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灰色の種族と逆さまのノイズ
第71話
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卵の体など、この上なく不便だ。生まれ変わった時は非常に嬉しかったが、関節の無い針金の様な細い手と足と、ただ白く小さな楕円の体では人として行っていた行動が全て出来なくなってしまった。
そしてそう思い込んだ数年間は、本当に無気力だったのを覚えている。だが、あの方の一言で世界が変わる。あの方…フィラル隊長はカルバトスに希望を与えてくれた。
「カルバトス副隊長……好きな体に成れて良かったじゃないか、その…案外…可愛いと思うぞ…」
「かわいい……ですか……可愛い……可愛い! はは! そうですな! 私もそう思います!」
フィラルに可愛いと言われ、生きてて良かったと心から感動したカルバトスは、卵の体を完全に使いこなせるまで必死に努力した。そして、彼女から受けた恩を、いつか必ず返そうと心に決めていたのだ。
「今がその時だ。我輩の全エネルギーを使いあの方への恩を返す! シャン…あとは任せたぞ!」
「え! 私一人でどうしろと!?」
「男にはやらなければならない時が必ず来るものだ! そして今がその時!」
「私…男じゃないし…!」
目の前で闇の丸い影に足元から吸い込まれたラルが、ノイズとルーシェの間の上に同じ様な闇の丸い影が現れ、ゆっくりと出て来ようとしている。それを見てカルはクラウチングスタートのポーズをとった。
そして両手両足が闇の靄で縛られたような状態で降りて来る。
「隊長…今お救いしますぞ! 最終奥義! 【流星卵(カルバスター)】!」
一瞬光ったカルが、光速の速さでラルにぶつかった。その瞬間に彼女は数百メートルを白い建物を壊しながら消えて行く。そして衝撃で半分体が潰れたカルがラルの居た場所に現れた。
「なっ何! ラルが消えたわぁ!」
『こいつのせいだな! 私にも見えなかった……』
目の前に現れたカルを掴むルーシェは、そのままコアに闇を注入する。
「がぁぁぁぁぁぁ! 貴様! 何をする!」
『貴方が吹き飛ばした女の代わりよ、貴方が闇に落ちなさい』
体の潰れたカルは、ボロボロと崩れ出しコアのみとなる。そして、そこから闇が噴き出して人へと形成されていく。それを見てノイズが首を振る。
「いやいやいやぁぁ―――――! まさか! お前はカルバトスぅ!」
●
カルの奥義を受けたラルは、何軒もの家屋を貫きながらやっと止まる。そして可笑しな感触を感じ目を開けると、そこにはイサムの顔があった。
ラルの元へと急いでいたイサム達だったが、急に目の前の建物が吹き飛びラルが現れたのだ。それをイサムが受け止めたのは良いが、その勢いは収まらずそのまま一緒に後方へ飛んで行った。
目を閉じていたイサムも目を開けると、目の前にラルの顔があり完全に唇が触れている。それに先に気が付いたラルだったが、あまりにも異常な事態にフリーズしている様だ。瓦礫に埋もれて身動きが取れないイサムは、トントンと辛うじて動く手でラルを起こす。
「――――――――! ん――――――!!!」
ガラガラっと音を立てながら勢い良く立ち上がったラルは、そのままイサムを掴み上げ目にも止まらない速さでビンタする。
パパパパパパパ!
