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蛇の慕情
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あの激しい情交の後、何とか意識を浮上させた栞は浩介が背を向けているうちに部屋から飛び出そうとした。下着も着けずにドアノブへと飛び付いたが、気が動転していて鍵を閉められていることにも気付かず、力任せにガチャガチャと激しく引っ張った。振り向いた浩介は驚いた顔で栞を捕まえるとドアから引き離した。
「何してんの?ちょっと待って!」
「いやっ!もう終わったでしょ?離して!!」
「服着ないとまずいでしょ?もうしないから。落ち着こう、ね?」
抵抗する栞を強く抱き締めたまま、子供をあやすようにゆらゆらと揺れてやると、とうとう観念した様に細い腕から力が抜けた。それを確認して浩介もようやく拘束をとき、ベッド下や床に散らばった栞の衣類を拾って渡してやった。
栞は下着を身につけながら、自身の身体に散らばる卑猥な印に切なくなりその大きな瞳を潤ませた。
(悔しい…。嫌いな男に無理矢理犯されて、あんなに感じてしまった自分が許せない)
ぐっと唇を噛んで小さく肩を震わせながらも栞は身なりを整えると、今度こそ部屋を出ていこうとした。すると、ベッドへ腰掛けて栞の様子を無言で窺っていた男が口を開いた。
「栞ちゃん、大事なもの忘れてない?」
問いかけられて思わずあまり広くもない部屋を見渡すが、そもそも何も持ち込んでいないことを思い出して眉をしかめた。
「何も忘れてませんけど。ああ、誰にも言うなよって脅しのつもりなら気にしなくていいです。私も忙しいんで言いふらしません。その代わり、ここは退職します。二度と近寄らないで」
栞は今にも大声で泣いてしまいそうなるのを押さえて、精一杯の強気な声をケダモノにぶつけてやった。それを真正面から受け止めた男は一瞬驚いた様に目を見開くと、すぐにまた人を食った様な表情で笑った。
「何よ!」
「いやぁ、ごめんごめん。全然会話が噛み合わなくてびっくりした。辞めるとかは違うって」
「は?こんなことして、一緒に働いて行けるわけないでしょ?今すぐにでも刺し殺してやりたのに…」
「いや、ちょっと強引になっちゃたのはごめんね!でもさ、栞ちゃんお金必要なんでしょ?俺と付き合おうよ。月100万とかで、どう?」
「…何言ってるのかちょっとよく分からないんですけど。私彼氏がいるんであり得ません。馬鹿にしないで」
栞が強い視線で睨み付けると、浩介はそれを無言で受け止めて目を細めた。そしてそのまま胸元から財布を取り出すと、栞に向けて万札を何枚か差し出した。
「…受け取る訳ないでしょ?!ふざけないでよ!!」
「いや、彼氏さんが大変なんだろなーと思って。確か入院してるんだよね?」
栞は思わず俯いた。さっと記憶を辿るが、暁斗のことはこの旅館では誰にも話したことなどない筈だ。この男が何故知っているのか。
「だとしても、貴方には関係ありません」
「あるよ、俺は栞ちゃんのこと大好きだもん。だからいくらでも渡すよ。栞ちゃんは今まで通り普通に彼氏さんに会いに行ってくれたら良いし。俺はセックスさせてくれたらそれで充分なんだけど」
「愛人ってことですか?」
「俺は独身だけど、まあそんな感じかな」
「…今はもう許して下さい。何も考えられないんで。もう行きます」
「分かったよ。また夜にでも連絡するから」
栞は浩介が話し終わる前に部屋から出ようとしたが、いきなり伸びてきたまた腕に捕まえられ、ポケットに何かを捻り込まれた。
「え?!なに…」
「俺はこの部屋を片付けてから行くから。またね」
