ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺はスローライフを目指す。最強?無双?そんなものに興味無いです〜

くろひつじ

文字の大きさ
82 / 101

82話「さぁ正念場だ。気合いを入れようか」

しおりを挟む

 アルの後に続いて倉庫内に入り、敵を目視する。
 様々な武具で武装した男達が十六人。
 既に臨戦態勢を取っていて、こちらに向き直っている。
 そして、その奥。
 茶髪の女。確かに商人らしい服装をしていて、胸には不気味な装飾のペンダント。
 こいつがベルベットか。

「なんだお前ら!」
「通りすがりの冒険者です! さぁ全員大人しく首を出してください!」
「出さねぇよ!?」
「ならば無理やりぶった斬ってやります!」
「おいバカ、やめろ」

 アホなやり取りをしているアルの後ろに立ち、続けて背後にいるサウレ達にハンドサインを送る。
 
「取り込み中にすまん。ちょっと吹雪避けに人の居そうな場所に立ち寄っただけなんだ」
「なんだと? 何で冒険者がこんな街外れの倉庫にきてるんだよ!」
「あーいや、実はだな」

 話を繋げ、時間を作る。
 目的はもちろん。 

「……魔術式起動。展開領域確保。対象指定。其は速き者、閃く者、神の力――」
「透き通り、儚き、汚れなき、麗しきかな氷結の精霊――」

 二人の魔法詠唱が終わるまでの時間稼ぎだ。

「そこの商人に用があって……なっ!」

 素早くアイテムボックスからスリングショットと煙幕玉を取り出し、奴らの足元に打ち込む。

「うおっ!? なんだ!?」

 立ち込める煙に慌てふためく様を見ながらアルの後ろ襟を掴んで引き寄せる。

「やっちまえ!」

「――敵を焼き切れ、裁きのいかずち!」
「――願わくば、我にその加護を与えたまえ!」

 詠唱完了と共に吹き荒れる雷と氷の嵐。
 死なない程度に加減されているとは言え、視界の外から放たれた一流冒険者の放つ魔法に対応出来ない。
 そのはずだった。

「うふふ……魔導具、起動」

 余裕気なベルベットの声。そして。

「……なんだと?」

 雷と氷が、全て掻き消えた。

 今の魔力の波動は知っている。
 マジックキャンセラー。範囲内にある魔法で具現化した物を全て消し去る魔導具。
 しかしアレは、王国騎士団でも二つしか持ってない特級魔導具のはずだ。
 何故それがこんな場所に……いや、それよりも。

 不味い。奇襲が失敗に終わった。

「来るぞ!」

 仲間に注意を促しながら罠を放って行く。
 粘着玉やトラバサミを床にばら撒き、先程補足した敵の位置に目潰し玉を幾つも打ち出す。
 煙幕が晴れると、四人の傭兵達の足止めに成功していた。
 しかし、残りの連中が殺気立ってこちらへ駆け込んでくる。
 瞬時に味方と敵の動きを読み、最善の位置へ鋼鉄玉を放っていく。
 そんな俺を飛び越したのは。

「魔術式起動、展開領域確保、対象指定! 其は何人なりや、天空の覇者! 我が身に宿れ龍の鼓動! 身体強化ブースト!!」

 早口で魔法詠唱を完了させたアルだった。
 マジックキャンセラーは魔力を体内で使用する身体強化を無効化することは出来ない。
 本能的にそれを悟ったのか、或いは何も考えていないのか。
 最重量級の獲物である両手剣を振りかぶっているにも関わらず、アルは凄まじい勢いで突撃していく。
 その身に纏った緑色の魔力光は以前見た時よりも多く、しかしちゃんと自我は保っているようだ。

「ヒャッハァ! 皆殺しだァ!」

 嬉々として叫んでいる辺り、本当に自我を保っているのか不安だが。

 両手剣が振り回される度に数人が一度に吹っ飛んで行くが、着地してすぐに体勢を立て直されている。
 一人一人の練度が高い。だが。

「……迂闊」

 雷を迸らせながら短剣を閃かせるサウレ。

「白兵戦は苦手なのですが、仕方ないですね」

 短杖を振るい飛びかかる敵を撃退していくジュレ。

「よっと! あはは! どこ狙ってんの下手くそ!」

 煽りながら敵を煽って注目を集めるのクレア。

 四人の連携はもはや一流冒険者パーティに引けを取らない。
 魔法が使えない程度のハンデなど最早お構い無しだ。
 彼女達の連携の合間を縫って援護射撃をしながら戦況を把握。このまま行けば押し切れるが、しかし。
 劣勢にも関わらず、ベルベットは未だに笑みを浮かべたまま動かないでいた。

