182 / 345
第2章 現実と仮想現実
第183話 別に問題無い
しおりを挟む
今回の話も、トーマ視点となります。
――――――――――――――――
「なぁ、お前……誰だ?」
そう問いかけながら、インベントリを操作して、アキから貰ったポーションを取り出す。
疲れた時はアルペ味ポーションでも飲んで、リセットってな。
「トーマ? 何を言って……」
「下手な芝居はもーえぇわ。お前は俺のことはおろか、アイツのこともわかってへん見たいやしな」
「……チッ」
舌打ちと共に、溶けるようにその身が霞む。
なるほどな……。
「近い服装や色合いに加え、熱で光の曲がり方を変える……。現実じゃまずあり得ない変装方法やな」
「あいにく、現実じゃ出来なくても、こっちじゃスキルが対応してくれるんでな。ある程度をそれ以上にしてくれるってことさ」
そう言って男は口を歪めて笑う。
しかし、わざと……なんだろうが、特徴が少ない。
太くも無く細くも無い体型に、髪も短く、顔も平凡。
ウォンも相当に普通だが、こいつの場合は平均を狙っている感じがするな……。
「それで、俺に何の用や」
「用ってほどでもないさ。ただ、動かれると厄介なんでね。消耗してる内に縛り上げとこうかと思ったんだがなぁ」
「そんで毒かいな」
「そそ。それで終われば楽だったんだがね……お互いに」
「……諦めてくれるって選択肢は――」
「――無いね」
男は静かな声でそう呟き、軽い音を立てながら地を蹴った。
右手にはごくありふれた長剣。
それが一瞬差し込む光を反射し……俺の視線を引き寄せる。
「余所見とは……余裕そうだね」
たったその一瞬。
その一瞬で、男は俺の懐まで歩を進め、みぞおちへ右腕を振るう。
右手は……剣を持っていた、はずじゃ……!?
「――グッ!?」
「やはり、だいぶ疲れてるみたいだね。あんなブラフに引っかかるなんて」
「ブラフ……?」
言われて男の後ろへと目線を動かせば、捨てられ、地面の上で光る剣。
……俺の視線が向いた瞬間に、手から離したのか。
それも、向きを変えないように意識して……。
「普段の君ならこんなブラフ、まず引っかからないでしょう?」
「クソッ!」
腰からダガーを抜き、そのまま男へと振るうが、すでに離れられた後。
さっきの変装もそうだったが、こいつ……視線やタイミングをずらす事に長けてやがる……。
マトモに相手するのは避けた方が良さそうだな……。
「っはー……つーて、お前の攻撃じゃいつまで経っても倒されねーぜ?」
「それはまぁ、そうでしょう。さっきのは、君の服の下に防具なんかが仕込まれてないか調べる程度でしたから。でも、着てないってことはわかりましたので、ここからは気絶させる気で行かせて頂きます」
「……やれるもんなら、やってみろよ」
「では」と、男は短く息を切り、再び攻めへの口火を切る。
今度は手に何も持たず、俺の方へとまっすぐ駆けてきた。
……ホントに何も持ってないのか?
そう思わせて、実は……ってやつじゃないのか……?
「――クソッ!」
「おや、そんなに大きく避けるなんて……それじゃまた攻撃が届かないですね」
咄嗟に投げたダガーは、苦も無く避けられる。
ペースに……飲まれるな!
「まぁ僕としては、そうやって君が勝手に自滅してくれれば楽なんだけど」
「そりゃ無理な希望やな」
「そうだねぇ……。仕方ない」
その言葉の直後、急に男の雰囲気が変わる。
なんだか……よく見知った……。
「それじゃトーマ。行くっすよ!」
「――ッ!?」
俺の方へまっすぐ走りながら、両手で持った槌を振りかぶる。
アレを受けたらさすがに不味い!
