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異世界召喚と始めての蘇生
第2話
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目の前で一つの命が終わりを迎える、それを見下ろし返り血を浴びた少女が、軽々と自分の身の丈と同じ位の剣を軽々と肩に乗せ軽く息を吐き出す。するとその直ぐ近く、突如人一人分程の光り輝く魔法陣が空間に現れ、その中から現れた全裸の男性が地面に叩きつけられるのを目にする。
(何かのトラップが発動した…? いや…違うな…まぁでも弱そうだしただの雑魚だな…それよりも魔法使いが見当たらないな…)
黒いワンピースに身を包む少女は、少しだけ警戒して気配を消しつつ相手を観察し始めた。
「ぐへっ!」
濡れた床に叩きつけられた様な衝撃にその男が声を上げる。そして目の前に転がる女性を目にすると恐怖のあまり這い蹲るように離れようともがいている。
「いってぇ…ん? 痛くないな…? おいおい何だよこの場所は…たしか風呂に入ってたはず…」
手に付く生暖かい血が夢ではなく現実ではないかと思い始めていた。それにかなり激しく叩きつけられた感覚があったのに、痛みが全くないのも疑問に感じる。目を見開きこちらを見ている女性をもう一度見る、年齢は十代後半位で間違いなく死体だろう。その彼女のお腹辺りから下が無造作に切られたかの様に無いのを見ると何かに襲われたとしか言い様が無い。
それとそのすぐ側にもう一人、いや一人と呼べるのか分からないが、水色の髪で凄く可愛らしい顔立ちの女性の体から機械の部品らしい物が露出している。同様に何かに襲われ壊れているようだが、それでもどうにかして動こうとしている。
「ウソだろ……」
男性の声を聞き動こうとしている女性が顔だけをその方向に向ける。そしてその顔を見るなり即座に声を発した。
「ヨ…ヨウヤク コチラへ コラレタノデスネ ロロサマハ ドチラデスカ? リリルカ ガ タイヘンナコトニ!」
何を言っているのか理解できる訳も無く言葉に詰まる。それでも取り合えず会話が出来そうな唯一の人物だと判断してその言葉に返答する。
「あ…いや…あの…ここは何処ですか? それにその女性は死んでますよね? 貴方のその体はまさかロボットですか? ロロサマと言う人が何か知ってるとか?」
「エ? ナニモ シラサレテ ナイノデスカ?」
「え? 言ってる意味が分からないんですが…これって夢ですよね?」
冷静になれるはずも無く、機械の女性も同様に混乱しているようだった。そしてある事に気が付く、視界にまるでゲームの世界に居る様なマーカーや対象者の名前等が表示されているのだ。注意深く確認すると倒れて既に息絶えている女性の名前と機械の女性の名前が鮮明に視界に表示された。
名前:【リリルカ・ノーツ】職業:【見習い魔法使い】体力:0 魔力:500000
『蘇生は可能です。蘇生しますか? yes/no』
魔法使いの文字に蘇生可能と書いてある。ゲームなんて最近してなかったのに、これは昔遊んだゲームで使われていた表示方法に似ている。それにこれだけの酷い死体を簡単に生き返らす事が出来るのは、ゲームの世界か夢の中でしかないだろうと思いながら目線を機械の女性へ向ける。
名前:【メル】職業:【自動人形オートマトン/乙型】体力:30 魔力:38000
「オートマトンって魔法で動くロボットみたいなやつじゃなかったか? 昔やったゲームに居なかったっけ」
彼は就職する前、外で遊ぶよりもオンラインゲームに明け暮れた日々を小中高と送った。廃人と呼ぶまでは無いが、両親がいつも仕事で家に居なかったのも原因だろう、学校と寝るとき以外は殆どゲームをしていた。
「昔やったゲームに似てるな…無理やり引退されられて三年か…たまにはゲームしたいなぁ」
なんだか妙に現実離れしすぎている為に落ち着いてくる。そこに後ろから不意に声が聞こえる。
