ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺はスローライフを目指す。最強?無双?そんなものに興味無いです〜

くろひつじ

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92話「俺は気が付けば、心の底から笑っていた」

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 正座でお説教されている間にオウカたちの方もケリがついたらしい。
 苦い顔でしぶしぶ歩いてくるオウカと、その後ろから元の姿に戻ったルミィを担いだツカサ勇者さんが近づいてきた。

「あーもー、疲れたー。二度とやりたくねーわ」

 背伸びしながらため息を吐くオウカに右手を上げて見せると、ぺちりと力なくハイタッチを返された。

「おう、お疲れさん。ありがとな」
「どう致しまして。怪我は大丈夫?」
「キョウスケさんのおかげでな」
「そっか。こっちも怪我無く終わったわよ」
「…はい、どうぞ」

 いや、あの。いきなり荷物みたいな感じでルミィを渡されても困るんだけど。いま正座してるし。

「…セイさんの名前を呼んでいた。起きた時に傍にいてあげた方が良いと思う」
「あー。了解です」

 うーん。まぁツカサさんに言われてしまっては仕方ない。
 とりあえず隣に寝かせておくか。

「カエデさん、この人に魔王機関が埋め込まれます。調べて貰えますか?」
「やっぱ、り。でも魔力残滓が無いから元は辿れないか、も」
「ありゃ。こっちでも分からないらしいんですよね」
「一応、見てみる、ね。それより、怪我はな、い?」
「ピンピンしてます!」

 ぴょんぴょん跳ねてアピールするオウカ。
 元気だなーこいつ。てか本当にさっきのアレと同一人物なんだろうか。

「オウカさん。今回の件で理解出来たかと思いますけど、やっぱりこのクズとは縁を切るべきです」
「えーと……いや、まぁ。一応こいつ、身内なんで」
「そうは言いますけど、危険ですよ? 
「ちょ、エイカさん!?」
「……あ」

 あ、じゃねぇわ。何さらっと暴露ってくれてんだ、この人。
 やっぱりロクな奴いないな、英雄。

「え? ライさん?」
「……魔王のカケラ?」
「ライさん? あの、どういう……?」
「はぁっ!? ライ、説明してよっ!?」

 あーうん。まぁそうなるよなぁ。
 どう説明したら良いもんかな、これ。

「……えぇとな。すまん、俺、人間じゃないんだわ」

 とりあえず謝ってみると。
 俺の仲間たちは四人そろって納得のいった顔をしていた。

 あれ? 反応おかしくないか?

「おい、何だその反応」
「いや、だってライさんですし」
「……そこまでは想定の範囲内」
「明らかに人間離れしていることをしていましたからねぇ」
「え、てか隠してるつもりだったの?」

 酷い言われようだなおい。
 いや、事実ではあるんだけど……おかしい。明らかにただの凡人なのに。

「えーと。オウカ、良いか?」
「んあ? 私は構わないわよ?」
「んじゃ説明するけど、これは他言無用だからな?」

 じとっとした目でエイカさんを見ながら釘を刺すと、負い目を感じたのか少しのけぞられた。
 いや、いつか話すつもりではあったから良いんだけどさ。

「対魔王用人造英雄Type-1 【Salvationサルベーション Earthfireアースフィア】 それが俺の種族名だ」

 かつて英雄が召喚される前に造られた、魔王のカケラを組み込まれた生きる兵器。
 その中でも魔力保有量に特化した支援機体で、他の戦闘用人造英雄のサポートを行うための歩く魔力タンク。
 しかし人造英雄はこの世の理から外れた存在であるため、通常の魔法は使えない。
 せいぜいが自身の内で魔力を循環させる『身体強化』程度しか使えず、それも性能は決して良くない。
 単騎では何もできない人造英雄。それが俺だ。

「……まさか。ライの名前って」
「そうだな。【Salvation Earthfire】の頭文字にType-1だから『セイ』だ」

 俺を拾った暗殺者の師匠が適当につけた名前らしいけど、名前なんて識別さえできればどうでも良かったからな。
 安直だとは思うけど、今まで特に気にした事は無い。
 それに、今の俺の名前は『ライ』だ。
 古代言語で『嘘』を意味する言葉らしいが、とっさに名乗った偽名にしてはよくできていると思うし。
 何より、仲間たちがその名で呼んでくれている。
 だったら俺の名前は『ライ』だ。
 それで良い。いや、それが良い。
 俺自身が『ライ』でありたいと、そう望んでいるのだから。

