BEST TIME

yon

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第10話

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中へ入ると、有名人にしては質素な部屋だった。

もちろん、私の部屋よりは大きいのだが

家具が少ない。

机にソファ テレビ 冷蔵庫 ベッド それくらいしか 見渡す限り無かった。

温かみの少ない部屋だった。

「ごめん、まだ酔ってて気持ち悪い。
   ぼーっとさせて。」

そういうと、ソファと机の間に座った。

私は、キッチンの方から水を持って渡した。

「いつも、ここで寝泊りしてるんですか?」

「うん… 一応もう一部屋 家はあるんだけど。そこは、お客さん呼ぶ用とか仕事する時用かな。でも、会社に教えてない。」

「何で教えないんですか?」

「メディアにバラされること考えるとね。
   青川優はこんなマンションに住んでます~ 見に行く~ ってなったらさ 俺は嫌。」

「何で私はいいんですか?」

「なんか…鈴ちゃんは違う。鈴ちゃんは… そんなつまらない人間じゃない。
なぁ 俺は鈴ちゃんに聞いたよね あの時答えてくれたことが 何よりも求めていたことだった気がするんだ。俺は、たった1人だけでもいい。1握りの人数に理解されたい。共感されたい。なぁ、鈴ちゃん。俺の弱さを教えるから、鈴ちゃんもいつでも弱さをさらけ出しに来ていいよ。もっともっと分かり合おうよ。」

なかなか酔っているようで

鬼気迫ってくる。

「青川さん 私なんかより、もっと青川さんを理解してくれる方が居ますよ。一時の迷いでこんな、凡人と… 」

「本当にそう思ってる?有名人と一般人の壁は何なんだ。どうして俺が有名人だからって一般人と…鈴ちゃんと仲良くしちゃいけない?俺はもっと追求したいんだ。」

そういうと私を手招きして、近付いた私の髪を撫でた。

「鈴ちゃんは… 男と2人っきりでドキドキしないの?」

私はきょとんとした。

「え…?ドキドキですか?しないです。」

私が困っていると青川さんは吹き出した。

「今日は俺の彼女なのに、ドキドキしなかったら意味無いよ。驚いた。」

と、けらけら笑っていた。

私は苦笑いし

「私、彼氏いたことないのでドキドキとかわからないんですよ。」

人を好きになった。それは、小学低学年の話で、周りがもてはやした男子を私も好きになってみたぐらいしかなくて、両想いかもという噂がたったが、私は何も嬉しくなかったから、きっと好きではなかったんだろう。それからというもの、恋愛という恋愛はしてこなかった。まず、告白をされても全て断ったし、高校生からは青川優漬けの毎日で、男子を見ようとすらしなかった。

「意外… 絶対いると思った。今もいると思って申し訳ないなって焦ってた。」

「そんな事言ったら、青川さん 彼女いるでしょう?」

「いないよ。申し訳な~い。」

「えっ いると思ってました」

「いるんだったら鈴ちゃん家に連れ込まないからそこまで乱れてないからな 俺!」

「わかりましたよー。もうこんな時間ですし帰りますね。今日はありがとうございました。おやすみなさい。」

そうして、立ち上がり玄関へ行くと、

「いやいや?もう遅いし泊まっていったら?夜中だし、もう危ないって。」

「いや…泊まるわけにはいきませんよ。彼女じゃないですし。」

「だから今日は彼女だってば。
大人しく泊まれよ。明日送っていくし。」

そういうと、走ってきて私の手を掴んで部屋の奥のベッドに連れてきてくれた。

そして大きくあくびをすると

「俺、たまに夢遊病なるから迷惑かけちゃうかも、ごめん。」

そういうと、ソファに寝転がり寝てしまった。



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