浩介は人形の様に整った笑顔を張り付けて、驚く栞を今度は部屋の外へと押し出した。有無を言わさぬその状況に、栞は閉められたドアを見つめ廊下で立ちすくんだ。
(終わった…。私、これからどうしたらいいの)
一人になりたい。栞が窓のない薄暗い廊下を歩き出そうと一歩踏み出すと、ポケットから何やらふわりと紙の様な物が落ちた。 はっと目線を下げると、それは先程浩介が突き付けてきた万札だった。ポケットを探れば、万札は四枚出てきた。落ちているそれを見れば五万円になる。栞は床のそれをしばらく眺めたあと、可憐な面立ちをきゅっとしかめて、身を小さく屈めて拾った。
※
毛嫌いしている男に犯され、その日はショックで部屋から一歩も出ることが出来ず、暁斗に会いに行けなかった。
(これからどんな顔をして暁斗に会えばいいんだろう…。お義母さんにも、誰にも言えない。もういなくなってしまいたい)
ベッドの上で膝を抱え、何時間も泣き続けた。渡された五万円は財布に入れることも出来ず、リビングの小さなテーブルの上に散らばっている。夜勤明けで疲れている筈なのに、眠ることも食べることも出来ずにただずっと溢れる涙を止められなかった。この激情に逆らえば、自分はもう崩壊してしまうかもしれないと感じてひたすら泣いた。
夕方になり空がオレンジ色に傾きかけた頃、栞の涙の雨もようやく落ち着きかけていた。さすがに喉が渇いていたので、重い身体を引きずる様に起こし台所へ向かおうとしたその時、手元に放ってあったスマホが震えた。栞は身体をビクリと震わせ恐る恐るアプリの通知内容を確認すると、そのメッセージの送り主は真樹だった。その名前を見た途端に心細かった気持ちがふわりと和らぎ、すぐに通知アプリの画面を開いた。真樹からのメッセージの内容は、今日も病室へ顔を出すと伝えていたのに現れなかった栞を心配してくれているものだった。もしも風邪や体調不良なら看病に行くとまで書いてくれている。
(お義母さんが私のこと心配してくれてる…。私のこと大事に思ってくれてる人がいるんだから、私もがんばらなくちゃ。二人で暁斗が目覚めるまで待ち続けなくちゃいけないんだから)
栞は服の袖でぐっと涙の跡を拭うと、真樹へメッセージを返信した。
『こんばんは!大丈夫です。急な予定が出来て行けなくなっただけなんです。連絡忘れててごめんなさい。』
『そういえば足りない分のお金、私の方で用意出来そうです。真樹さんはバイト増やさないで暁斗についててあげてくださいね』
送信ボタンを押すと、大きく深呼吸をした。その勢いのまま立ち上がると、今日初めて窓を開けて新鮮な空気を部屋へと招き入れた。そして大滝旅館で働くようになってから初めて、浩介の連絡先を探したのだった。
※
数日後、栞は浩介の部屋にいた。
金を餌にして誘ったのは浩介からだったが、今回は栞も同意の上で部屋を訪れている為強引に押し倒す理由もなく、最初は紳士的であった。酒やツマミなどを振る舞い会話もリードしながら雰囲気作りをしようとしていることは伝わってきたが、栞があまりにも素っ気ない態度を崩さずに「忙しいからさっさと終わらせて欲しい」などと冷たい視線と言葉を投げられ、ついにカッとなってしまった。
手を引いて寝室へと連れ込むと、そのまま栞の細い身体をベッドへと放り投げた。
そこまでされてずっと強気な表情を貫いていた栞も恐ろしくなったのか、不自然に波打つシーツから逃れようと必死で抵抗を始めた。栞の泣き出しそうな顔を見つめて、浩介は自分に加虐趣味があったことを自覚してしまった。
「ひどいことはしないでください…。優しくして」
「ははっ!それは栞次第じゃない?」
深く口付けられて舌を強く吸われる。すべて食べられてしまいそうなキスに怯えて栞が逃げようともがくほど、その細い手首を強く縫いとめられてセックスは更に乱暴なものへと進化していった。
