採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

文字の大きさ
145 / 345
第2章 現実と仮想現実

第146話 信じられない

しおりを挟む
「なるほど……。つまり、お嬢としては探索や調査プレイヤーへのフォローを優先すべき……と」
「僕たちとしては、生産設備を充実させるのが先決かと思いますが。いえ、姫のお考えを否定する訳ではないのですが……」

 予想通りではあるけれど、拠点設備の話はすんなりといかないみたいだ。
 たぶん、シンシさんもヤカタさんも、それぞれがそれぞれの生産プレイヤーの代表として来てるだけに、自分達の設備を早く充実させてしまいたいんだろう。

「そうだね。私としても、生産用の設備や建物を充実させないといけないのはわかってる」
「ではなぜ?」
「……さっき、こちらのラミナさんに聞いたんです。生産プレイヤー以外のプレイヤーから『不満』が出てる、って」

 言いながら、僕は視線を横に座る彼女へと送る。
 多少慣れてきたって言っても、まだまだ緊張感が抜けきらない僕と違って、ラミナさんはいつもと変わらない感じで、なんだかちょっと安心する。
 そんなことを考えていた僕の隣で、彼女は静かに立ち上がる。
 そして、いつもの無表情のまま、口だけを動かした。
 
「アキの言う通り。少しだけ、だけど……不満出てる」
「なるほど」
「でも少しだろ? なら、さっさとこっちを終わらせたら良いだろ」
「それはそうなんですが、その……」
「……なるほど。姫は僕たちの力を信じられないと」
「え? いや、そんなことは言ってないんですけど……」

 僕の言葉を聞いてすらいないのか、嘆かわしい……と言わんばかりに、シンシさんは大きくため息を吐く。
 そして、急に立ち上がったかと思いきや、ヤカタさんの隣に歩いていき、座ったままの彼の肩へ手を乗せ――

「では姫、僕とヤカタの……いえ、僕らを代表とするチームの力をお見せいたしましょう。いいよね、ヤカタ」
「ああ、任せろ。お嬢、見ていてください」
「え、あの、ちょっと!?」

 僕の制止も聞かず、2人はそれぞれの作業場に向けて走り出してしまう。
 ……いや、まだなにも決まってない……決まってないよ!?

「……アキ。がんばって」
「……うん」

 あまりの出来事に打ちひしがれるように椅子へと座った僕の頭を、ラミナさんは優しく撫でてくれる。
 これは、予想以上に……大変だぞ……。



 あの会議から少し経って、精神的ショックから立ち直った僕は、ひとまず調理プレイヤー用のスペースに戻ることにした。
 というか、今はお薬でも作って落ち着きたい……。

「アキさん、申し訳ございません……。お力になれず……」
「いや、オリオンさんのせいじゃないですよ。あの状況は、もう止めようがなかったですし」

 僕とラミナさんの後ろから、落ち込んだようなオリオンさんの声が届く。
 オリオンさんとしては、きちんとみんなが納得できる結果を迎えたかったんだろうけど……。
 こればっかりは仕方ないよ……。

「姉さん、似てた」
「あー……シンシさん? 確かにそうかも」
「そう」
 
 見た目とか口調とか……全然違うんだけど、あの勢いのまま自由に進んじゃうところとかは、すごく似てる気がする。
 ……でも、ラミナさんも興味があるものには一直線なところは似てると思うんだけど。

「ひとまずは、僕たちだけでもできることをやっていくのと……」
「協力してもらえる方を探す、ところですね」
「うん。探索や調査に加わってる人でも、こっちを手伝ってくくれる人がいるかもしれないしね」
「ラミナと、姉さんも」

 並んで歩いていた僕の前を塞ぐように、彼女は立ち止まり僕の左手を取る。
 そして、いつもと変わらない表情……いや、いつもよりも少しだけ真剣な雰囲気の無表情で、顔をあげた。

「だからアキ。がんばって」

 たった一言。
 さっきも僕に言った言葉をもう一度、確認するように口にする。
 感情の読み取りにくい目は、僕を捉えて離さない。
 まるで、その言葉にすごく重要なことが隠されているみたいに。

「……行こう」

 まばたきするように、僕の目から視線を外し、彼女は手を離す。
 そして、先導するかのように、僕の前を歩き始めた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

処理中です...