「役立たず達ねぇ。仕方ないわ……魔術式起動。展開領域確保。目覚めて踊れ、私の人形」

 背筋を悪寒が走る。
 理由は分からない。だが、ヤバい。

「お前ら! 全員――」

 退け、と。いい切る前に。

 最前線に居たクレアが金属製の腕に殴られ、勢いよく吹き飛んだ。
 咄嗟に衝撃を殺すために粘着玉をクレア放ち、即座に駆け寄る。
 同時に、倉庫の奥から這い出てきたデカい何か。

 それは人の形をしていた。
 しかし、明らかに人では無かった。
 体長は三メートル程。関節は球体になっていて、全てのパーツが俺の胴より太い。
 独特な光沢はこの世で最も硬い魔法銀ミスリル製の証。
 ミスリルゴーレム。
 かつての戦争で魔族が奥の手として用意した最悪の殺戮人形だ。

「……なるほど。そういう事かよ」

 クレアを抱き起こしながら警戒していると、いつの間にかゴーレムの奥にいるベルベットの姿が変貌していた。
 金髪に青い肌、そして血のような赤い瞳。
 それは、数年前まで人族と争っていた魔族の特徴。

「あははは! こいつを使えば冒険者なんて敵じゃないわね!」

 高らかと笑う。その姿は狂気的で、周りの男達は完全に怖気付いている。
 それもそうだろう。
 魔族にミスリルゴーレム、その組み合わせは正に戦争の象徴だ。
 多くの人間を殺した組み合わせに怖気付かない訳が無い。
 それに、マジックキャンセラー。あれは元々魔族が作り出した魔導具だが、物理的に最硬度を誇るミスリルゴーレムとの相性は抜群に良い。
 万事休す。正に絶望的な状況に、いくら味方だとは言え恐怖を感じずにはいられないだろう。

 普通ならば、だが。

「いきなり何て事するんですか! 危ないですよ!」
「お前が言うな」

 元気に叫ぶアルに苦笑していると、他のメンバー達も全員こちらに集まってきた。
 全く動揺せずに無表情なサウレ。
 余裕の笑みを浮かべるジュレ。
 ビビりながらも強気な表情のクレア。
 普段通りの様子に頼もしさを感じながら、思考を回す。

 さすがにミスリルゴーレムとの戦闘経験は無い。
 ならばこの場で解析するしか無い訳で。

「まったく、面倒な事だな……だが」

 頭が冴える。心が氷のように冷えていく。

「サウレを嵌めた落とし前はつけてもらうぞ、クソ女」

 立ち上がりながら、口汚く吐き捨てた。

 さぁ正念場だ。気合いを入れようか。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

5人の勇者を「500人」と報告したら、魔王様が和平の準備を始めました

miko.m
ファンタジー
※最終話までプロット作成済み。 ※毎日19時に更新予定(たまに12時にも更新します)。 「勇者が500人!? 無理無理、勝てるわけないだろ! 和平だ、今すぐ娘を嫁に出せ!!」 魔王軍第一軍団長・ゴルドーは困っていた。たった5人の勇者に惨敗したなど、出世欲の塊である魔王ゼノンに言えるわけがない。保身のために彼がついた嘘。それは「勇者が500人いた」という、あまりにも適当な虚偽報告だった。 しかし、小心者の魔王様はそれを真に受けてパニックに! 「500人の勇者と全面戦争なんてしたら魔王軍が破産する!」と、威厳をかなぐり捨ててまさかの「終戦準備」を開始してしまう。 一方、真実を知った魔王家の三姉妹は、父の弱腰を逆手に取ってとんでもない作戦を企てる。 「500人は嘘? ちょうどいいわ。お父様を売って、あのハイスペックな勇者様たちを婿にしましょう!」 嘘を塗り重ねる軍団長、絶望する魔王、そして勇者を「逆スカウト」して実家脱出を目論む肉食系姫君たち。人間界のブラックな王様に使い潰される勇者たちを、魔王軍が「厚遇」で囲い込む!? 嘘から始まる、勘違いだらけの経営再建ファンタジーコメディ、開幕!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...