白夢の忘れられた神様。

sasara

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4日目 小さな決意と大きな涙

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キイナの家に来てまだ、数日しかたっていないのにもう長く一緒にいる気がする。
朝の様子はこの数日と同じ流れだったけど。違うことが一つあった。

キイナが家を出てひと眠りを終えた後、黒い影と会話をすることにした。
私は、昨日の夜のことについての怒りは、いまだに消えていなかった。

おまえ、昨日キイナに会っただろ。なぜだ。

私はあくまで冷静に影を問い詰めることに決めていた。

オマエ、悩ンデル。ワタシハルールヲ守ッタ。オマエノ為ダ

キイナが泣いてた。私はキイナを巻き込まない。今後一切手を出すな。

牽制すればこいつもむやみに手を出せないことも分かっている。私がいなくなれば
困るのはこいつらなのだから。

時計の針は、3の所に来ていた。
私は、キイナの部屋にある本棚の下を覗き込んだ。

影を消すときあいつは変なことを言ったからだ。

キイナ、オマエガ守リタイノハ、本当二タダノニンゲンカ?
本当ノコトヲ知リタイナラ部屋ヲ探シテミロ。

そういって影は消えていった。本棚の下にあったノートを私は見てみることにした。
随分と使い込まれたノートにはキイナの字がたくさんあるけど私は、文字が読めない。
困っていると頭の中が光に包まれた。
目を開けるとさっきまで読めなかった文字が読めるようになっていた。
きっと適用されたのだ。必要なことはその都度適用されるのもこの役割を果たす為だろう。

私は誰?どうしてこんな力があるんだろう。
こんな力私は欲しくなかったのに。
誰に話しても信じてもらえない。助けて、、
◆◆◆なんて力。

そこで最初のページが終わっていた。
おかしい。文字は読めるようになったはずなのに、なぜか読めない文字があった。
ちゃんと適用されていないのか?

それから書いてあるのは、その力のせいで、起きた悲しかった出来事や
周りの人からのひどい仕打ちなどが書かれていた。
ノートには時々文字が滲んでいるところがあった。
まるでキイナの心を見ているように思えた。
今日は、キイナをたくさん甘やかしてあげることにした。

キイナがお仕事を終えて私は、ずっとキイナの近くにいてあげることにした。
今日は、キイナが悪魔に見えた。私をお風呂に入れようとした。
ネコになってしまったせいでどうにも水が嫌だ。
それでもしょうがない。今日はちゃんと我慢しよう。
覚悟を決めてお風呂に近づくと私は異変に気が付いた。
キイナの背中に白いあざがあることに気が付いたのだ。
人間の体に詳しくはなくても、特殊なことはすぐ分かった。

私がそのあざを長く見ていたせいで、キイナに困った顔をされた。

変だよね。この体。でもハクと同じ白だよ。なんてね。

そうキイナは、悲しそうに笑った。
私のせいでキイナは、また悲しい顔をした。
それが私は、とても悲しかった。この感情は、ネコになったからなのか。
眠りにつくときキイナは、私をずっと撫でてくれた。
その撫でる手は、優しく一定のリズム。
私がネコだから。たまたま私が白いネコだから。あの日キイナは私を拾った。
偶然の出来事なのに私はこうなることが必然だったように思える。
キイナの前では、役割も影のことも忘れることができる。
頭の中は、いつもキイナでいっぱいだ。これが飼われるということなのか。
私の頭の中がいつもキイナでずっとそうであればいいのに。
そう思ってキイナの顔に近づいてみた。

・・・

驚いた。キイナの目から大きな水が出ていた。
これは、涙だ。キイナが泣いていた。まただ。
今度は、理由が分からない涙だ。

ごめんね。また私が泣くから。ハク心配するよね。
ハクは、悪くないからね。私は、ハクが好きだよ。

そうキイナが言ってくれたから。私は、うれしかった。
なんだか、体が暖かくなってきていい気持ちだった。
キイナの寝顔を見て私は決意した。
キイナは、私が守る。その為には、役割を終わらせるしかない。
種を人間に植える。キイナ以外の人間に。
キイナの大きな涙に比べたらきっと小さな決意だけど。
もっとキイナのことを知りたい。そう思うだけで、私の体は、暖かくなる。

時間ガナイ。モウジキ迎エガ来テシマウ。
アト7日ダ。
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