※
「ふっ、あ、たまんねー、きもちいいよ、栞の極上まんこ。もっと堪能させてくれよ、もっかいイけ!おらっ!おらっ!イケよ!」
「はぅ、ああぁっ、あ、あ、やん、やめ、もう突かないでぇっ!イッちゃうの、もういや、いやぁ!!!」
逃げを打つ栞の腰を両手でがっしりと掴み直すと、自らの腰を更に奥へ突き込む様に深いストロークで汗と体液にまみれよがりまくる美しい女を追い込んだ。
抱え込まれた栞のほっそりとした脚が浩介の抉るように激しい腰の動きに合わせてゆらゆらと揺れる。
「っ、栞、たまんねー、おら、子宮降りてきてんぞ?んー?中痙攣してんぞ?この野郎」
「もういやぁ…」
浩介は栞の濡れぼそった奥まった場所を限界まで膨らんだ硬い雄で征服しつくした。黒目がちの愛らしい瞳に涙を浮かべて許しを乞う小鹿の様にしなやかな栞の裸体を逞しい体躯で全身を使い押さえつけると、その濡れた悲鳴を堪能した。栞の子宮がついに強かな雄に屈服した様に痙攣を始める。
「あ、ああ…も、もうダメ…たすけて!あ、あ、や、はぁああぁっ!!!っあ、イくっ!いくいく!いくいっちゃうぅぅっ!!!」
「あ?誰も助けるわけねーだろ!イきやがれ、おらっ!!」
栞は子宮の入り口を跳ね回るように抉る容赦ないピストンに耐えきれず、華奢な首をグッと仰け反らせると、眉間に皺を寄せてかぶりを降った。額から玉の汗が飛び散る。浩介はぐっと身体を倒し、濡れた豊満な乳房を両手で下からぐにゅぐにゅと揉みしだく。
栞は甘ったるい声で泣き叫び、目を白黒させながら一度大きくビクンッ!と跳ね上がると、糸の切れた人形の様に弛緩した。首筋をしたたる汗をその肉厚な舌を小刻みに動かしながら何度も舐め上げ、 地獄の様に甘美な絶頂の痙攣を耐え抜く。
少し波が引いたところで浩介はまた上半身を栞から離すと、左手で肩で荒い呼吸に合わせてぷるんとよく揺れる乳房を揉み、右手で小さく震えるクリトリスをそっと転がすように弄ってやる。そうしてやると栞は両目をカッと見開き絶叫した。
「ああぁーーーっ!!!!はぁうっ!!!そこほんとにいやのぉ!!もう、もう今日は無理、ゆるしてくださいぃ…」
「あー、すっげ。持っていかれるとこだったわ。でも俺まだ出してねーし。一人だけイきまくりやがって。今日は朝までとことん犯し抜いてやるからな、栞」
「あっ、もういやぁーー!!!!!」
気が狂ったように叫びながら何とか浩介の下から逃げ出そうともがく栞をものともせず、また地獄の様な高速ピストンが始まる。今度こそ浩介自身が絶頂するためだけの遊びのない腰使いに、栞はもう浩介から逃れられないことを悟り、ぐったりと身体を投げ出した。
それに気をよくした浩介は、更に栞を追い詰めるように栞の下半身を持ち上げると上から折り畳むように尻を上に持ち上げ、種付けの準備を始めた。
肉の当たる破裂音と共にドスッドスッと激しい音に身体を軋ませながら栞の最奥を目指す。中は熱くひどくぬかるみ、強く収縮している肉がペニスを搾り上げ、一突きするごとに溶ける様な快楽が腰からせり上がって来る。
「や、やぁ、あ、ああ、ぅんっ、んっんっんっ」
「あー、イく、いい、いいよ栞…」
「はああぁ!!!!、あ、あ、だめなの、出しちゃいや、もうだめ…ゆるしてぇ、いやぁっ」
「イく…、ふっ、」
最後にグポッと子宮の奥まで入り込むような一突きをお見舞いしてやり、とうとう浩介は果てた。そのままゆるゆると腰を動かし最後の一滴まで出しきる。やっと少し波が引いたところで栞の中からペニスを引き抜くと、ゴムを外し口を縛ってゴミ箱へと投げ捨てた。
