ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺はスローライフを目指す。最強?無双?そんなものに興味無いです〜

くろひつじ

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46話「挨拶くらいはできると良いな」

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 ハヤトさんに教えてもらった通り、王城の会議室に向かったのだが。

「すみません、規則なもので」

 会議中につき関係者以外立ち入り禁止となっていた。
 まぁそうなるわな。
 仕方ない、大人しく待つとするか。

 そんな事を考えながら壁にもたれかかっていると、サウレがちょこんと隣に来た。
 俺の袖をくいっと引っ張りながら見上げてくる。

「……ライはなんで冒険者になったの?」
「ん? なんだいきなり」
「……ライならもっと違う仕事も出来たはず。何故冒険者を選んだの?」
「あー。なんて言うか……まぁ、影響を受けてな」
「……影響?」

 不思議そうに首を傾げるが、はてさて。
 これ、口に出すとなるとめちゃくちゃ恥ずかしいんだよな。
 しかもいつの間にか皆集まってるし。
 うーん……めっちゃ聞きたそうにしてるし、別にこいつらならいいか。

「オウカだよ。絶対本人には言うなよ?」
「……オウカさん?」
「そう、オウカ。俺達の救世主サマだ」

 肩を竦めておどけてみせるが、本心だ。

 俺達はみんな、オウカに救われた。
 孤児であった俺達をオウカ食堂に雇い入れ、読み書きや計算、魔法まで教えてくれた。
 毎日食べるものがあって、風呂や着替えがあって、たくさんの仲間達がいて。
 そして、毎日笑顔でいれた。

 そんな場所を作ってくれた俺達の英雄。
 自称ただの町娘。
 俺は、その生き様に憧れた。
 だからこそ、オウカと同じ冒険者になった訳だ。

「……そう。でも、ライ。疑問がある」
「なんだ?」
「……ライはいま、何歳?」
「は? いや、正確な歳は俺も知らないけど……俺って幾つなんだろうな」

 言われてみれば、俺は自分の年齢を知らない。
 一応冒険者ギルドには十七で登録してあるが。

「……冒険者になる前は何をしていたの?」
「何ってまぁ……色々だよ、色々」

 オウカ食堂に拾われる前は、生きていく為に何でもやったからな。
 幸いな事に犯罪は侵して無いが、王都で子どもが受けられる仕事は全部こなしたんじゃないだろうか。
 読み書きも数字の計算も出来ないから、肉体労働しか出来ない。
 受けられるのは誰もが嫌がるような仕事ばかりだった。
 共同墓地の定期清掃やら下水路の掃除がメインで、たまに荷運びや飯屋の雑用などなど。
 おかげでいろんな知識が身に付いたし、今になってはあの頃の生活も悪くなかったと思っている。
 冒険者なんかより危険は少ないし。

「……安心して。ライは私が養うから」
「お前本当にダメ人間製造機だな」
「……ダメになって良いよ?」
「自分の食い扶持くらい自分で稼ぐわ」

 いきなり何言い出してんだ。
 マジでどこまでも甘やかそうとしてくるな、こいつ。
 違う意味で怖いんだよなあ。最近また距離感近くなったし。

「て言うか額を擦り付けるのやめろ」
「……にゃん」
「でかい猫だなおい」

 つい頭を撫でながら苦笑する。
 うーん。可愛いのは可愛いんだがなあ。

「ライさん! 次は私でお願いします!」
「では私はそのアルさんの次で」
「ボクは四番目でいいよ!」
「いや、こんな所で並ぶなよ」

 何で行列作ってんだよお前ら。
 他の人の邪魔になるだろうが。

 などと思っていると。

「うおっ!? 何してんだ!?」
「部外者は立ち入り禁止……いえ、知ってる顔がありますね」

 どうやら会議が終わったようで、大きな扉を開けて会議室から黒髪の男女が出てきた。
 冴えない無精髭の男性と凛とした美人の女性。
 無論のこと、二人とも知り合いだ。

「お久しぶりです。なんか相変わらずですね」
「この歳になるとそうそう変わらんが……それより何だこのハーレムは」

 男性――アレイさんが呆れた顔で言う。
 ハーレムて。寒気がするからやめて欲しいんだが。

 この冴えない……ぱっとしない……うーん。
 まあ一件ただのおじさん、もとい男性。
 彼が十英雄達のリーダー、カツラギアレイさんだ。
 自称ただの一般人。オウカに並んで自称詐欺の第一人者だな。
 こんな見た目をしてるのに、実は生身でドラゴンの巣に特攻するようなぶっ飛んだ人だし。

「今回は四人ですか。以前お見かけした時は女性は二人だったと思いますが」
竜の牙あっちは脱退したんですよ。今の仲間はこいつらです」

 女性――カノンさんが微笑みながら言う。

 このいかにも仕事が出来そうな美人さんが十英雄の一人、カツラギカノンさん。
 一人で王都の経済を回している有能さを誇る彼女は、同時に極度のブラコンである。
「実の兄と結婚するために」同性間、二親等間での結婚、重婚を認める法律を打ち立てたとんでもない人だ。
 この世で最も逆らっては行けない人かもしれない。
 
「挨拶に来たんですが……忙しそうですね」
「ああ、何でも王都の近くにあるダンジョンが氾濫はんらんするかも知れんらしああ。近い内に討伐に行かなきゃならん」
「はぁ……レンジュさんでも向かわせれば良いんじゃ?」
「お偉いさんの事情があるんだとよ。近くに誰も住んで無いし、今日中に騎士団を派遣するって話になったな」
「うわ、面倒な話ですねー」

 アレイさんと世間話をした後で四人を紹介し、しばらく王都に居ることを告げるとまた今度酒でも飲もうという話になった。
 その間、カノンさんは涼しい顔で俺たちを見ていたが、多分あれはこっちの四人を値踏みしてたんだろうな。
 
「んじゃ、俺たちはここで。治療院にも行かなきゃならないんで」
「そうか。じゃあまたな」
「また今度ゆっくりお話しましょう」

 二人に手を振られ、何かを察して警戒している四人を引き連れて、俺たちは王城内にある治療院へと向かうことにした。

 さてさて。あの人もいつも忙しそうにしてたけど。
 挨拶くらいはできると良いな。
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