採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

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第2章 現実と仮想現実

第181話 あいつらはどこだ

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 後方で鉄と鉄がぶつかり合う音や、風を切る音が聞こえる中、ラミナさんに手を引かれつつ走る。
 本当なら一気に走り抜けてしまうのが、一番良いんだろう……でも、僕は……。

「っ2人とも! 本当に、ありがとう!」

 少しだけ足に力を入れて、後ろへと振り返り、頭を下げる。
 見えたか、聞こえたかは分からない。
 けれど、きっと受け取ってくれたんだろう。
 顔を上げた僕の目に、2人の顔は見えなくても……少しだけ掲げられた手が、それを示してくれていたから。

「アキ、急いで」
「一気に抜けるよー!」
「うん。まずは森を抜けてしまおう。視界が開けるだけでも、行動しやすさはかなり違うはず。ハスタさん」
「わかってるよー! まっすぐ突っ切るから、しっかり付いてきてね!」

 言い切るが早いか、ハスタさんは手に持つ槍を大きいものに変え、加速。
 さっきまでの槍に比べると、穂先が長く、重そう……。
 まるで防御は考えてないような……突撃するためだけの槍。

「すごい……」

 多分、現実では取り回すことすら難しい武器。
 それを身体全体で支えることで、無理矢理ではあるけど武器として使ってる……。
 ……強く、なってるんだ。

「それにひきかえ……僕は……」

 守られて、ばっかりだ。
 実際、戦いにくい武器だし、って言うかそもそも武器じゃないし……。
 だから、戦えなくても仕方ない、仕方ないんだけど……。

「姉さん、頭が悪いから」
「……え?」
「姉さん。テストではいつもギリギリ。お母さんもよく怒ってる」
「そ、そうなんだ……」
「でも、諦めない」
「諦めない?」
「そう。頭が悪いから、テストではいつも解ききれてない。時間が足りてない。でも、最後まで頑張ってる」
「そっか……」

 ハスタさんらしいと言えば、ハスタさんらしいかな。
 きっと、解けなくても、なんども繰り返し考えて、解けるまで頑張っちゃってるんだろう。
 僕は解けそうなものから手を付けるけど、彼女はそうじゃない。
 とにかく目の前のものを全力で……。

「ラミナさんは、ハスタさんのこと……ちゃんと見てるんだね」
「そう。姉さん、好き」
「うん。見てれば分かるよ」

 僕が初めて2人に会ったあの日。
 ラミナさんとハスタさんは、すごい連携で玉兎を倒してた。
 その後の薬草集めでも、ラミナさんはハスタさんをよく見ていて……ハスタさんが薬草を見つけるまで、見つからないフリをしてたっけ?
 ……そういえばあの時、ラミナさんの顔が……。

「抜けたー!」
「っ! はい!」

 思い出してしまった笑顔を振り払うように、声を出して進む速度を上げる。
 い、今はそれどころじゃないからね!

「……止まって」
「んぐっ!?」

 一気に森から遠くまで行こうとした僕の服を掴んで、ラミナさんが後ろへと引っ張ってくる。
 そのせいで、頭だけ前に出たからか、息が……!

「な、何?」
「誰か来る。姉さん」
「わかった!」

 ラミナさんの意図するところが分かったのか、ハスタさんはまた武器を持ちかえる。
 今度は細く、少し短めの槍だ……アルさんの大剣と同じくらいかな……?
 彼女はそれを前へと構え、いつでも踏み込めるように、腰を落とす。
 僕もそれにならって、インベントリから草刈鎌を手に取った。

「おーおー、熱烈な歓迎じゃねーか」
「この声って……!」
「姉さん」
「――ハッ!」

 声を聞くだけで、少しだけ震えが走る……。
 そんな僕の反応で理解したのか、ラミナさんは短く合図を出し、それに応えるように、ハスタさんは一歩前へと踏みだして、前へと槍を突き出した。

「良い突きじゃねぇか。だが、ちょっと甘いな」
「ッ!」
「俺はその程度じゃやられねぇよ。だが……今はそれどころじゃ無いねーんだよ」
「それどころじゃ、ない?」

 腰から抜いた剣でハスタさんの槍を弾き、だらりと腕を落とす。
 なんだろう……今までと比べて、声に迫力が無い……?

「アキっつったか。あいつらはどこだ?」
「あいつらって……」
「エセ忍者と下手くそ狩人だよ。俺が死んだ後にあいつらは生きてんだろ?」
「死んだ……? そういえばさっき、忍者の人が赤い鬼って」
「そーそー、あいつ滅茶苦茶過ぎるぜー? 矢を掴んで俺のココに刺しやがった……ありゃビビるわ」
「うわ……」

 彼は、そう言いながら親指で喉の中心を軽く叩く。
 その場所に……矢を突き立てる……。
 想像しただけでも、恐ろしさに顔が歪む。
 赤い鬼って、あの場所と話的にリュンさんだよね……滅茶苦茶だ……。

「それで、知ってんだろー? あいつらの場所。俺は今、お前らと戦う気は無いねぇ。あいにく、デスペナ中だからさ」
「……僕らの来た方向にまっすぐ奥へ。枝も葉も魔物も、全部無視してまっすぐ突き抜けたから、跡があると思う」
「アキ?」
「死んですぐは体が筋肉痛を強くしたみたいに痛い。だから、行っても戦えないとは思う。けど……」
「アキちゃん……?」
「あの2人を、助けてあげて欲しい。……助けてくれたから」

 前に立つハスタさんを押し退け、彼と向かい合ってから頭を下げる。
 僕の後ろで、息を飲む声が聞こえたけれど……今はこれしかないから。

「はっ。なに言ってんだ、てめえは」

 頭を下げたままの僕の頭上から、少し小馬鹿にしたような声が降ってくる。
 その声に、反論しようと顔を上げた直後……

「……だが、当たり前だ。俺の仲間だ、言われるまでもねぇ」 

 なんて、彼は真面目な顔で、そう答えてくれたのだ。
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