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昔話2 弘の話
ποτνια θηρων 13
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◆
「はい? いや、確かに理屈上そうですけど」
母屋の座敷で、うまくいった旨を知らせるや否や、樹さんに拝み倒され、そして告げられた内容に、僕は大いに困惑していた。
曰く、僕の理論が正しいとするなら、弘は唐国の家の中にいるより、僕やロビンといた方が安定するのではないか、と。
つまるところは、弘の安全性を考慮して、弟子にしてくれないかという打診である。
「弘ちゃんの意見も聞かないと……あの子、根は気が強い方ですよね?」
「む、それはそうだが……たぶん本人も否とは言わん、と思う」
あ、これは下手にツウカアに見せかけて、すれ違いが起こるパターンでは。所謂ディスコミュニケーション。
「ちゃんと、樹さんから話してあげてください。まあ、年頃の娘の扱い方に手をこまねいている、というのもわからなくはないですけど」
「……まあ、なんだ。それだけというわけでもない」
少し言いにくそうにしながら、樹さんは続ける。
「聞いたかもしれんが、少なくとも、あの子は中学を変えた方がいい。だが、それをあの子は簡単には良しとせん」
「確かに、僕の弟子とするなら転校は必須ですから、納得に足る理由ではあるでしょうねえ」
とはいえ、現在僕はロビンと二人の男所帯である。
そこに女の子が入るとなると、ちょっと、こう、僕は別に大丈夫だし、ロビンも紳士的に振る舞う子だし、こちらとしてはたぶん大丈夫だと言えるのだけど、倫理的には非常にヤバい寄りである。
焦って語彙が蒸発するぐらいには。
「ただ、うち、ロビンと二人ですけど。まあ、片付ければ丸々一部屋確保はできるんで、最低限のプライバシーはなんとか……」
「そこは……いろいろと考慮して血涙を呑むことにした」
涙を呑むのレベル超えて血涙になってる。
同時に、おそらく、僕を呼んだ時点でうまくいったらこうしようと考えていたのだと思い至る。
「はあ……まあ、わかりますが、僕からの条件はちゃんと弘ちゃんと話すこと、弘ちゃんの意思を確認することです」
「ぐ……律がいれば、まだマシだったのだが」
そこで長男の名前が出てくるか。
どうやら兄妹仲は良いらしい。
「その律くんは?」
「ちょっとまあ、いざこざがあってな。本音としては汲んでやりたかったが、建前上として離れた寺に謹慎中だ」
「……弘ちゃんの首の?」
そう言うと、樹さんの顔が普通の柿と間違えて、渋柿を食べたみたいな顔になる。
「……いつでも頼れと言った派閥の連中に、頼んだ私が馬鹿だった。少し考えれば、思い至ったはずなのだが」
「責めはしませんよ。出来る限り取れる手段を取ったのでしょう。保守的なアナタが最終的に僕に声をかけるぐらい。近い方の手段から選ぶのは普通ですよ……しかし建前とはいえ、謹慎までいきましたか」
そう言うと樹さんは少し目をそらした。
「まあ、ご老体の腕の骨をぽっきりやったからな」
「……あー、それで警察沙汰にせずに、痛み分けという形に」
互いに丸く収めるのに必死だったんだろうなあ、という気はする。
そりゃ、根は気が強くて、たぶん負けん気も強いだろう弘が少しやさぐれるのもわからなくはないし、弘のそういう性格に影響を与えたのだろうことを考えると、たぶん律くんもなかなかに強かな性格だろう。
「まあ、本人が良いと言うなら、というのも、僕のところは針のむしろみたいなもんですから。樹さんだって、本音はそんなとこに飛び込ませたくはないでしょ」
「……だが、葛城殿、貴方は本物だろう。いや、紀美殿、と言った方が良いか?」
樹さんが、姓ではなく名で呼び直した意味を汲む。