「あ、ちなみに私も人造英雄です。対魔王用人造英雄Type-0【Killing Abyss】だからオウカ、らしいですね」

 ひょういと手を上げながら何気なく告げるオウカに全員が呆気に取られている。
 自国の王が人間じゃなかったとか、大事だもんなぁ。

「名前が! 安直すぎませんか!?」
「……これはさすがに」
「あらまあ。独特な名付け方ですねぇ」
「いや待ってみんなそこじゃないよね!?」

 叫ぶアル、半目になるサウレ、頬に手を当て溜息をつくジュレ。
 そしてパーティ唯一の常識人枠であるクレアがツッコミを入れる。
 そうだよな。クレアの反応が普通だよな。
 うん、やっぱりこいつらおかしいんだよなー。

 ちなみにカイトとミルハにクレアと同じ反応をしている辺り、やはり常識人枠のようだ。
 
「セイ、お前は英雄だったのか?」
「いや、種族名が人造英雄ってだけだ。俺はただの凡人だよ」
「まーだそれ言ってんのっ!?」
「事実だからな。英雄なんかと並べないでくれ」

 違う意味でこの世の理からかけ離れてる人たちと同じジャンルにしてほしくはない。
 素手で岩割ったり音より早く走ったりできないからな、俺。

「と言うか、魔王のカケラとはなんだ? 魔王とはあの魔王だよな?」
「その魔王だけど、うーん。なんて言うか、魔王ってのは魔導具の名称なんだよな」

 語られなかった真実。英雄譚の裏で起こった事実。
 歴史の裏に隠された物語。

「保有者に莫大な魔力を与える代わりに自我を乗っ取る呪われたアイテム。『魔王』はそういう魔導具だ」

 勇者と魔王の決戦時、この『魔王』というアイテムはいくつかに分割されていた。
 その内の一つ、大きなカケラを持って逃げだそうとしていた魔族の暗殺。
 それがあの時俺に課せられた仕事だった。
 暗殺後に確保した『魔王』のカケラは英雄カツラギアレイの手によって葬り去られ、アースフィアこの世界に平和が訪れた。
 俺がやった事なんてほんの些細なことで、たった一人の魔族を殺しただけだ。
 当たり前の話だが、そんなモノが英雄なんて呼ばれて良いはずがない。
 そのうえ当時の俺は、人間にすらなれていなかったのだから。

「で、俺達人造英雄の核には『魔王』のカケラが使われているらしい。見た事は無いけどな」
「おい、セイ。これってかなりの重要情報なんじゃないか?」
「そうだよっ!? これ話しちゃって良かったのっ!?」

 苦笑する俺に詰め寄るカイトとミルハ。うん、これが普通だよなぁ。

「……私たちが知っていれば、それで良い」
「そうですねぇ。ですがこのメンバーなら問題ないのでは?」
「あはは……まぁライがメチャクチャなのは今更だもんね……」
「何かあれば私がぶっ殺してやります!」
「……その時は私も手伝う。だから褒めて」

 グリグリと額を押し付けてくるサウレに和み、頭を撫でてやると微妙に嬉しそうな顔をされた。
 その後ろにアル、ジュレ、クレアがニコニコと並ぶさまを見て苦笑すると、エイカさんとカエデさんがとても複雑そうな顔をしていた。

「どうしました?」
「いえ、私のせいとは言え事実を知っている人間が野放しになるのは問題があるのではないかと思いまして」
「ちょっと、心配か、も」
「んー。こいつらなら問題ないと思いますけどね。気になるならそこにいる女王陛下に聞いてみます?」
「その呼び方やめれ。でもとりあえず大丈夫じゃない? みんな良い人っぽいし」

 能天気な言葉に再度苦笑する。オウカがそう答えるであろうことは想定内だが、何と言うか。
 相変わらず、人を信じすぎる奴だな。それでこそオウカだけど。

「何はともあれ、お腹空いたしご飯にしよっか。魔導列車が復旧する前に食べちゃおう」

 アイテムボックスから作り置きしておいたのであろう大量の料理を出すオウカに、皆が笑みを浮かべる。
 英雄たちは既に慣れ切った様子で、カイトたちは唖然としながら、そしてアルたちは嬉しそうに。

「美味しいは正義! ほら、座った座った!」

 ニコニコ笑顔で給仕を始めるオウカに従い、いつの間にか置かれていた椅子に腰を下ろす。
 俺の膝の上にはサウレが座り、両隣にはアルとクレア。そして向かい側にはジュレ。
 みんなのいつも通りの姿に内心で安堵し、そして言いようも無いほどに嬉しくて。

 俺は気が付けば、心の底から笑っていた。
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