『そこの裸のお兄さん、貴方は誰なのかなぁ? 魔法使いの知り合い? 何処に行ったか知らない?』
バッと声のする方へ顔を向けると、そこには全身黒いワンピースを着た少女が立っていた。
名前:【エリュオン】職業:【闇の魔物/近接型】体力:60000 魔力:4000
見た瞬間鳥肌が立ち、嫌な汗が噴出す。この少女は危険だと直感で感じる。しかもその小さな体ではありえない程大きな剣を片手で担いでる。
『まぁ別にどっちでも良いや。ただ、私の感ではアンタも殺した方が良さそうな気がするから殺す』
無邪気に微笑むこの少女に恐怖しか感じない。不敵な笑みを浮かべ、目を離す事が出来ない。瞬きした瞬間に斬られそうな気がした。いや、そう思った瞬間に目の前には大剣を振りかぶった少女がそこに居り、容赦無く持っていた剣で斬りかかって来た。青年は、まるで簡単に折れ曲がるストローの様にくの字に体を折りながら横に吹き飛び数十メートル飛ばされた後に地面に叩きつけられた。
『ぷははっ! よわっ! 軽くなぎ払っただけなのに!』
ゲラゲラと笑いながら少女は大げさに剣を振り回して地面に突き刺す。だが、目線は吹き飛ばした男から離す事が出来なかった。なぜならあれだけ吹き飛ばしたのに関わらず、平然と立ち上がったからだ。
「あれ? 吹き飛ばされたのに全然痛くない? それにしても…全く見えなかった! マジでやばいぞあの女の子!」
エリュオンと表示された女の子は動かない。弱そうだからと力加減を誤ったとしてもおかしい、全裸で防御姿勢も取らなかった奴を、軽くとはいえ剣で薙ぎ払ったのに全くの無傷なのだ。
『お前…いったい何者だ? 無傷なんてありえない』
少女は警戒レベルを一段階上げて剣を身構える。相手もどうしていいのか分からずにそのままの状態で立ち尽くしてる為、次の攻撃に移る。薙ぎ払うのが駄目なら真っ二つに斬ってやると、思いっきり飛び上がった少女は、男の額目掛けて剣を振り下ろした。そして先程と同様に抵抗も無くその剣は男の額に当たる。
「おわっ!」
身構える間も無く剣が振れ擦るような鈍い金属音が響き渡る、感じる冷たい鉄の感触。確かに額は大剣に触れている、でも斬られていない。思いっきり振り下ろしている大剣が触れたまま微動だにしない。少女もおかしいと思ったのだろうか、クルクルと後ろに大剣を持ったまま飛び距離を置く。
『一体何なのよお前! 硬過ぎるわ! いててて…!』
少女は大剣を地面に刺し、手が痺れたのかブラブラと振っている。しかし、突然少女が頭だけ横に向け殺気を放つ。
『まだ他が居たのか、オートマトン!』
その声にイサムも恐る恐る少女から目を離し、横に目を向ける
【ノル】【自動人形オートマトン甲型】
そこで壊れているオートマトンの仲間だろう、顔がそっくりだ。
「ヤミ ハ ハイジョシマス」
『ハッ、人形なのに生意気ね!』
オートマトンは片手を耳に当てて何かをしゃべっている。
「ルルル【トナカイ】オクッテ」
オートマトンの前に魔法陣が現れ、その中から角の様な物が二本出てくる。そしてそれを引き出すとオートマトンは構えた。
ノルと名前が表示されたオートマトンの武器は、海外の映画で見たことがあるトンファーと呼ばれる武器に似ていて、それを両手別々に持ち少女に向かって走り出す。
『はっ! そんな物で!』
互いの武器が何度も激しくぶつかり合う、どうやら力が拮抗しているように見える。イサムは自分から興味が無くなり少し安心したが、いつ襲い掛かって来るか分からないので気は抜けない。その様子を見ながら、不意に視界の隅に映るメールマークに気が付く。
見る機会があるとすれば今だけだろう。そうイサムは思い、視界に映るメールマークに意識を向けると視界全面にメール内容が表示され始める。
●
あなたは、この世界を救う勇者として召喚されました! おめでとう! ただ、無理やり許可無く貴方を召喚するお詫びに、この世界では存在しない魔法をあなたにプレゼントします!
