47 / 56
47話:蔵書庫での一幕
しおりを挟むあくびを噛み殺しながら食堂へ向かうと、司達の姿を見つけた。
手を振ると気付いた隼人が振り返してくる。
兵士に続いてカウンターで朝食を受け取り、そのまま同じテーブルに着いた。
「よう、おはようさん。心配かけてすまなかったな」
「…元気そうで良かった」
「心配、しまし、た」
「ほんま心臓に悪いわ。まー楓と京介さんおったから大丈夫とは思うたけどなー」
「昨日の亜礼さんは検索してはいけない状態でしたからね」
「……その表現は止めろ」
俺は気にしないが他の奴の迷惑だ。
「…何にせよ、あまり無茶はしないでほしい」
「いや、アレは仕方なくな?」
「…左腕損傷後に無理な発勁。普通は右肩だけじゃ済まない」
「あー……まぁ、善処するわ」
「…今度、完全版を見てみたいけど」
「おう。体調戻ったらな。まだ疲れが抜けてないし」
「無茶はだめだ、よ?」
「分かってる。あまり無茶はしないよ」
子ども達に窘められる俺。
どっちが保護者か分かりゃしないなと、苦笑いする。
いやまあ、実力的には俺が下なんだが。
「で、今日の予定は?」
「特にないんよなー。街に出ると思うんやけど」
「司君は放っておいたら一日訓練してますからね。たまには連れ出さないといけません」
「私は蔵書庫に行く、かも」
「おぉ、蔵書庫か。懐かしいな」
召喚されてしばらくの間、毎日通っていた場所だ。
ただひたすら訓練と知識の収集を繰り返した日々は楽しいものでは無かったが、今を生きる糧になっている。
おかげで一人旅も出来ているし、今まで何とか生き残れている訳だ。
知識とは無駄にならない。まさに財産だな。
「ふむ。俺も久々に行ってみるかな」
「一緒に行、く?」
「あぁ、そうするか」
たまにはゆっくりと本を読むのも悪くない。
既に全部目を通してはいるが、また新たな発見があるかもしれない。
ともあれ、まずは朝食を食べてからだが。
ベーコンエッグのようなものとポテトサラダ、大きめのパンを食べ終え、楓を連れて蔵書庫へ。
見張り番の兵士も見慣れた顔で、少し挨拶を交わして中に入った。
日本の図書館ほどでは無いが、相変わらず本が多い。
基本的に書籍は一点物であるこの世界では、これほどの量の本を見る機会は滅多にない。
最初来たときは少ないと感じたものだが、今になって見るととてつもない量だと思う。
着いて早々、ふらふらと本棚に寄っていく楓をおいといて、自分も読むものを探す。
とは言え、新しい本も入っていないようだ。適当に見繕うか。
昔はそこまで読み込まなかった物語調の本を手に取り、立ったままでページを開いた。
女神クラウディアの物語。
創成の女神がどのようにしてアースフィアという世界を作り出されたかが記録されているようだ。
何だか色々と誇張した表現を使ってあるが……あのポンコツ女神がここまでちゃんと考えていたかは、甚だ疑問ではある。
実は何も考えていませんでした、とか言われても逆に納得するんだが。
あるいは、友達が欲しかったとか。
いや、だってなぁ。会う度にキャラ変えてるし。
受けを狙って外してる感が凄いんだよな、あの女神。
何で俺だけ頻繁に呼ばれるかは知らないが、どうせ呼ぶなら同性の、それこそ歌音あたりを呼べばいいだろうに。
すくなくとも、俺で練習してもあまり意味が無いと思うんだが。
……あぁ、思い出したら腹が立ってきたな。
アイツ、無理やり俺たちを召喚しておいて、魔王を倒しても送還方法が分からないとか言いやがったからな。
あの時はマジギレする蓮樹を抑えるので必死だったが、思い返すに一発ゲンコツを落としておいても良かったかもしれない。
今度会った時にでも説教してやろうか。
まぁ日本にいた時でも、神様なんて自分勝手だよな、とは思っていたが。
日本神話はまだマシだが、海外の神話だとそれはもう好き勝手にやりたい放題だしなぁ。
その癖やってる事は人間と同じってくるんだから、中々にタチが悪い。
いや、もう関係のない話ではあるんだが。
モヤモヤした気分で本を読み進めていると、物語は近代に入る辺りで終わっていた。
それ程昔に書かれた本ではないようだ。
しかしこれだけ褒め称えられていれば、あのポンコツ女神も満足だろうな。
いかん、本格的に腹が立ってきた。どこかで解消するか。
さてどうするかと視線を巡らせると、窓の近くに京介の顔があった。
アイツに限って暇を持て余してる事は無いだろうが、蔵書庫に何の用だろうか。
聞くついでに治療の礼を言っておこうと思ったが、司書の女性と何やら話しているのに気が付き、上げかけた手を止めた。
話の内容は聞こえてこないが、随分と朗らかな雰囲気だ。
京介がリラックスした表情で話ているのは中々珍しい。
邪魔をしないように離れようとすると、京介と目があった。
仕方無いので軽く手を上げ、そのまま隣の本棚に目を向ける事にした。
ふむ。しかし、アイツも色恋沙汰に興味があるんだろうか。
もしそうなら祝福してやりたい気もするが。
何せ、京介だ。
誰と話すときも外面を被ったアイツが、素の表情で話せる相手が仲間内以外にも居るとは。
何とも感慨深い話である。
後で話を聞いてみるかな、等と思いつつ、適当な本に手を伸ばした。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。
課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」
強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!
やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!
本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!
何卒御覧下さいませ!!
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる