JK戴冠

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第4章 王さま修行 / 教会編

第38話 瞬きのない視界で

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 教徒たちは本気で殺しに来ているが、兵士として鍛えられたわけでもないので弱い。鎧に刃を向けているとはいえ、ザキに利用されているだけのコワの民だ。

「おいお前ら!! 殺すんじゃねぇぞ、わざわざ罪を着る必要はねぇ!!」

 ここで鎧たちが殺人を犯してしまえば、その事実をザキにどう利用されるかわからない。そう考えたリグロは大声で呼びかけつつ、器用に武器を振り回してやすやすと敵を気絶させていった。

 その強さを前にしても恐れず、教徒たちは次々に襲いかかってくる。

(おいおい……こいつら、明らかに格上の俺らを一切恐れず向かってくる。これはただ正義感だけじゃ無理だ。薬でもやってるのか?)

 リグロは教会に潜む闇を感じた。

 ティナは久々に暴れられて嬉しいものの、力の調節に苦戦し苛立ちが募っていた。

(なんで殺しちゃいけないんだ……)

 気絶させるだけのパンチなんて物足りない。この拳を思い切り振らせて欲しい。ふとそう考えたせいで少し勢いが強まり流血させてしまったが、お構いなしに次に向かった。

 セオシュは晴を気にかけつつも、ティナのそばで師匠に背中を預けながら銃を扱っていた。実弾の代わりに麻酔針を使用している。その素早い銃さばきと正確な狙撃で、あっという間に半数近くを眠らせた。

 カファーは相変わらずの身軽な動きを武器に、笑顔でバッタバッタと敵を倒していた。

(今日のおれ、結構いい感じ!!)

 彼の戦場は空中だ。教徒ではまるで歯が立たない。

 ジルは誰よりも晴のそばに寄っており、近づきすぎた敵には容赦なく重い一撃を喰らわせていた。華麗な斧捌きは、トキと戦って負けた日から必死に練習して身につけたものだ。

 晴は戦えないので邪魔にならないよう気をつけつつ、人並みの向こうにいるザキを見ていた。彼もじっと晴を見つめている。ザキ自身は動くつもりがないようだった。



「カファー、気をつけろ。上にも何かいる」

 戦いつつジルが呟いた言葉も、カファーの耳なら拾うことができる。カファーは「やっぱり」と呟き、隙を見て軽く上を見上げた。中二階のようなスペースがある。

(今ここで戦ってる敵の他に、数人の足音がしてたんだよね。援軍のつもり? もうちょっと晴に寄っておこう)

 そうしてカファーとジルが晴に寄ったころ、教徒はあらかた片付けられていた。何人もの教徒が床に倒れている。その誰もが息をしていた。

「ふむ……やはり鎧さんたちには即席兵士じゃ手も足も出ませんね。次に移りましょう」
「なんだと?」

 すると、ザキの合図で聖堂の中二階から新たな敵が降りてきた。ざっと10人ほどだ。そしてその兵士たちの姿が、晴たちを大いに驚かせた。


 全員、小柄なのだ。それでいて顔立ちは大人。


(これは……)

 リグロが眉を顰めたと同時に、彼らは息を合わせて一斉に襲いかかってきた。その動きは倒した教徒と比べ物にならない。

(チッ、被験者かよ)

 それは『小さな町』で暮らす、実験の失敗作とされた人たちだった。

 失敗作の中でも、素早かったり跳躍力が高かったり、戦闘向きの能力が強化されている者を引き抜いて鍛え上げ、教会の戦力にしてきたのである。

(なんてことを……)

 強いショックを受けながらも、セオシュは必死で銃を操っていた。相手がすばしっこく、狙撃の難易度が一気に跳ね上がったのだ。もはや麻酔の効かない者もいる。

 ティナはいくら殴ってもダメージを感じさせない相手と戦闘になっていた。まるで自分を相手しているようだ。強い相手はティナの心を躍らせる。

(いいね、面白くなってきた……!)

 そんな血が沸るティナに、無謀にも向かっていく男がいた。彼は被験者ではなく、まだ残っていた弱い教徒である。

「チッ」

 強い相手に集中したいティナは、煩わしい男を手加減なしに片手で弾き飛ばしてしまった。

 男は凄まじい勢いで吹っ飛ばされていき、壁にめり込む勢いで激突し脱力した。

(うわ、ティナのやつ、やりやがった)
(あれは骨だけじゃ済まないね……死んじゃったかな)

 横目でそれを見るリグロが舌打ちをし、カファーは冷や汗をかいた。しかし戦いは終わらない。武器を使いこなす相手と対峙し、カファーとジルは苦戦している。

 リグロの相手はなかなか距離を詰めず、斧が当たらない位置から飛び道具で攻撃してきていた。近接戦闘を得意とするリグロにとっては最悪の相手だ。

(めんどくせぇ……)

 戦況は、じわじわと悪くなっていった。



 そんなとき、よく跳ぶすばしっこい敵が一瞬で晴の背後に迫り、首を狙って刃物を振った。

「!!!!」

 リグロが間一髪で晴を引き寄せる。間に合わなければ晴の首が飛んでいた。

「痛っ……!!」

 致命傷は免れたものの、晴は咄嗟に踏み出せなかった右足を深く斬られた。歩けない。傷口から血が溢れ、あっという間に床を赤く染める。

(痛い痛い痛い……!!!!)

 晴はパニックになりその場に倒れ込んだ。長期戦は許されない。鎧たちに戦慄が走った。



 そんなとき、突然聖堂の扉が開いた。

「やめなさい!!!」

 凛とした女性の声。鎧たちがハッと気を取られる。

 その声と、悲痛な表情。痛みに震えながら顔をあげた晴は気づいた。大きな声で戦いを止めたのは、紛れもなく街で自分を救ってくれた、あの女性であると。

「姉さん……!!!」

 女性──エミレラの姿に、鎧と弟子たちは安堵した。誰もが彼女に目を奪われてしまったのだ。


 だから、反応できなかった。セオシュの背後に迫る敵に。

「うっ」

 セオシュの背中が斬られ、鮮血が宙を舞った。
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