なんと! 生きとし生けるものをこの世の螺旋に連れ戻すことが出来る【蘇生魔法】です! 使用制限は色々ありますが、かなり使える魔法なので人気が出る事間違いなし! 拍手! ただ貴方が死ぬと困るので、防御力と体力は目一杯増やしてますので、どうか死なないでね。では、そちらの世界で貴方と会う事を楽しみにしています。【ロロルーシェ・ノーツ】より
「意味が分からない…何だこれ…ふざけるなよ…」
まったく意味が分からない。確かにライトノベルや転生する漫画は読んでたし、異世界も実際にあったら良いなと思っていた。だけど、何故自分なのか。死亡して転生って訳でもないし、べつにそれほど不幸でもない。 隣に美人のお姉さんが住んで居るし、毎日挨拶するのが楽しみなのに、異世界召喚とかありえない。オンラインゲームも三年前の就職が決まった時点で既に引退している。てことは目の前にいる女の子は、夢ではなく本物なのか? と事実を知り混みあげてくる吐き気に、みるみる顔が青ざめていく。
「うぇ……」
(いや…ちょっと待てよ…さっき蘇生魔法って書いてあったな)
メールをもう一度確認し【蘇生魔法】が使えると言う分をみる。確かに書いてある。
「じゃぁこの女の子【リリルカ・ノーツ】は蘇生出来るって事か…?」
リリルカの方を見ると先程と同じ様に【蘇生可能】と表示されている文字を確認する。
「名前がメールの差出人と同じ【ノーツ】だ…家族なのかもな」
ふとそう思った。無理やり召喚した最低な奴かも知れないが、本当に蘇生が使えるなら、いずれ会うだろう家族と無残な死体で対面させたくは無いな、とイサムは思った。視界に映るコマンドメニューに目をやると自然に展開され【魔法・スキル】が表示される。更にその欄にある【蘇生】をタップする。すると自分の中心に五メートル程の円が表示され、【円の範囲内蘇生可能】の文字が現れる。
「なるほど、操作は意外と簡単だな」
ゲームの経験もあり、すんなりと操作方法を覚えていく。操作し易い様に表示方法が三年前に引退したオンラインゲームと酷似しているのが怪しいと感じるが、召喚した奴は取っ付き易いようにする為に結構考えてるのかもしれない。リリルカを【範囲蘇生可能】の中にあわせると、ふと迷うものが表示されている。彼女の上半身と下半身が別々に【蘇生可能】となっているのだ。
「これ…上半身だけ蘇生させれば、たぶん下半身は消えて上半身と一緒に復元されるよな? でも下半身に蘇生掛けたら、上半身も復元されるのかな? いやそれに下半身だけ動き出したら…って事は無いだろうが…もし上半身だけとか下半身だけ蘇生が本当に成功したら、後で絶対恨まれそうだ…」
上半身だけならともかく、下半身だけ蘇生なんてあり得ないと思う。でも、もしもの事を考えたら。 イサムは仕方が無いと意を決して、同時に上下半身の【蘇生】ボタンを押した。
(何かのトラップが発動した…? いや…違うな…まぁでも弱そうだしただの雑魚だな…それよりも魔法使いが見当たらないな…)
黒いワンピースに身を包む少女は、少しだけ警戒して気配を消しつつ相手を観察し始めた。
「ぐへっ!」
濡れた床に叩きつけられた様な衝撃にその男が声を上げる。そして目の前に転がる女性を目にすると恐怖のあまり這い蹲るように離れようともがいている。
「いってぇ…ん? 痛くないな…? おいおい何だよこの場所は…たしか風呂に入ってたはず…」
手に付く生暖かい血が夢ではなく現実ではないかと思い始めていた。それにかなり激しく叩きつけられた感覚があったのに、痛みが全くないのも疑問に感じる。目を見開きこちらを見ている女性をもう一度見る、年齢は十代後半位で間違いなく死体だろう。その彼女のお腹辺りから下が無造作に切られたかの様に無いのを見ると何かに襲われたとしか言い様が無い。
それとそのすぐ側にもう一人、いや一人と呼べるのか分からないが、水色の髪で凄く可愛らしい顔立ちの女性の体から機械の部品らしい物が露出している。同様に何かに襲われ壊れているようだが、それでもどうにかして動こうとしている。
「ウソだろ……」
男性の声を聞き動こうとしている女性が顔だけをその方向に向ける。そしてその顔を見るなり即座に声を発した。
「ヨ…ヨウヤク コチラへ コラレタノデスネ ロロサマハ ドチラデスカ? リリルカ ガ タイヘンナコトニ!」
何を言っているのか理解できる訳も無く言葉に詰まる。それでも取り合えず会話が出来そうな唯一の人物だと判断してその言葉に返答する。