驚いて止まってしまった足を無理矢理動かし、左側へと飛び退く。
俺が離れた瞬間、真横から岩を砕くほどの轟音が響いた。
「……スミスか」
「さすがトーマ。よく分かってんじゃんか」
「驚いたが、それだけや。別に問題無い」
「へぇ……。じゃあ……」
言いながら男は槌を振りかぶり、地面へと叩きつける。
そうして飛び散った砂利石を避けるように、俺は後ろへと飛び退いた。
「これなら、届くか?」
「マジかよっ!?」
「今度こそ、本気で戦って貰うぞ。トーマ!」
身の丈ほどある大剣を前に突き出しながら、男が砂埃を抜けてくる。
おいおい……この姿って……。
「アルなんて……ありかよ……!」
――――――――――――――――
「なぁ、お前……誰だ?」
そう問いかけながら、インベントリを操作して、アキから貰ったポーションを取り出す。
疲れた時はアルペ味ポーションでも飲んで、リセットってな。
「トーマ? 何を言って……」
「下手な芝居はもーえぇわ。お前は俺のことはおろか、アイツのこともわかってへん見たいやしな」
「……チッ」
舌打ちと共に、溶けるようにその身が霞む。
なるほどな……。
「近い服装や色合いに加え、熱で光の曲がり方を変える……。現実じゃまずあり得ない変装方法やな」
「あいにく、現実じゃ出来なくても、こっちじゃスキルが対応してくれるんでな。ある程度をそれ以上にしてくれるってことさ」
そう言って男は口を歪めて笑う。
しかし、わざと……なんだろうが、特徴が少ない。
太くも無く細くも無い体型に、髪も短く、顔も平凡。
ウォンも相当に普通だが、こいつの場合は平均を狙っている感じがするな……。
「それで、俺に何の用や」
「用ってほどでもないさ。ただ、動かれると厄介なんでね。消耗してる内に縛り上げとこうかと思ったんだがなぁ」
「そんで毒かいな」
「そそ。それで終われば楽だったんだがね……お互いに」
「……諦めてくれるって選択肢は――」
「――無いね」
男は静かな声でそう呟き、軽い音を立てながら地を蹴った。
右手にはごくありふれた長剣。
それが一瞬差し込む光を反射し……俺の視線を引き寄せる。
「余所見とは……余裕そうだね」
たったその一瞬。
その一瞬で、男は俺の懐まで歩を進め、みぞおちへ右腕を振るう。
右手は……剣を持っていた、はずじゃ……!?
「――グッ!?」
「やはり、だいぶ疲れてるみたいだね。あんなブラフに引っかかるなんて」
「ブラフ……?」
言われて男の後ろへと目線を動かせば、捨てられ、地面の上で光る剣。
……俺の視線が向いた瞬間に、手から離したのか。
それも、向きを変えないように意識して……。
「普段の君ならこんなブラフ、まず引っかからないでしょう?」
「クソッ!」
腰からダガーを抜き、そのまま男へと振るうが、すでに離れられた後。
さっきの変装もそうだったが、こいつ……視線やタイミングをずらす事に長けてやがる……。
マトモに相手するのは避けた方が良さそうだな……。
「っはー……つーて、お前の攻撃じゃいつまで経っても倒されねーぜ?」
「それはまぁ、そうでしょう。さっきのは、君の服の下に防具なんかが仕込まれてないか調べる程度でしたから。でも、着てないってことはわかりましたので、ここからは気絶させる気で行かせて頂きます」
「……やれるもんなら、やってみろよ」
「では」と、男は短く息を切り、再び攻めへの口火を切る。
今度は手に何も持たず、俺の方へとまっすぐ駆けてきた。
……ホントに何も持ってないのか?
そう思わせて、実は……ってやつじゃないのか……?
「――クソッ!」
「おや、そんなに大きく避けるなんて……それじゃまた攻撃が届かないですね」
咄嗟に投げたダガーは、苦も無く避けられる。
ペースに……飲まれるな!
「まぁ僕としては、そうやって君が勝手に自滅してくれれば楽なんだけど」
「そりゃ無理な希望やな」
「そうだねぇ……。仕方ない」
その言葉の直後、急に男の雰囲気が変わる。
なんだか……よく見知った……。
「それじゃトーマ。行くっすよ!」
「――ッ!?」
俺の方へまっすぐ走りながら、両手で持った槌を振りかぶる。
アレを受けたらさすがに不味い!
驚いて止まってしまった足を無理矢理動かし、左側へと飛び退く。
俺が離れた瞬間、真横から岩を砕くほどの轟音が響いた。
「……スミスか」
「さすがトーマ。よく分かってんじゃんか」
「驚いたが、それだけや。別に問題無い」
「へぇ……。じゃあ……」
言いながら男は槌を振りかぶり、地面へと叩きつける。
そうして飛び散った砂利石を避けるように、俺は後ろへと飛び退いた。
「これなら、届くか?」
「マジかよっ!?」
「今度こそ、本気で戦って貰うぞ。トーマ!」
身の丈ほどある大剣を前に突き出しながら、男が砂埃を抜けてくる。
おいおい……この姿って……。
「アルなんて……ありかよ……!」
0
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します
miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。
そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。
軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。
誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。
毎日22時投稿します。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる