白夢の忘れられた神様。

sasara

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3日目 お仕事とオシゴト

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♪♪~♪♪~

またこの音だ。嫌になる。音が大きいのだ。
でもまぁ、この音が止まるときキイナが私を撫でてくれるから許してあげよう。

朝がやってきた。キイナは今日もお仕事らしい。
また、時計の針のこと、食べ物のことやらを説明してくれる。
昨日と同じことだ。私は、残念ながらネコじゃないから何度も言わなくても
覚えられるけど、キイナがあんまりに楽しそうに嬉しそうに笑って話すから。
私も真剣なふりをして、聞いてあげる。優しいのが、私、ハクなんだよ。
なんて鼻を鳴らしてもキイナは、気付いてもない。
今日も針が、8の所に来た時、キイナはお仕事へ向かった。

なので、私もオシゴトを始めることにした。
まずは、キイナの布団に戻って、もうひと眠りだ。

起きるとやっぱり12の所に針が来てて我ながら天才だと思った。
それから、昨日と同じように食べ物、水、見回りを終わらせる。
そして、嫌だけど、窓に近づいて影を踏む。本当に嫌だ。

黒い影が伸びて形になると、なお嫌になる。

オイ。オマエノ、、

分かってるって。もういいから。話せよ。
まどろっこしい言い方に腹が立つので会話の主導権は渡さない。

ニンゲンに種をうえろ。ダレでもいい。

この影がいう種は簡単に言えば、寿命を奪う種だ。
これをニンゲンに植えれば人間の寿命を奪うことができる。その奪った
寿命を私たちに入れれば私たちは、死ぬことができる。というものだ。
ようやく現世になってこの種が出来上がったらしい。その任務に指名されたのが私だ。
仲間は少ないけど何人かいる。何に生れたのか知らないけど。

キイナ、、ニウエロ。

その言葉を言い切る前に私は、影をふみつけた。

おまえが、そのなまえをくちにするな。
いいか。にどとだ。

そういうと影は消えた。
怒りがどんどん込み上げてくる。私は、もう一度キイナの布団に戻って眠りについた。
それでも頭の中には、影の言葉が響き続けた。

キイナが帰ってきても胸がざわざわして、落ち着かなかった。
キイナはずっと、そんな私を心配して撫でてくれたけど私はこの日初めてミルクを飲まなかった。

夜は、自分の寝床で眠ることにした。キイナも布団に入ったし今日はこれでいいんだ。
目を閉じてキイナが心配してないといいなと思った。

少し時間が経ったけど、ちっとも眠りにつけない。
寒いせいだ。それにキイナの匂いも少ないから。うん。そうだ。
しょうがない。私は、キイナの布団に潜り込んだ。

するとキイナは、眠ってなかったみたいでいつも朝に大きな音がする携帯というのを
触っていた。少し光が強いけど私は我慢して、キイナの横に丸くなる。
それからまた少し時間が経ったのに私はまだ眠ってはいなかった。
今度は、寒いせいでも匂いのせいでもない。
さっきからずっとキイナが震えているせいだ。小さな声と合わせるようにキイナの細い肩が震えている。
きっと泣いているのだ。何に泣いているのだろう。そう思うとなぜか自分の胸がキュッと苦しくなった。
ネコじゃ何もしてあげられない。ネコですらない自分では、もっと何もできない。

キイナの顔を見る勇気がなかった。

ハク、ごめんね。眠れないよね。怖い夢を見たの。
黒い影がね、ハクを連れて行こうとするの。夢で泣くなんて子供みたいだね

きっと夢じゃない。あいつがキイナの意識に勝手に入ったんだ。
私のせいだ。私のせいで、キイナが泣いた。
キイナは、そのうち小さな寝息をたてて眠った。私は決意した。
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