「ちょっまっ――――――ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ」
パンと音が出る前に反対側の頬を叩かれるイサムの顔とラルの手は、早すぎて消えている様に見える。
「こら! ラル何してるの! それイサム様ですよ!」
「ああっ! もっ申し訳ありません!」
急激な視界の変化により、すでにグロッキー状態のイサム。しかし何故か少しだけ嬉しそうな顔をしている。
「だ…大丈夫ですかイサム様!」
「いや………大丈夫だ……いきなり何が起こったかと思ったよ………ラルも大丈夫か?」
「え? あっはい! いえ…その……だっ大丈夫であります!」
ビシッとイサムに敬礼したその恰好は、まるでカルがラルにするのとそっくりだった。
「遠くに吹き飛ばされたみたいね、他の二人は大丈夫なの?」
「はっ! そうでした! まだカルとシャンが! 直ぐに向かわないとノイズとルーシェと言う女達と交戦中です!」
「やはりルーシェもいるのか! 厄介だな!」
「ノイズ……あの子の好きにはさせないわ!」
「え? ノイズ? いえ…貴方マノイね! 本当に二人いたの……!」
交戦していたノイズにそっくりな女性、それがマノイだと直ぐに気が付いた。
「黙っていて申し訳ありません、ですが言い訳はノイズを止めてから致します!」
「そうだな! 急ぐぞ!」
イサム達は走り出し、先程ラルが飛ばされた場所へ急ぐ。だがそこに到着した面々が驚きの声を上げた。
「まさか……そんな……」
「くそっ! 身代わりになるなんて!」
「おい二人とも!? あの全裸のおっさん誰だよ!?」
「イサム様……あれはカルバトスで御座います……何故裸なのでしょう……」
後ろからイサムに伝えるマノイ。闇に落ちた事により、卵の体を捨て元の体に戻ったのだ。その姿を始めてみたイサムは衝撃を受ける。
筋骨隆々の大きく横太な体に鼻と顎に濃い髭が生えており、胸毛も二度見するほどに茂っている。しかも全裸にも関わらず、様々なポージングを行っている。
『ふん! は! ふんん! わはははははは!』
『誰? 私が落とした奴と全く違うんだけど…』
「カルバトス……不快だわぁ……本当に不快ぃ!」
小さな卵のマトンを闇に落としたつもりだったルーシェの顔は少々戸惑いの顔を見せている。そしてノイズは、あからさまに嫌な顔をカルバトスに向けているが、当の本人は笑いながら未だに大きく隆起した筋肉を動かしている。
そこへイサム達が到着したのをルーシェ達が気付いた。
『ふふふ、タダルカスであった時以来ね! その女も無事な様で嘆かわしいわ!』
「ルーシェ! 今回の目的は何だ! カルを闇に落としやがって!」
『これは不可抗力よ! 本当はその隣の彼女が欲しかったのに、こいつが邪魔するから!』
目の前に居るカルバトスをルーシェは蹴るが、全くびくともしない。
『はっはっはっは! イサム殿! 申し訳ありませんなぁ! ですがお陰様で卵から生まれる事が出来ましたぞ!』
「カル! お前はラルを守るのが使命だったはずだ! お前自身が闇に落ちてどうするんだ!」
『そうですぞ! 我輩はラル隊長……いや…フィラルを守るのが使命! いまお救いしますぞ!』
「何を言っているの……救うって……すでに闇に浸食されてるのね!」
「ラル、落ち着きなさい。メルも救えたわ! 彼も救えるはずよ!」
全裸で屈伸しているカルを見ながら、戦闘は避けられないと仲間達は武器を構える。だが、それを止める様にルーシェがカルバトスとノイズに話す。
『まって……ママの気配がするわ……こちらに近づいて来てる? 今はまだ会いたくないわね』
「どうされたのですかぁ? 私も闇に落として下さいぃ」
『で? どうされるんです? 我輩の部下達も準備は出来ておりますぞ!』
腕を組み、何やら考えているルーシェの指示を待つノイズとカルバトス。そして二人に指示をする。
『私はこの国を離れるわ、カルバトスもついて来なさい。ノイズはあの子を手に入れるまでは帰って来ては駄目よ。連れて来たら闇に落としてあげるわ』
「そっそんなぁ…お待ちくださいぃぃ! 一人で闘うには無理がありますぅ」
『ならカルバトスの部下を使いなさい。カルバトス、良いですわね?』
『勿論ですぞ! この国の住人すべての抹殺を命じましょう!』
カルバトスはムキッと胸筋を動かしてルーシェに返事をする。
『……上出来ね。じゃぁノイズ楽しみにしているわ。私を失望させないでね』
「はいぃ………頑張りますぅ……」
ルーシェはイサムの方へ顔を向け、残念そうに手を振る。
『ごめんなさいね。貴方と遊びたかったのですけどママがこちらに向かっている様なので、ここらで帰りますわ』
「まて! 逃げるのか!」
『イサム殿! 残念ですが我輩もお供するようですぞ! またお会い致しましょう! それとフィラル! 我輩の愛を必ず貴方へお伝え致しますぞ!』
そう言い残すと、ルーシェとカルバトスは闇の中へと消える。イサムはマップで確認するが敵対しているのはノイズのみで他の二人の反応が消えてしまった。しかし直後、国中に展開しているカルの部下の卵達が一斉に赤丸へと変わりだす。