ちらりと視線を戻して様子を窺うと、栞の意識はまだ朦朧としており、肩で息をしながら呆然としている。さっきの子宮の収縮具合から察するに、ずっと長いこと絶頂し続けていたのだろう。しかし、浩介はまだこのセックスを終わらせてやるつもりはなかった。
夢にまでみた女だ。待ちにまった機会を逃すわけには行かない。完全に俺の女であるということをその心と身体に刻み付けてやるのだ。浩介は汗に濡れ垂れてきたじゃまな前髪をばさりとかき揚げると、 少しも動けないでいる栞へと近付き、その細腰をぐっと強く掴んだ。栞はやっと意識が浮上してきたようで、ふいと浩介を見上げると、悲しげな表情を浮かべて顔を反らした。
あの男のことを想っているのだろうか?あからさまな栞の表情に浩介の胸にヘドロの様などす黒い闇が広がっていく。
誰を愛していたって構やしない。今、この女は俺のものだ。
「栞、今度は上に乗れ。自分でハメてみろ」
「そんな。無理です!もう動けないの…」
「あァ?チッ!しゃあねーな。」
浩介はベッドにあぐらをかくように座り込みコンドームを着けるると、ぐったりとしなだれかかる栞を抱き上げ、対面の状態で自身をひくつきぬかるんだ場所へと埋め込んだ。
「ああっ、あっ、またくるっ、いやなの、ゆるして」
「嫌じゃないでしょ。お前、何回イッてんだよ。このド淫乱」
「…っ、ちがう、ちがうの!ああっ、そこだめっ!あっ、あっ」
浩介は下から激しく突き回しながら、まるで力の入ってない栞の身体を崩れ落ちない様に強く抱いてやった。すると、おもむろに白く細い腕が伸ばされ、浩介の汗に濡れた首に巻き付いた。首を絞められるのかと一瞬固まったが、それは浩介に振り落とされまいと必死の行動だったらしい。栞は動きを止めた浩介を不安げな瞳で見つめている。その小さな子供の様にいたいけな表情を間近で見てしまい、また浩介の心は撃ち抜かれた。
(栞は他の男の為に、俺に抱かれているのに)
浩介は強く唇を噛むと、膨らむばかりの想いをどうにか昇華させたくて、また栞を押し倒して腕に閉じ込めた。
それから何度絶頂させられたのか、途中から記憶がないので分からない。やっと栞が解放されたのは、空も白んだ頃だった。
「何してんの?ちょっと待って!」
「いやっ!もう終わったでしょ?離して!!」
「服着ないとまずいでしょ?もうしないから。落ち着こう、ね?」
抵抗する栞を強く抱き締めたまま、子供をあやすようにゆらゆらと揺れてやると、とうとう観念した様に細い腕から力が抜けた。それを確認して浩介もようやく拘束をとき、ベッド下や床に散らばった栞の衣類を拾って渡してやった。
栞は下着を身につけながら、自身の身体に散らばる卑猥な印に切なくなりその大きな瞳を潤ませた。
(悔しい…。嫌いな男に無理矢理犯されて、あんなに感じてしまった自分が許せない)
ぐっと唇を噛んで小さく肩を震わせながらも栞は身なりを整えると、今度こそ部屋を出ていこうとした。すると、ベッドへ腰掛けて栞の様子を無言で窺っていた男が口を開いた。
「栞ちゃん、大事なもの忘れてない?」
問いかけられて思わずあまり広くもない部屋を見渡すが、そもそも何も持ち込んでいないことを思い出して眉をしかめた。
「何も忘れてませんけど。ああ、誰にも言うなよって脅しのつもりなら気にしなくていいです。私も忙しいんで言いふらしません。その代わり、ここは退職します。二度と近寄らないで」
栞は今にも大声で泣いてしまいそうなるのを押さえて、精一杯の強気な声をケダモノにぶつけてやった。それを真正面から受け止めた男は一瞬驚いた様に目を見開くと、すぐにまた人を食った様な表情で笑った。
「何よ!」
「いやぁ、ごめんごめん。全然会話が噛み合わなくてびっくりした。辞めるとかは違うって」
「は?こんなことして、一緒に働いて行けるわけないでしょ?今すぐにでも刺し殺してやりたのに…」
