掌編まとめ(810以内の短編集)

くろひつじ

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ゆらゆらと紫煙が立ち昇る

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テーマ:ゆれ


 ゆらゆらと紫煙が立ち昇る。

 煙草を吸い、すぐにふぅ、と煙を吐き出す。
 ゆっくりと室内を漂ったあと、じんわりと空気に消えていった。
 それを、ただぼんやりと見ている。

 なんでこんな事になったんだろう。
 一時間前までは、部屋で普通に会話していただけなのに。


 切っ掛けは、そうだ。彼女が着けていたネックレスだ。


 フェミニンな服に良く似合う、シンプルなデザインのネックレス。
 彼女にもよく似合っていて、それを褒めたんだった。

「可愛いね、それ」
「ありがとう! あなたがプレゼントしてくれてからいつも着けてるの!」
「プレゼント? 俺、そんな物あげた覚えないよ?」
「……あれ? ごめん、勘違いだった! 自分で買ったの、忘れてたよ!」

 そう言って、誤魔化すように笑う。
 ああ、やっぱりそうか。相変わらず、嘘が下手なやつだ。

「なぁ、この際だから聞くけどさ。俺はどっちなの?」
「え、何が?」
「本命なのかキープなのか。他に男、いるんでしょ?」
「……そんな、ことは」
「この間インスタに上げてた写真。鏡に男物のジャケット写ってたよ」

 それだけでは無い。彼女はよくやらかしている。
 寝ぼけて違う男の名前を呼んだり、誕生日を間違えたり。
 これでバレていないと思う方が不思議だ。

 それでも俺は彼女を愛していた。
 それだけの魅力が、彼女にはあったから。

「……ごめん。本命は君じゃないんだ」

 申し訳無さそうな彼女の言葉に、席を立った。

 とても混乱していた。
 俺は彼女の一番では無いらしい。
 そうかもしれない、とは思っていたけれど、直接言われたとなると、予想以上にショックだった。

 そうか。俺とは、遊びの関係だったのか。
 こんなにも彼女を、愛しているのに。

 あぁ、愛おしくて、愛おしくて。
 ずっと傍に居たいくらいなのに。

 感情が振り切れて。

 気がつくと、その場にあったガラス製の灰皿を振りかぶっていた。



 ゆらゆらと紫煙が立ち昇る。

 煙草の煙を吐き出し、そっと彼女の頭を撫でた。


 これからは、ずっと、一緒だね。
 アイシテいるよ。
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