「あ…いや…あの…ここは何処ですか? それにその女性は死んでますよね? 貴方のその体はまさかロボットですか? ロロサマと言う人が何か知ってるとか?」
「エ? ナニモ シラサレテ ナイノデスカ?」
「え? 言ってる意味が分からないんですが…これって夢ですよね?」
冷静になれるはずも無く、機械の女性も同様に混乱しているようだった。そしてある事に気が付く、視界にまるでゲームの世界に居る様なマーカーや対象者の名前等が表示されているのだ。注意深く確認すると倒れて既に息絶えている女性の名前と機械の女性の名前が鮮明に視界に表示された。
名前:【リリルカ・ノーツ】職業:【見習い魔法使い】体力:0 魔力:500000
『蘇生は可能です。蘇生しますか? yes/no』
魔法使いの文字に蘇生可能と書いてある。ゲームなんて最近してなかったのに、これは昔遊んだゲームで使われていた表示方法に似ている。それにこれだけの酷い死体を簡単に生き返らす事が出来るのは、ゲームの世界か夢の中でしかないだろうと思いながら目線を機械の女性へ向ける。
名前:【メル】職業:【自動人形オートマトン/乙型】体力:30 魔力:38000
「オートマトンって魔法で動くロボットみたいなやつじゃなかったか? 昔やったゲームに居なかったっけ」
彼は就職する前、外で遊ぶよりもオンラインゲームに明け暮れた日々を小中高と送った。廃人と呼ぶまでは無いが、両親がいつも仕事で家に居なかったのも原因だろう、学校と寝るとき以外は殆どゲームをしていた。
「昔やったゲームに似てるな…無理やり引退されられて三年か…たまにはゲームしたいなぁ」
なんだか妙に現実離れしすぎている為に落ち着いてくる。そこに後ろから不意に声が聞こえる。
『そこの裸のお兄さん、貴方は誰なのかなぁ? 魔法使いの知り合い? 何処に行ったか知らない?』
バッと声のする方へ顔を向けると、そこには全身黒いワンピースを着た少女が立っていた。
名前:【エリュオン】職業:【闇の魔物/近接型】体力:60000 魔力:4000
見た瞬間鳥肌が立ち、嫌な汗が噴出す。この少女は危険だと直感で感じる。しかもその小さな体ではありえない程大きな剣を片手で担いでる。
『まぁ別にどっちでも良いや。ただ、私の感ではアンタも殺した方が良さそうな気がするから殺す』
無邪気に微笑むこの少女に恐怖しか感じない。不敵な笑みを浮かべ、目を離す事が出来ない。瞬きした瞬間に斬られそうな気がした。いや、そう思った瞬間に目の前には大剣を振りかぶった少女がそこに居り、容赦無く持っていた剣で斬りかかって来た。青年は、まるで簡単に折れ曲がるストローの様にくの字に体を折りながら横に吹き飛び数十メートル飛ばされた後に地面に叩きつけられた。
『ぷははっ! よわっ! 軽くなぎ払っただけなのに!』
ゲラゲラと笑いながら少女は大げさに剣を振り回して地面に突き刺す。だが、目線は吹き飛ばした男から離す事が出来なかった。なぜならあれだけ吹き飛ばしたのに関わらず、平然と立ち上がったからだ。
「あれ? 吹き飛ばされたのに全然痛くない? それにしても…全く見えなかった! マジでやばいぞあの女の子!」
エリュオンと表示された女の子は動かない。弱そうだからと力加減を誤ったとしてもおかしい、全裸で防御姿勢も取らなかった奴を、軽くとはいえ剣で薙ぎ払ったのに全くの無傷なのだ。
『お前…いったい何者だ? 無傷なんてありえない』
少女は警戒レベルを一段階上げて剣を身構える。相手もどうしていいのか分からずにそのままの状態で立ち尽くしてる為、次の攻撃に移る。薙ぎ払うのが駄目なら真っ二つに斬ってやると、思いっきり飛び上がった少女は、男の額目掛けて剣を振り下ろした。そして先程と同様に抵抗も無くその剣は男の額に当たる。
「おわっ!」
身構える間も無く剣が振れ擦るような鈍い金属音が響き渡る、感じる冷たい鉄の感触。確かに額は大剣に触れている、でも斬られていない。思いっきり振り下ろしている大剣が触れたまま微動だにしない。少女もおかしいと思ったのだろうか、クルクルと後ろに大剣を持ったまま飛び距離を置く。
『一体何なのよお前! 硬過ぎるわ! いててて…!』
少女は大剣を地面に刺し、手が痺れたのかブラブラと振っている。しかし、突然少女が頭だけ横に向け殺気を放つ。
『まだ他が居たのか、オートマトン!』
その声にイサムも恐る恐る少女から目を離し、横に目を向ける