「おいおい! カルの部下達が全員敵になってるぞ!」
「何ですって! 本体が闇に落ちてそれが共有したんだわ!」
「ノイズは残されている様ね。それにまだ闇に落とされていないみたい」
「ああ、俺の方にまだ表示されているからな」
イサムは自分のコアを開くと、未だにノイズの表示があるのを確認できる。
「イサム様、まずは手分けしてカルの兵隊達を処理しましょう。リン! シャン! 貴方達は兵隊達を処理して頂戴!」
「はい! 了解いたしました!」
「はい! 任せて下さい!」
「よし、じゃぁ俺もユキを手伝わせよう! 戦力にはなるはずだ!」
「そうですね! お願い致します!」
メニューを開き精霊ユキをタップして呼び出す。
『主様お呼びでしょうか!』
ふわっと雪が舞い、精霊ユキが現れる。マノイはビクッと驚きノルの後ろに隠れる。
「のっのっノルファン殿下! せっ精霊です! 殺されます! 御下がりください!」
「マノイ、この精霊はイサム様が使役しています。安心して良いですよ」
「す……凄い……」
「ユキ! カルが闇に落ちた。既にこの場所には居ないが、その部下達も闇に落ちた様だ。全て倒せるか?」
ユキはヒラヒラとイサムの前で回転しながら微笑む。そして掌に小さな雪ダルマを作るとそれをイサムに手渡す。雪ダルマには手足が生えており、ピコピコと動いている。
『お任せください! 小さいなら小さい者にお任せしましょう! さぁお行きなさい!』
ユキが回転する度にカルの部下と同じ程の大きさの雪ダルマが溢れだし、国中へと散らばって行く。それを見ながらイサム達はノイズへと向きを変える。
ノイズは未だにルーシェに連れて行ってもらえない事を悔やんでいる様だが、目だけは此方から離していない。イサム達も武器を構えノイズに向けている、そしてノイズもメテラスを殺した雷の球体を周囲に展開し、いつでも攻撃できる状態を作り出し始めたのだった。
そしてそう思い込んだ数年間は、本当に無気力だったのを覚えている。だが、あの方の一言で世界が変わる。あの方…フィラル隊長はカルバトスに希望を与えてくれた。
「カルバトス副隊長……好きな体に成れて良かったじゃないか、その…案外…可愛いと思うぞ…」
「かわいい……ですか……可愛い……可愛い! はは! そうですな! 私もそう思います!」
フィラルに可愛いと言われ、生きてて良かったと心から感動したカルバトスは、卵の体を完全に使いこなせるまで必死に努力した。そして、彼女から受けた恩を、いつか必ず返そうと心に決めていたのだ。
「今がその時だ。我輩の全エネルギーを使いあの方への恩を返す! シャン…あとは任せたぞ!」
「え! 私一人でどうしろと!?」
「男にはやらなければならない時が必ず来るものだ! そして今がその時!」
「私…男じゃないし…!」
目の前で闇の丸い影に足元から吸い込まれたラルが、ノイズとルーシェの間の上に同じ様な闇の丸い影が現れ、ゆっくりと出て来ようとしている。それを見てカルはクラウチングスタートのポーズをとった。
そして両手両足が闇の靄で縛られたような状態で降りて来る。
「隊長…今お救いしますぞ! 最終奥義! 【流星卵(カルバスター)】!」
一瞬光ったカルが、光速の速さでラルにぶつかった。その瞬間に彼女は数百メートルを白い建物を壊しながら消えて行く。そして衝撃で半分体が潰れたカルがラルの居た場所に現れた。
「なっ何! ラルが消えたわぁ!」
『こいつのせいだな! 私にも見えなかった……』
目の前に現れたカルを掴むルーシェは、そのままコアに闇を注入する。
「がぁぁぁぁぁぁ! 貴様! 何をする!」
『貴方が吹き飛ばした女の代わりよ、貴方が闇に落ちなさい』
体の潰れたカルは、ボロボロと崩れ出しコアのみとなる。そして、そこから闇が噴き出して人へと形成されていく。それを見てノイズが首を振る。
「いやいやいやぁぁ―――――! まさか! お前はカルバトスぅ!」
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カルの奥義を受けたラルは、何軒もの家屋を貫きながらやっと止まる。そして可笑しな感触を感じ目を開けると、そこにはイサムの顔があった。
ラルの元へと急いでいたイサム達だったが、急に目の前の建物が吹き飛びラルが現れたのだ。それをイサムが受け止めたのは良いが、その勢いは収まらずそのまま一緒に後方へ飛んで行った。
目を閉じていたイサムも目を開けると、目の前にラルの顔があり完全に唇が触れている。それに先に気が付いたラルだったが、あまりにも異常な事態にフリーズしている様だ。瓦礫に埋もれて身動きが取れないイサムは、トントンと辛うじて動く手でラルを起こす。
「――――――――! ん――――――!!!」
ガラガラっと音を立てながら勢い良く立ち上がったラルは、そのままイサムを掴み上げ目にも止まらない速さでビンタする。
パパパパパパパ!