家、血筋ではなく、僕個人が本物だと、樹さんは言っている。
「はい? いや、確かに理屈上そうですけど」
母屋の座敷で、うまくいった旨を知らせるや否や、樹さんに拝み倒され、そして告げられた内容に、僕は大いに困惑していた。
曰く、僕の理論が正しいとするなら、弘は唐国の家の中にいるより、僕やロビンといた方が安定するのではないか、と。
つまるところは、弘の安全性を考慮して、弟子にしてくれないかという打診である。
「弘ちゃんの意見も聞かないと……あの子、根は気が強い方ですよね?」
「む、それはそうだが……たぶん本人も否とは言わん、と思う」
あ、これは下手にツウカアに見せかけて、すれ違いが起こるパターンでは。所謂ディスコミュニケーション。
「ちゃんと、樹さんから話してあげてください。まあ、年頃の娘の扱い方に手をこまねいている、というのもわからなくはないですけど」
「……まあ、なんだ。それだけというわけでもない」
少し言いにくそうにしながら、樹さんは続ける。
「聞いたかもしれんが、少なくとも、あの子は中学を変えた方がいい。だが、それをあの子は簡単には良しとせん」
「確かに、僕の弟子とするなら転校は必須ですから、納得に足る理由ではあるでしょうねえ」
とはいえ、現在僕はロビンと二人の男所帯である。
そこに女の子が入るとなると、ちょっと、こう、僕は別に大丈夫だし、ロビンも紳士的に振る舞う子だし、こちらとしてはたぶん大丈夫だと言えるのだけど、倫理的には非常にヤバい寄りである。
焦って語彙が蒸発するぐらいには。
「ただ、うち、ロビンと二人ですけど。まあ、片付ければ丸々一部屋確保はできるんで、最低限のプライバシーはなんとか……」
「そこは……いろいろと考慮して血涙を呑むことにした」
涙を呑むのレベル超えて血涙になってる。
同時に、おそらく、僕を呼んだ時点でうまくいったらこうしようと考えていたのだと思い至る。
「はあ……まあ、わかりますが、僕からの条件はちゃんと弘ちゃんと話すこと、弘ちゃんの意思を確認することです」
「ぐ……律がいれば、まだマシだったのだが」
そこで長男の名前が出てくるか。
どうやら兄妹仲は良いらしい。
「その律くんは?」
「ちょっとまあ、いざこざがあってな。本音としては汲んでやりたかったが、建前上として離れた寺に謹慎中だ」
「……弘ちゃんの首の?」
そう言うと、樹さんの顔が普通の柿と間違えて、渋柿を食べたみたいな顔になる。
「……いつでも頼れと言った派閥の連中に、頼んだ私が馬鹿だった。少し考えれば、思い至ったはずなのだが」
「責めはしませんよ。出来る限り取れる手段を取ったのでしょう。保守的なアナタが最終的に僕に声をかけるぐらい。近い方の手段から選ぶのは普通ですよ……しかし建前とはいえ、謹慎までいきましたか」
そう言うと樹さんは少し目をそらした。
「まあ、ご老体の腕の骨をぽっきりやったからな」
「……あー、それで警察沙汰にせずに、痛み分けという形に」
互いに丸く収めるのに必死だったんだろうなあ、という気はする。
そりゃ、根は気が強くて、たぶん負けん気も強いだろう弘が少しやさぐれるのもわからなくはないし、弘のそういう性格に影響を与えたのだろうことを考えると、たぶん律くんもなかなかに強かな性格だろう。
「まあ、本人が良いと言うなら、というのも、僕のところは針のむしろみたいなもんですから。樹さんだって、本音はそんなとこに飛び込ませたくはないでしょ」
「……だが、葛城殿、貴方は本物だろう。いや、紀美殿、と言った方が良いか?」
樹さんが、姓ではなく名で呼び直した意味を汲む。
家、血筋ではなく、僕個人が本物だと、樹さんは言っている。
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