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「もう王太子殿下はあなたとはお会いしないと言っております。」

久しぶりに王宮に行くことにした私は
自分に言われた言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

アレク様が私と会わないと言った?
そんな事有り得るのだろうか?
少し会わなかった間に何が起きているのか、
私にはさっぱり理解できなかった。

「それでも庭に用があるのですわ!」

そんなわけないって
普段ならありえないくらいの聞き分けのなさを
発揮して、私は無理やり王宮の庭に入り込んだ。

従者も本当の意味で止める気はなかったのだろう。
私はすんなり中に入ることが出来た。

今の従者の言葉は信じられなかった。
嘘だと信じたかったから
私はアレク様との思い出の庭に向かった。

今すぐにでも私とアレク様の絆の証を、
スズランを見たかった。
温室にはこの時期でも必ず、スズランが咲いている。

私はそのスズランを見れば、
先程の言葉は嘘だと思えるような気がして、
アレク様の場所を問うよりも先にスズランの
咲いている所へ向かった。

きっとそこには私たちが大切に育てている
スズランが咲いていて、
アレク様の方に向かえば、
あの皇女様が私たちの仲を引き裂くために
嘘をついたんだって言ってくださる。

そう信じて、
でも、あの皇女様に会ってしまったら
その確認するもとれない。
それがわかっていたから、
こっそり音を立てずに温室へと向かった。



でも、
信じてはいけなかったみたいなの。


そこで見た景色は私が想像していたものと違った。
温室に咲いていたはずのスズランは消えていた。

スズランは既に刈り取られていたのだ。
そんなことをアレク様が許すわけがない、
そんなことをアレク様がするわけがない。


そんな時だった、
温室に向かう足音が聞こえたのは。
誰であっても今見つかるのはまずい。
それだけは分かる。

温室の隠れ場所に急いで身を潜めるとそこにきたのは
アレク様とあの皇女様だった。

スズランがあったところに2人は現れ、
仲良さげに肩を寄せあっている。

何があったの?

と思わず問いかけたくなる。
でもこれで、スズランが咲いていないことを
アレク様は知っていたことが確かになってしまった。

「ねえ、アレク?
もうあのスズランに未練は無いのでしょう?
今後のことは分かっていらっしゃるでしょう?」

皇女様の声が聞こえてきた。
未練がない?
皇女様がアレク様のことを呼び捨てにしているのよりも
その言葉に衝撃が走る。
否定してくれると思ってた。

それなのに、聞こえてきた、
アレク様の声は、、、、

「あぁ…リアとも別れるよ……」

という残酷な言葉だった………
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