ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺はスローライフを目指す。最強?無双?そんなものに興味無いです〜

くろひつじ

文字の大きさ
10 / 101

10話「マジで中身が残念すぎるわ」

しおりを挟む

 ソリというものは中々に便利だ。
 雪国は勿論のこと、簡易組み立て式の物なら車輪を付けてやれば平らな平原でも使える。

 こいつがアイテムボックスに入りきれない大きな荷物を運ぶのに重宝する。
 特に生き物だ。生きている物はアイテムボックスに入らないし、ソリは動物や人を運ぶのに適していると言える。
 それに、日除けの布を被せれば砂漠でも使用可能なところがありがたい。
 おかげで、人を抱えずに移動する事ができる。

 まぁ、問題が無いわけじゃないのだが。

「あー……マジで重いわ、これ……」
「ライさん、私が引きましょうか?」
「あー。朝方になったら頼むわー。交代しながらじゃねーと体力がもたん」
「なら軽くしますかー?」
「暴力を含まない提案なら認める」
「……どうしましょう。何も言えなくなりました」

 どうにかしたいのはお前の頭だ。

 現在、まだまともに歩けない少女を砂漠仕様のソリに乗せて、えっちらおっちら引いて歩いているところだ。
 夕方なのでやや肌寒いはずなんだか、それでも少し汗ばんでいる。

 尚、ソリに乗っている本人はまだ眠ったままだ。
 起きてるだけでも体力を消耗するので、半強制的に言い聞かせて寝かせている訳だ。
 かなり躊躇っていたが、やがて力尽きるかのように眠ってしまった。

「なぁアル。思ったんだけどさ。二人乗ってるソリ引けないか?」
「無理ですね! 私、基本能力値からポンコツなんで!」
「やっぱりポンコツだって自覚あるのな、お前」
「攻撃以外何もできませんからね!」
「攻撃もろくに出来ないだろ」

 いやまぁ、少しはマシになってるけど、まだ俺の援護無しだと危ないからな。
 うあぁ……いつになったら俺は楽できるんかねぇ……

「ほら、もうちょい進むからな。この時間帯に進まないとヤバいからな。地図見る感じ、この先に岩場があるからひとまずそこ行くぞ」
「了解しましたー!」
「元気だなぁお前。まぁ良い事だけどさ」
「元気と攻撃力と殺意が取り柄です!」
「はいはい。最後のは消しとこうかー」

 まぁ無駄話できる相手が居るだけ、マシだと思いますかね。
 一人で黙々と歩くのは精神的にくるし。



 なんとか日が沈み切る前に目的地に到着出来た。
 岩場に鉄鋼玉を投げて簡易テントを作り、敷き布を置いて少女を寝かせるた後、自分たちの飯をアイテムボックスから取り出した。
 黒パンと燻製肉のスープ、それにトマト。少し物足りないけど、旅の途中だから贅沢は言ってらんないし。
 まぁ食えるだけマシだ。いやはや、エッセルで保存食買い溜めしておいて良かったわ。
 
「ほらアル、飯だ飯。早く食え」
「わお! ご馳走ですね!」
「……お前の感性はやっぱりよく分からんわ」

 黒パンをスープに浸して柔らかくしながら食べる。
 この酸味は嫌いじゃないけど、やっぱり白パンの方が好きだ。
 でもあれ、高いからなー。安定して稼げるようになるまで贅沢は出来ないな。

 つーか俺、最終的になんの仕事しようかな。やっぱり狩人かな。
 いや、農民として穏やかに暮らすのもありだな。麦とか家畜の世話して生きていくのも悪くない。
 あぁ、便利屋ってのもありかもな。雑用なら大概できるし。
 夢が広がるな。やっぱ、冒険者なんて向いてねーよ、俺。

 ……てかアルはそこんとこ、どうなんかね。

「なぁアル。お前の話、聞いても良いか?」
「んぐ? 何の話です?」
「そうだなー。とりあえず目標の詳細は聞いておきたいんだが」
「ぶっ殺す相手ですか?」
「それな。いや、お前の場合、見境い無いようにも見えっけどな」

 ことある事に殺そうとしてるからなぁ、こいつ。
 頭ん中どうなってんのか見てみたいわ。

「あれ、言ってませんでしたっけ。復讐ふくしゅうです」
「お? 案外まともな理由だが……何のだ?」
「んーと。婚約破棄されたんですよ、私」

 意外と重いっ!? こいつの事だからろくでもない理由だと思ってたわ。

「でも婚約ってことは、お前良いとこのお嬢様か?」
「一応、貴族の一人娘ですねー」

 うわぁ。こんなお嬢様、いやだなぁ。

「でまぁ、使用人とかも辞めちゃいまして、没落しそうなんで家出して来ました。両親も特に止めませんでしたし」
「それで一人旅してたってことか」

 なるほどなー。だから旅に関する常識が無かったのか。
 こいつもマジで波乱の人生歩んでんなー。

「……ん? てことは何か? お前、元婚約者をぶっ殺したいのか?」
「んー。まぁ、まずは理由を聞きたいですね。その後でぶち殺します」
「揺るぎねぇな、お前」
「私はみなぎる殺意に従ってるだけです!」
「そこは抑えとけ。人として」

 でもまぁ、分からんでもないが。
 俺だったらたぶん人間不信になってるわ、それ。
 流石に殺そうとは思わないけど。

「そう言うライさんはなんで『龍の牙』抜けちゃったんですか?」
「あー。そもそも加入したのが間違いだったって言うか……俺なんかが居ていい場所じゃなかったからなぁ」
「そうなんですか? そんな事無いと思いますけど」
「いやいや。俺に出来るのは精々雑用だし。それに、戦いとか怖ぇじゃん」
「ふーん……そんなもんですかー」

 腑に落ちない顔をされるが……俺としては嬉々として戦いに行くアルの方がよく分からないんだけどな。

「つーかさ。お前、何処まで着いてくる気なんだ? 俺はどっかの田舎町で平穏に暮らしたいなーって思ってんだけど」
「とりあえず王都ですかねー。そこで情報を集めるつもりです」
「そっかー。んじゃ、それまで宜しくな」
「こちらこそ!」

 笑い合いながら握手した。

 いやぁ、こうやって見ると普通の可愛い女の子なんだけどなー。

 マジで中身が残念すぎるわ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...