「いや、ちょっと強引になっちゃたのはごめんね!でもさ、栞ちゃんお金必要なんでしょ?俺と付き合おうよ。月100万とかで、どう?」
「…何言ってるのかちょっとよく分からないんですけど。私彼氏がいるんであり得ません。馬鹿にしないで」
栞が強い視線で睨み付けると、浩介はそれを無言で受け止めて目を細めた。そしてそのまま胸元から財布を取り出すと、栞に向けて万札を何枚か差し出した。
「…受け取る訳ないでしょ?!ふざけないでよ!!」
「いや、彼氏さんが大変なんだろなーと思って。確か入院してるんだよね?」
栞は思わず俯いた。さっと記憶を辿るが、暁斗のことはこの旅館では誰にも話したことなどない筈だ。この男が何故知っているのか。
「だとしても、貴方には関係ありません」
「あるよ、俺は栞ちゃんのこと大好きだもん。だからいくらでも渡すよ。栞ちゃんは今まで通り普通に彼氏さんに会いに行ってくれたら良いし。俺はセックスさせてくれたらそれで充分なんだけど」
「愛人ってことですか?」
「俺は独身だけど、まあそんな感じかな」
「…今はもう許して下さい。何も考えられないんで。もう行きます」
「分かったよ。また夜にでも連絡するから」
栞は浩介が話し終わる前に部屋から出ようとしたが、いきなり伸びてきたまた腕に捕まえられ、ポケットに何かを捻り込まれた。
「え?!なに…」
「俺はこの部屋を片付けてから行くから。またね」
浩介は人形の様に整った笑顔を張り付けて、驚く栞を今度は部屋の外へと押し出した。有無を言わさぬその状況に、栞は閉められたドアを見つめ廊下で立ちすくんだ。
(終わった…。私、これからどうしたらいいの)
一人になりたい。栞が窓のない薄暗い廊下を歩き出そうと一歩踏み出すと、ポケットから何やらふわりと紙の様な物が落ちた。 はっと目線を下げると、それは先程浩介が突き付けてきた万札だった。ポケットを探れば、万札は四枚出てきた。落ちているそれを見れば五万円になる。栞は床のそれをしばらく眺めたあと、可憐な面立ちをきゅっとしかめて、身を小さく屈めて拾った。
※
毛嫌いしている男に犯され、その日はショックで部屋から一歩も出ることが出来ず、暁斗に会いに行けなかった。
(これからどんな顔をして暁斗に会えばいいんだろう…。お義母さんにも、誰にも言えない。もういなくなってしまいたい)
ベッドの上で膝を抱え、何時間も泣き続けた。渡された五万円は財布に入れることも出来ず、リビングの小さなテーブルの上に散らばっている。夜勤明けで疲れている筈なのに、眠ることも食べることも出来ずにただずっと溢れる涙を止められなかった。この激情に逆らえば、自分はもう崩壊してしまうかもしれないと感じてひたすら泣いた。
夕方になり空がオレンジ色に傾きかけた頃、栞の涙の雨もようやく落ち着きかけていた。さすがに喉が渇いていたので、重い身体を引きずる様に起こし台所へ向かおうとしたその時、手元に放ってあったスマホが震えた。栞は身体をビクリと震わせ恐る恐るアプリの通知内容を確認すると、そのメッセージの送り主は真樹だった。その名前を見た途端に心細かった気持ちがふわりと和らぎ、すぐに通知アプリの画面を開いた。真樹からのメッセージの内容は、今日も病室へ顔を出すと伝えていたのに現れなかった栞を心配してくれているものだった。もしも風邪や体調不良なら看病に行くとまで書いてくれている。
(お義母さんが私のこと心配してくれてる…。私のこと大事に思ってくれてる人がいるんだから、私もがんばらなくちゃ。二人で暁斗が目覚めるまで待ち続けなくちゃいけないんだから)
栞は服の袖でぐっと涙の跡を拭うと、真樹へメッセージを返信した。
『こんばんは!大丈夫です。急な予定が出来て行けなくなっただけなんです。連絡忘れててごめんなさい。』
『そういえば足りない分のお金、私の方で用意出来そうです。真樹さんはバイト増やさないで暁斗についててあげてくださいね』
送信ボタンを押すと、大きく深呼吸をした。その勢いのまま立ち上がると、今日初めて窓を開けて新鮮な空気を部屋へと招き入れた。そして大滝旅館で働くようになってから初めて、浩介の連絡先を探したのだった。
※
数日後、栞は浩介の部屋にいた。
金を餌にして誘ったのは浩介からだったが、今回は栞も同意の上で部屋を訪れている為強引に押し倒す理由もなく、最初は紳士的であった。酒やツマミなどを振る舞い会話もリードしながら雰囲気作りをしようとしていることは伝わってきたが、栞があまりにも素っ気ない態度を崩さずに「忙しいからさっさと終わらせて欲しい」などと冷たい視線と言葉を投げられ、ついにカッとなってしまった。
手を引いて寝室へと連れ込むと、そのまま栞の細い身体をベッドへと放り投げた。
そこまでされてずっと強気な表情を貫いていた栞も恐ろしくなったのか、不自然に波打つシーツから逃れようと必死で抵抗を始めた。栞の泣き出しそうな顔を見つめて、浩介は自分に加虐趣味があったことを自覚してしまった。
「ひどいことはしないでください…。優しくして」
「ははっ!それは栞次第じゃない?」
深く口付けられて舌を強く吸われる。すべて食べられてしまいそうなキスに怯えて栞が逃げようともがくほど、その細い手首を強く縫いとめられてセックスは更に乱暴なものへと進化していった。
※
「ふっ、あ、たまんねー、きもちいいよ、栞の極上まんこ。もっと堪能させてくれよ、もっかいイけ!おらっ!おらっ!イケよ!」
「はぅ、ああぁっ、あ、あ、やん、やめ、もう突かないでぇっ!イッちゃうの、もういや、いやぁ!!!」
逃げを打つ栞の腰を両手でがっしりと掴み直すと、自らの腰を更に奥へ突き込む様に深いストロークで汗と体液にまみれよがりまくる美しい女を追い込んだ。
抱え込まれた栞のほっそりとした脚が浩介の抉るように激しい腰の動きに合わせてゆらゆらと揺れる。
「っ、栞、たまんねー、おら、子宮降りてきてんぞ?んー?中痙攣してんぞ?この野郎」
「もういやぁ…」
浩介は栞の濡れぼそった奥まった場所を限界まで膨らんだ硬い雄で征服しつくした。黒目がちの愛らしい瞳に涙を浮かべて許しを乞う小鹿の様にしなやかな栞の裸体を逞しい体躯で全身を使い押さえつけると、その濡れた悲鳴を堪能した。栞の子宮がついに強かな雄に屈服した様に痙攣を始める。
「あ、ああ…も、もうダメ…たすけて!あ、あ、や、はぁああぁっ!!!っあ、イくっ!いくいく!いくいっちゃうぅぅっ!!!」
「あ?誰も助けるわけねーだろ!イきやがれ、おらっ!!」
栞は子宮の入り口を跳ね回るように抉る容赦ないピストンに耐えきれず、華奢な首をグッと仰け反らせると、眉間に皺を寄せてかぶりを降った。額から玉の汗が飛び散る。浩介はぐっと身体を倒し、濡れた豊満な乳房を両手で下からぐにゅぐにゅと揉みしだく。
栞は甘ったるい声で泣き叫び、目を白黒させながら一度大きくビクンッ!と跳ね上がると、糸の切れた人形の様に弛緩した。首筋をしたたる汗をその肉厚な舌を小刻みに動かしながら何度も舐め上げ、 地獄の様に甘美な絶頂の痙攣を耐え抜く。
少し波が引いたところで浩介はまた上半身を栞から離すと、左手で肩で荒い呼吸に合わせてぷるんとよく揺れる乳房を揉み、右手で小さく震えるクリトリスをそっと転がすように弄ってやる。そうしてやると栞は両目をカッと見開き絶叫した。
「ああぁーーーっ!!!!はぁうっ!!!そこほんとにいやのぉ!!もう、もう今日は無理、ゆるしてくださいぃ…」
