採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

文字の大きさ
270 / 345
第2章 現実と仮想現実

第271話 行ってきます

しおりを挟む
 空が茜色に染まる頃、僕らは土の神殿近くの平原にいた。
 メンバーは僕、アルさんのパーティー4人、トーマ君、ラミナさんとハスタさんに、リュンさん。
 それにスミスさんを加えた、計10人……世界樹のダンジョンを攻略する予定のメンバーだ。

「しかしアキよ。本当にここが入口なんじゃな?」
「うん。ハンナさんはそう言ってたから間違いないと思う。元々、トレント族の人達が世界樹の中に入る際に使ってるルートみたいだし」
「逆に言や、ここ以外からは入れんってことやで」
「ふむ。ならば仕方あるまい。開くのを待つとするかの」

 トーマ君の言葉に、リュンさんは鼻息荒くも納得した素振りを見せ、下駄を鳴らした。
 ハンナさんの予想では、ここ――僕が見つけていた向きのおかしい草花のところ――が入口に変化するのは、世界樹が完全に魔物と化し、中にダンジョンが形成されてから。
 つまり、世界樹が動き出した後……になる。

「テツさんやカナエさん、大丈夫かなぁ」
「問題ないだろう。テツには無理に攻めず、防御に徹しろと伝えてある。それに、カナエさんなら、いざという時は自分の判断でどうにかしてくれるはずだ」
「そう、ですよね」
「心配になるのは分かるが、それよりも俺たちは早く問題を解決することに集中した方が良い。それが結果として、彼らを助ける事に繋がるはずだ」

 しっかりとした声で言い切るアルさんに、僕も気合いを入れ直す。
 そんな僕の頭に彼の手が乗り、わしわしと少し強めに頭を撫でられた。
 ……ちょっと痛い。

「アキさん。アイテム類の忘れ物はないっすよね?」
「うん。使う必要のあるものは全部持ってきたはず」

 ちょっと強めに撫でられる僕をみかねてか、スミスさんが少し声を上ずらせながら聞いてくる。
 というのも、完成した[精霊の魔薬]は時間制限が付いており、完成品を持って行くことは無理だったから。
 そのため、ドライアドの前で[精霊の秘薬]を作り、[精霊の魔薬]として毒性化させる必要がでてきたのだ。
 幸いなことに、素材を使い切る前に完成することができたため、なんとかはなりそうなんだけど……。

「それならアキさんに――」
「――動き出したみたいや」

 何かを言おうとしたスミスさんの声と被るように、真面目な顔をしたトーマ君がそう呟く。
 そして、彼が言った言葉を理解するよりも先に……目の前の草花が光り始めた。

「わ! アキちゃん、すごいよ!」
「姉さん、静かに」
「……はい」
「相変わらずお主は……」

 光り始めた草花にハスタさんがテンションを上げて……直後ラミナさんに怒られて、テンションを下げた。
 ほんと、相変わらずだなぁ……。
 でもそのおかげで、少しだけ緊張がまぎれたかもしれない。

「それじゃあ、手はず通りいこうか。まずはトーマ、それから俺、リュンさんと入り、ハスタさん、ラミナさん、アキさんにスミスさんが入ってくれ。ジン達は殿しんがりを頼むぞ」
「ああ、分かってる。その代わり、向こうで何かあったら頼むぜ!」

 アルさんの指示に、ジンさんが返し……最後にお互いの片手をぶつけ合う。
 ジンさん達が最後なのは、僕らだけが残ったタイミングで何か起きても困るからだ。
 その点、ジンさん達がいれば、いざという時の対応ができる。

 トーマ君は先に入って、周囲の確認。
 それからアルさん、リュンさんが入って周囲の安全の確保って感じで決まったらしい。
 色々考えてるんだなぁ……。

「んじゃ、行ってくるわ。一応、念話してから10秒ほど時間を置いてくれ」
「わかった。頼む」

 「りょーかい」といつも通り軽く返し、トーマ君は光の中へと飛び込む。
 1秒も経たない内に彼の姿は消え、そこには光る草花だけが残されていた。

「ほ、ホントにワープなんだ……」

 僕の呟きに皆が頷き、アルさんへと視線を送る。
 そんな彼にトーマ君から念話が来たらしく、「繋がってる場所は問題ないようだ」と言葉にしてから、彼も光へと飛び込んだ。
 そしてリュンさんも飛び込み、次はハスタさん……と思った直後、ジンさんが光から背中を向け、斧を抜いた。

「……アキちゃん達。さっさと行きな」
「え?」
「どうやら招いてない客が来たみたいだ」

 ジンさんの言ったことを理解した直後、僕の耳に獣の雄叫びが突き刺さった。
 そして次第に遠目からでもわかるほどの巨体が近づいてくる。

 数秒掛からず近づいてきたのは、片方の牙がない大猪。
 つまり、イベント初日で僕らが戦った大猪が、僕ら目がけて突っ込んで来ていた。 

「こ、これって」
「どうやら俺らはそっちに行けないみたいだ。アルにはそう伝えておいてくれ」
「ジンさん!? 別に無理に戦わなくても」
「そりゃダメだ。あいつがこのまま暴れて……仮に拠点の方に向かったら危険過ぎる」
「それは、そうですけど……!」
「大丈夫だ。ダンジョンの方にはアルやトーマ、リュンちゃん達がいる。だからここは俺たちに任せて先に行きな」
「大丈夫。ジンひとりで相手させるわけじゃないからね。だからアキちゃんは行きなさい。自分のやることをやりに」
「ジンさん、リアさん……」

 その言葉に、僕はこれ以上何も言うことが出来なかった。
 彼らは、彼らのやるべきことをやるためにここに残る、そう言ってるんだ。
 
 僕は強く手を握りしめ、彼らへ背を向ける。
 僕は……僕のやるべき事をやりに行かないといけない。

「――行ってきます」
「おう、行ってこい!」

 彼の声を背に受けながら、僕らは光の中へと飛び込んだ。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

処理中です...