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24話「また変なやつと関わっちまったなぁ」
しおりを挟む船長に相談してワイバーンを軒並み回収した後、船は順調に航路を進んでいた。
ワイバーンの上位個体も回収出来たし、港町で換金するのが楽しみだ。
いまは念の為、護衛で雇われた冒険者達と俺は甲板で見張りをしているところである。
しっかし、空も海も青くて爽快だ。
陽の光も暖かくてついあくびをしてしまう。
いやぁ、平和だなぁ。このまま港町アスーラまで何事もなく過ごしたいものだ。
「ねぇ、ライって言ったっけ。キミ達、凄いね」
不意に、同じように見張りをしていた若い冒険者の少女から声をかけられた。
日に焼けた肌に赤い髪、そして頭からぴょこんと伸びた耳が特徴的なウサギの亜人だ。
力は無いが素早く、聴力がかなり高い事で知られている。
あと、好色家が多い人種でもある。
「あぁ、あの二人は別格だからなぁ。俺はただの平凡なクズだよ」
「えっと……そうなの?」
「基本的に何もしてねぇしなー。パーティーの雑用係ってとこだ」
「へぇ。その割にはメンバーから好かれてるわね?」
「アイツらもちょっとおかしい所あるからなぁ……」
いやまぁ、実際はちょっとどころかヤバいレベルでおかしいけど。
そんなことを人様に言えるわけもねぇしなぁ。
「ふぅん。ライってなんだか不思議な人ね」
「え、俺が?」
「うん。なんだか人を惹きつけるって言うか……一緒に居て心が休まる気がする」
「はぁ。そんなもんかねぇ?」
よく分からんが、まぁ悪く思われてないならいっか。
それにしても、他のパーティーメンバーの奴らは何してんだ?
まさかこの子一人に任せっきりって訳でも……あ、居たわ。
マストの柱の陰からこちらを見ている。
何してんだあいつら。
「ねぇ、もし良かったらさ。アスーラに着いたら一杯奢らせてくれない?」
「お、マジか。そりゃありがたいな。けど、なんで俺なんだ? 興味持つならサウレかジュレじゃね?」
何せあの活躍ぶりだからな。船員達は興奮してサインもらってたし。
二人とも見た目も良いし外面も悪くないからなぁ。
サウレがちょっと戸惑い気味なのは面白かったけど。
「だってライがパーティーリーダーでしょ? あの二人が頼りにしてるってどんな人か気になるじゃない」
「あぁ、そっか。一応俺がリーダーになるのか」
「そゆこと。あのアルって子だけはなんか怖いけど、パーティーの雰囲気もかなり良いしさ」
「アルは警戒しといてくれ、マジで。あいつヤバいからなぁ……」
最近は俺に殺気を向けることは減ってきたけど、それでも見境ないところはあるからな、あいつ。
目を離せないのは最初から変わらねぇもん。
サウレが見ててくれるから大分楽になったけど。
「あはは……仲間からの評価もそうなんだね。気を付けておく」
「おぅ。あー、このまま何事もなく過ごしたいもんだなー」
「そうだね……て言うかさ。ありがとね」
「は? 何だいきなり」
「いやほら、ボクらって護衛で雇われてるのに何も出来なかったからさー」
「いや、まぁ……あれは仕方なくねぇか?」
普通あの距離から魔法ぶっぱなして殲滅とか不可能だし。
改めて考えるとどんな魔力量してんだろうか。
その上サウレは近接戦闘もできるし。
「二人とも一流冒険者だからな。おかげで俺は戦わなくて済んでるから助かってるわ」
「え、ライって戦えないの?」
「戦いたくねぇの。怖いし痛いの嫌だし。それが嫌で田舎町に引きこもろうと旅してんだよ」
「へぇ。変なの。まだ若いのにね」
「そうかね? まぁ、普通の冒険者から見たらそうなのかもなぁ」
でもまぁ、人間には向き不向きがあるからなぁ。
俺に冒険者は向いてないってだけだ。
魔物と戦うのは怖いし。て言うか見るだけでもビビるし。
さっきのワイバーンだって遠くに居たから大大丈夫だっただけで、もっと近くに来てたら逃げてたかもしんないしなー。
「でもまぁ、何かあったらボクが助けてあげるから。これでも前衛職だし」
ほう。タンクなのかこいつ。この小柄な体で敵の攻撃を一身に受けるタンクとは、中々珍しい奴だ。
強化とか弱体化の魔法を使う補助職か回復職かと思ってたわ。
ウサギの亜人って基本的に力は強くないし、余程別格なのか、何か工夫でもしてるのか。
「そりゃ頼もしいな。んじゃ何かあったら頼むわ。何も無いのが一番だけど」
「ふふ……任せて。あ、て言うか今更だけど、ボクはクレアって言うんだ。よろしくね」
「ああ、改めてよろしくな、クレア」
楽しげに笑いかけてくる彼女に、思わず笑顔を返す。
なんか親しみやすいな、こいつ。パーティーのムードメーカー的な存在なのかもなー。
「他のみんなも紹介したいけど……なんかみんなして隠れちゃってんだよね」
「あぁ、なんかあそこに固まってんな。何してんだか」
「うーん。ボクがライ狙ってるから気を利かせてくれたのかもね」
「……は?」
え、何で? 俺さっきの戦闘で特に何もしてねぇよな?
「ボクさ、強いひとより優しい人が好みなんだ。さっきの戦いの後のライ、すっごい優しそうだったから、良いなーって思ってさ」
「あー……そりゃなんて言うか……」
「分かってるよ。ライは女の人が苦手なんだよね?」
「え、なんで分かるんだ?」
「さっきから微妙に距離取ってるし、仲間との距離感も微妙だっからね。だからこそ、ボクはオススメだよ?」
「オススメ? なんで?」
「だってボク、男だからね」
…………なんだと? いや、どう見てもお前女じゃねぇか。
いや、顔も体格も声も、全部男とは思えないんだけど。
確かに胸は無いが、じゃあそのミニスカートは何なんだよ。
「あれ、疑ってる? なら証拠見せてあげるから部屋に来なよ。たっぷりサービスするからさ」
「遠慮しとくわ。なんか眼が怖ぇし」
ウサギって草食だったと思うんだけど。
なんでそんな獲物を狙うような眼ぇしてんだよ。
それに俺は確かに女性恐怖症だけど、そっちの気は無いから。
「ふぅん。まぁいっか。船旅も長いし、まだチャンスはありそうだからね」
ぴょこんと可愛らしく跳ねて、イタズラな笑みを浮かべるクレア。
「ボクはしつこいからね? 覚悟しといて、ライ」
「……勘弁してくれ、マジで」
「あはは。それじゃあね!」
そう言い残し、仲間の元へ帰って行った。
おいおい……サイコパス、狂信者、変態と来て、次は男の娘かよ。
見た目は完全に女なんだけど……正解を知るのも怖ぇしなー。
また変なやつと関わっちまったなぁ。
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