「ちょっまっ――――――ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ」
パンと音が出る前に反対側の頬を叩かれるイサムの顔とラルの手は、早すぎて消えている様に見える。
「こら! ラル何してるの! それイサム様ですよ!」
「ああっ! もっ申し訳ありません!」
急激な視界の変化により、すでにグロッキー状態のイサム。しかし何故か少しだけ嬉しそうな顔をしている。
「だ…大丈夫ですかイサム様!」
「いや………大丈夫だ……いきなり何が起こったかと思ったよ………ラルも大丈夫か?」
「え? あっはい! いえ…その……だっ大丈夫であります!」
ビシッとイサムに敬礼したその恰好は、まるでカルがラルにするのとそっくりだった。
「遠くに吹き飛ばされたみたいね、他の二人は大丈夫なの?」
「はっ! そうでした! まだカルとシャンが! 直ぐに向かわないとノイズとルーシェと言う女達と交戦中です!」
「やはりルーシェもいるのか! 厄介だな!」
「ノイズ……あの子の好きにはさせないわ!」
「え? ノイズ? いえ…貴方マノイね! 本当に二人いたの……!」
交戦していたノイズにそっくりな女性、それがマノイだと直ぐに気が付いた。
「黙っていて申し訳ありません、ですが言い訳はノイズを止めてから致します!」
「そうだな! 急ぐぞ!」
イサム達は走り出し、先程ラルが飛ばされた場所へ急ぐ。だがそこに到着した面々が驚きの声を上げた。
「まさか……そんな……」
「くそっ! 身代わりになるなんて!」
「おい二人とも!? あの全裸のおっさん誰だよ!?」
「イサム様……あれはカルバトスで御座います……何故裸なのでしょう……」
後ろからイサムに伝えるマノイ。闇に落ちた事により、卵の体を捨て元の体に戻ったのだ。その姿を始めてみたイサムは衝撃を受ける。
筋骨隆々の大きく横太な体に鼻と顎に濃い髭が生えており、胸毛も二度見するほどに茂っている。しかも全裸にも関わらず、様々なポージングを行っている。
『ふん! は! ふんん! わはははははは!』
『誰? 私が落とした奴と全く違うんだけど…』
「カルバトス……不快だわぁ……本当に不快ぃ!」
小さな卵のマトンを闇に落としたつもりだったルーシェの顔は少々戸惑いの顔を見せている。そしてノイズは、あからさまに嫌な顔をカルバトスに向けているが、当の本人は笑いながら未だに大きく隆起した筋肉を動かしている。
そこへイサム達が到着したのをルーシェ達が気付いた。
『ふふふ、タダルカスであった時以来ね! その女も無事な様で嘆かわしいわ!』
「ルーシェ! 今回の目的は何だ! カルを闇に落としやがって!」
『これは不可抗力よ! 本当はその隣の彼女が欲しかったのに、こいつが邪魔するから!』
目の前に居るカルバトスをルーシェは蹴るが、全くびくともしない。
『はっはっはっは! イサム殿! 申し訳ありませんなぁ! ですがお陰様で卵から生まれる事が出来ましたぞ!』
「カル! お前はラルを守るのが使命だったはずだ! お前自身が闇に落ちてどうするんだ!」
『そうですぞ! 我輩はラル隊長……いや…フィラルを守るのが使命! いまお救いしますぞ!』
「何を言っているの……救うって……すでに闇に浸食されてるのね!」
「ラル、落ち着きなさい。メルも救えたわ! 彼も救えるはずよ!」
全裸で屈伸しているカルを見ながら、戦闘は避けられないと仲間達は武器を構える。だが、それを止める様にルーシェがカルバトスとノイズに話す。
『まって……ママの気配がするわ……こちらに近づいて来てる? 今はまだ会いたくないわね』
