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第16話
しおりを挟む私は仕事帰りに百合子と水族館に行った。
青と魚の体のコントラスト。
小魚たちの軍隊はきらきら光る軍服を着、決して乱れることのない行進を見せる。
エイは優雅に泳いで、クラゲは別世界を浮遊している。
生命の神秘だった。
私達の先祖は海の中にいた。
全ての始まりは水。
魚たちに親近感が湧いた。
そして、迷い込んだようだった。
私達は、ひたすらに
綺麗、美しい…。など感嘆の声をあげていた。
そして鑑賞している間、一言も話さなかった。
不思議な緊張感に包まれていた。
会話をすればお互い、話したい事がこぼれてしまいそうだったのかもしれない。
私達は水族館の中にあるレストランで夕食をとることにした。
そこでやっと会話をした。
「話したい事があるの。」
私は沈黙を破った。
「ええ。」
百合子は妙に落ち着いていた。
「実は、青川さんと恋人になったの…。」
私がうつむき照れながら言うと、
百合子は途端に嬉しそうな顔になり、泣いて喜んだ。
「よかった。よかったじゃない。そんな予感がしていたの。鈴、しっかり支えてあげなさいよ。…それと私も話があるの。」
百合子もうつむいた。
「なに?」
そして涙ぐみ笑顔でこう言った。
「実は、結婚する事になったの。もう子供も、お腹の中にいるわ。ねぇ、鈴。あなたと私、世界一の幸せ者ね。」
百合子が結婚。
百合子が妊娠。
2つのことが重なり、私は動揺した。
衝撃だった。
私は嬉しさのあまり涙が溢れた。
私達は夜中のレストランで抱き合い大泣きした。
この友情をいつまでも大切にしていきたい。
喜びを分かち合える。そんな美しい友情を。
今ではこんな仲は珍しいだろう。
人は誰しも、友人を妬み邪魔をしたくなる。
だが、この二人はどうだろうか。
素直にお互いの幸せを喜んでいる。
私は、そんな仲になれる人間に出会っていない。
裏切りと隣合わせの友情には飽き飽きした。
もっと美しく生きたい。
新しい生活を追い求めて私も分かち合うための涙を流したいと思う。
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