【ノル】【自動人形オートマトン甲型】
そこで壊れているオートマトンの仲間だろう、顔がそっくりだ。
「ヤミ ハ ハイジョシマス」
『ハッ、人形なのに生意気ね!』
オートマトンは片手を耳に当てて何かをしゃべっている。
「ルルル【トナカイ】オクッテ」
オートマトンの前に魔法陣が現れ、その中から角の様な物が二本出てくる。そしてそれを引き出すとオートマトンは構えた。
ノルと名前が表示されたオートマトンの武器は、海外の映画で見たことがあるトンファーと呼ばれる武器に似ていて、それを両手別々に持ち少女に向かって走り出す。
『はっ! そんな物で!』
互いの武器が何度も激しくぶつかり合う、どうやら力が拮抗しているように見える。イサムは自分から興味が無くなり少し安心したが、いつ襲い掛かって来るか分からないので気は抜けない。その様子を見ながら、不意に視界の隅に映るメールマークに気が付く。
見る機会があるとすれば今だけだろう。そうイサムは思い、視界に映るメールマークに意識を向けると視界全面にメール内容が表示され始める。
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あなたは、この世界を救う勇者として召喚されました! おめでとう! ただ、無理やり許可無く貴方を召喚するお詫びに、この世界では存在しない魔法をあなたにプレゼントします!
なんと! 生きとし生けるものをこの世の螺旋に連れ戻すことが出来る【蘇生魔法】です! 使用制限は色々ありますが、かなり使える魔法なので人気が出る事間違いなし! 拍手! ただ貴方が死ぬと困るので、防御力と体力は目一杯増やしてますので、どうか死なないでね。では、そちらの世界で貴方と会う事を楽しみにしています。【ロロルーシェ・ノーツ】より
「意味が分からない…何だこれ…ふざけるなよ…」
まったく意味が分からない。確かにライトノベルや転生する漫画は読んでたし、異世界も実際にあったら良いなと思っていた。だけど、何故自分なのか。死亡して転生って訳でもないし、べつにそれほど不幸でもない。 隣に美人のお姉さんが住んで居るし、毎日挨拶するのが楽しみなのに、異世界召喚とかありえない。オンラインゲームも三年前の就職が決まった時点で既に引退している。てことは目の前にいる女の子は、夢ではなく本物なのか? と事実を知り混みあげてくる吐き気に、みるみる顔が青ざめていく。
「うぇ……」
(いや…ちょっと待てよ…さっき蘇生魔法って書いてあったな)
メールをもう一度確認し【蘇生魔法】が使えると言う分をみる。確かに書いてある。
「じゃぁこの女の子【リリルカ・ノーツ】は蘇生出来るって事か…?」
リリルカの方を見ると先程と同じ様に【蘇生可能】と表示されている文字を確認する。
「名前がメールの差出人と同じ【ノーツ】だ…家族なのかもな」
ふとそう思った。無理やり召喚した最低な奴かも知れないが、本当に蘇生が使えるなら、いずれ会うだろう家族と無残な死体で対面させたくは無いな、とイサムは思った。視界に映るコマンドメニューに目をやると自然に展開され【魔法・スキル】が表示される。更にその欄にある【蘇生】をタップする。すると自分の中心に五メートル程の円が表示され、【円の範囲内蘇生可能】の文字が現れる。
「なるほど、操作は意外と簡単だな」
ゲームの経験もあり、すんなりと操作方法を覚えていく。操作し易い様に表示方法が三年前に引退したオンラインゲームと酷似しているのが怪しいと感じるが、召喚した奴は取っ付き易いようにする為に結構考えてるのかもしれない。リリルカを【範囲蘇生可能】の中にあわせると、ふと迷うものが表示されている。彼女の上半身と下半身が別々に【蘇生可能】となっているのだ。
「これ…上半身だけ蘇生させれば、たぶん下半身は消えて上半身と一緒に復元されるよな? でも下半身に蘇生掛けたら、上半身も復元されるのかな? いやそれに下半身だけ動き出したら…って事は無いだろうが…もし上半身だけとか下半身だけ蘇生が本当に成功したら、後で絶対恨まれそうだ…」
上半身だけならともかく、下半身だけ蘇生なんてあり得ないと思う。でも、もしもの事を考えたら。 イサムは仕方が無いと意を決して、同時に上下半身の【蘇生】ボタンを押した。
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