蘇生勇者と悠久の魔法使い

杏子餡

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プロローグ

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 酷く焼け焦げた匂いが当たり一面に漂う広大な台地、周囲はどす黒く淀み草木すら生えていない
。空を覆う暗雲が、ようやく薄くなった場所から小さな光を受け入れて、その光景が夢では無く事実だったんだとその大地と、そこに居る者に思い知らせた。

「…やっぱり生きてるのか…」

 生命の息吹など一切感じる事の無いその場所に、ただ佇む一人の青年。その後ろには、雲の上を突き抜けその存在をこの大陸に知らしめる程に巨大な塔がそびえている。

「ああ…なんだ…そうか、やっと分かった。なんで俺がこの世界に呼ばれたのか…」

 遠くを見つめながらもその目の奥には、悲しくも力強い何かが見え隠れしている。そこへボロボロで今にも崩れ落ちそうな白い着物を着た女性が、袖を振りながらフワフワと近寄ってくる。

『ご無事で本当に良かったです!』

 抱きしめてくるその女性は、余程嬉しかったのか大粒の涙を溢して青年の胸に頭を摺り寄せている。だが青年はその両肩を掴み優しく引き離し顔を上げさせる。

「無事か…そうなんだ…俺は無事なんだよ…。だから…そうだな…今までありがとう…そしてごめんな…お前との契約を解除する」
『えっ? 何を仰って…?』

 白い雪のような肌を持つ可愛らしいその女性は、青年の言葉を聞いた瞬間に着ていた白い着物から白いドレスへ、黒い髪は白銀の髪へと青白い光を放ちながら変わっていく。

『どうして…? えっ! まっまさか! 駄目です! 許しません!』

 姿が変わり戸惑う女性に、青年は首を振り笑顔で答える。

「良いんだ…やっと分かったんだ、この世界に来た理由…俺がやるべき事…。元気でな…みんなに宜しく伝えといてくれ」
『駄目です! 駄目です! 駄目…!』

 大粒の涙を流し泣き叫ぶ女性は、青年の服を掴み首を振りながら彼の何かを止めようとする。それをを見つめながら青年は両手を広げ何かを呟く、すると彼を中心に眩い光が溢れ出し始めた。
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