「あー、すっげ。持っていかれるとこだったわ。でも俺まだ出してねーし。一人だけイきまくりやがって。今日は朝までとことん犯し抜いてやるからな、栞」
「あっ、もういやぁーー!!!!!」
気が狂ったように叫びながら何とか浩介の下から逃げ出そうともがく栞をものともせず、また地獄の様な高速ピストンが始まる。今度こそ浩介自身が絶頂するためだけの遊びのない腰使いに、栞はもう浩介から逃れられないことを悟り、ぐったりと身体を投げ出した。
それに気をよくした浩介は、更に栞を追い詰めるように栞の下半身を持ち上げると上から折り畳むように尻を上に持ち上げ、種付けの準備を始めた。
肉の当たる破裂音と共にドスッドスッと激しい音に身体を軋ませながら栞の最奥を目指す。中は熱くひどくぬかるみ、強く収縮している肉がペニスを搾り上げ、一突きするごとに溶ける様な快楽が腰からせり上がって来る。
「や、やぁ、あ、ああ、ぅんっ、んっんっんっ」
「あー、イく、いい、いいよ栞…」
「はああぁ!!!!、あ、あ、だめなの、出しちゃいや、もうだめ…ゆるしてぇ、いやぁっ」
「イく…、ふっ、」
最後にグポッと子宮の奥まで入り込むような一突きをお見舞いしてやり、とうとう浩介は果てた。そのままゆるゆると腰を動かし最後の一滴まで出しきる。やっと少し波が引いたところで栞の中からペニスを引き抜くと、ゴムを外し口を縛ってゴミ箱へと投げ捨てた。
ちらりと視線を戻して様子を窺うと、栞の意識はまだ朦朧としており、肩で息をしながら呆然としている。さっきの子宮の収縮具合から察するに、ずっと長いこと絶頂し続けていたのだろう。しかし、浩介はまだこのセックスを終わらせてやるつもりはなかった。
夢にまでみた女だ。待ちにまった機会を逃すわけには行かない。完全に俺の女であるということをその心と身体に刻み付けてやるのだ。浩介は汗に濡れ垂れてきたじゃまな前髪をばさりとかき揚げると、 少しも動けないでいる栞へと近付き、その細腰をぐっと強く掴んだ。栞はやっと意識が浮上してきたようで、ふいと浩介を見上げると、悲しげな表情を浮かべて顔を反らした。
あの男のことを想っているのだろうか?あからさまな栞の表情に浩介の胸にヘドロの様などす黒い闇が広がっていく。
誰を愛していたって構やしない。今、この女は俺のものだ。
「栞、今度は上に乗れ。自分でハメてみろ」
「そんな。無理です!もう動けないの…」
「あァ?チッ!しゃあねーな。」
浩介はベッドにあぐらをかくように座り込みコンドームを着けるると、ぐったりとしなだれかかる栞を抱き上げ、対面の状態で自身をひくつきぬかるんだ場所へと埋め込んだ。
「ああっ、あっ、またくるっ、いやなの、ゆるして」
「嫌じゃないでしょ。お前、何回イッてんだよ。このド淫乱」
「…っ、ちがう、ちがうの!ああっ、そこだめっ!あっ、あっ」
浩介は下から激しく突き回しながら、まるで力の入ってない栞の身体を崩れ落ちない様に強く抱いてやった。すると、おもむろに白く細い腕が伸ばされ、浩介の汗に濡れた首に巻き付いた。首を絞められるのかと一瞬固まったが、それは浩介に振り落とされまいと必死の行動だったらしい。栞は動きを止めた浩介を不安げな瞳で見つめている。その小さな子供の様にいたいけな表情を間近で見てしまい、また浩介の心は撃ち抜かれた。
(栞は他の男の為に、俺に抱かれているのに)
浩介は強く唇を噛むと、膨らむばかりの想いをどうにか昇華させたくて、また栞を押し倒して腕に閉じ込めた。
それから何度絶頂させられたのか、途中から記憶がないので分からない。やっと栞が解放されたのは、空も白んだ頃だった。
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