、ありったけの声で叫んだ僕は、ガクンと全身の力が抜けて、彼女の上に被さるようにして倒れた。
今度はもう、指先にも力が入らない。
僕、死んじゃうのかな。
杏奈ちゃんの盾くらいには、なれるかな。
本当は、無事に助けてあげたかった。
「ごめんね――」
ああ、なんてあっけないんだ。
最後に視界に入ったのは、彼女の顔だった。
閉じようとする瞼に抵抗することもなく、僕は暗闇の中に吸い込まれていった。
僕の無くした記憶の最後は、一体どんな景色だったんだろう、なんて考えながら。
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