「どうされたのですかぁ? 私も闇に落として下さいぃ」
『で? どうされるんです? 我輩の部下達も準備は出来ておりますぞ!』
腕を組み、何やら考えているルーシェの指示を待つノイズとカルバトス。そして二人に指示をする。
『私はこの国を離れるわ、カルバトスもついて来なさい。ノイズはあの子を手に入れるまでは帰って来ては駄目よ。連れて来たら闇に落としてあげるわ』
「そっそんなぁ…お待ちくださいぃぃ! 一人で闘うには無理がありますぅ」
『ならカルバトスの部下を使いなさい。カルバトス、良いですわね?』
『勿論ですぞ! この国の住人すべての抹殺を命じましょう!』
カルバトスはムキッと胸筋を動かしてルーシェに返事をする。
『……上出来ね。じゃぁノイズ楽しみにしているわ。私を失望させないでね』
「はいぃ………頑張りますぅ……」
ルーシェはイサムの方へ顔を向け、残念そうに手を振る。
『ごめんなさいね。貴方と遊びたかったのですけどママがこちらに向かっている様なので、ここらで帰りますわ』
「まて! 逃げるのか!」
『イサム殿! 残念ですが我輩もお供するようですぞ! またお会い致しましょう! それとフィラル! 我輩の愛を必ず貴方へお伝え致しますぞ!』
そう言い残すと、ルーシェとカルバトスは闇の中へと消える。イサムはマップで確認するが敵対しているのはノイズのみで他の二人の反応が消えてしまった。しかし直後、国中に展開しているカルの部下の卵達が一斉に赤丸へと変わりだす。
「おいおい! カルの部下達が全員敵になってるぞ!」
「何ですって! 本体が闇に落ちてそれが共有したんだわ!」
「ノイズは残されている様ね。それにまだ闇に落とされていないみたい」
「ああ、俺の方にまだ表示されているからな」
イサムは自分のコアを開くと、未だにノイズの表示があるのを確認できる。
「イサム様、まずは手分けしてカルの兵隊達を処理しましょう。リン! シャン! 貴方達は兵隊達を処理して頂戴!」
「はい! 了解いたしました!」
「はい! 任せて下さい!」
「よし、じゃぁ俺もユキを手伝わせよう! 戦力にはなるはずだ!」
「そうですね! お願い致します!」
メニューを開き精霊ユキをタップして呼び出す。
『主様お呼びでしょうか!』
ふわっと雪が舞い、精霊ユキが現れる。マノイはビクッと驚きノルの後ろに隠れる。
「のっのっノルファン殿下! せっ精霊です! 殺されます! 御下がりください!」
「マノイ、この精霊はイサム様が使役しています。安心して良いですよ」
「す……凄い……」
「ユキ! カルが闇に落ちた。既にこの場所には居ないが、その部下達も闇に落ちた様だ。全て倒せるか?」
ユキはヒラヒラとイサムの前で回転しながら微笑む。そして掌に小さな雪ダルマを作るとそれをイサムに手渡す。雪ダルマには手足が生えており、ピコピコと動いている。
『お任せください! 小さいなら小さい者にお任せしましょう! さぁお行きなさい!』
ユキが回転する度にカルの部下と同じ程の大きさの雪ダルマが溢れだし、国中へと散らばって行く。それを見ながらイサム達はノイズへと向きを変える。
ノイズは未だにルーシェに連れて行ってもらえない事を悔やんでいる様だが、目だけは此方から離していない。イサム達も武器を構えノイズに向けている、そしてノイズもメテラスを殺した雷の球体を周囲に展開し、いつでも攻撃できる状態を作り出し始めたのだった。
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