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7-1 わたしはあなたの side A
7 シジル没収
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◆
そんな昨日の、今日の放課後、である。
「ああ、これ、うちの方だわ」
「そしたら、珠紀、道、わかる?」
「うん、こっち」
ロビンからもらった住所メモを、珠紀と頭を突き合わせながら、道を辿る。
やがて辿り着いたのは、一棟二軒のテラスハウス形式の建物が並ぶ一角だった。
表札には「葛城」と出ている。
「住所だと、ここよ」
「う、うん」
色々な意味で緊張しながら、門の中、玄関口の脇にあるインターホンに向けて和音は歩いていく。
珠紀も、その後ろについて来ていた。
「……」
間違ってたらどうしよう、と頭の片隅で思いながら、ごくりと唾を飲み込んで、和音がインターホンを押す決心をした瞬間――
ぶつっ
と何かが切れたような音と、遅れて、かつん、と何かが落ちる音が、和音の背後から聞こえた。
インターホンを押そうと上げた手をそのままに振り向けば、珠紀が驚いた顔で地面で跳ねているメダルのようなものを見下ろしている。
かつん、かつんと二度ほど跳ねたメダルは、物理法則としては少しおかしい軌道を見せながら、転がっていく。
「待って!」
「珠紀?」
慌てて珠紀が、ともすれば誘導されるように、転がるメダルを追いかけて、そして家の角を曲がった先で、たんっと強く地面を踏みしめる音がした。
珠紀を追って、和音が覗き込んだ先には、珠紀の後ろ姿と、その奥に、昨日の織歌よりも背の高い、ウルフショートのボーイッシュな出で立ちの女性が立っていた。その口には、首にかかった紐に繋がった、銀色に光る小さな棒のようなものをくわえている。
「返してよっ! 返しなさいよ!」
珠紀が叫ぶ様子からして、先程の地面を踏みしめた音は、その左足を少しも動かそうとしない彼女が立てたものらしい。恐らくはその足の下に、転がったメダルがあるのだろう。
要望を黙殺された珠紀が、実力行使と言わんばかりに彼女に飛びかかろうとすると、女性は口を開いて銀の棒を胸元に落としてから、一度短いため息をついて、
「こんっの、クソガキがっ!」
ごっ、と痛そうな音を立てて、飛びかかった珠紀の頭が、女性の突き出した拳骨に激突する。
「いっ、あっ……なっ、何すんのよ!」
「それはこっちのセリフというもんです。オカルト趣味を否定する気はありませんが、その下手な実践には専門家として口出しする権利がこちらにはあります。まして、それが人を害するようなものならば」
軽蔑するような眼差しを珠紀に向けて、ボーイッシュな女性はそう言い切った。
そして、頭を抱える珠紀の両手首を、しっかと掴む。
「こうしてシジルを刻んだものがない以上、少なくともあなたは無力なわけです。より本格的に行ったものなのか、それともたまたま出来てしまったものなのかはこの後聴取しますが」
そうして珠紀の両腕を拘束してから、女性は和音の方を向いた。
「あなたが葉山和音さんですね。わたしは唐国弘。ロビンと織歌から話は聞いてます」
「え、あ、はい……えっと、あの」
「ああ、ちょーっとまだこの子を放すのは無理ですねー」
「放しなさいよ、暴力女!」
珠紀が、きいきいと騒ぐが、弘と名乗った女性は、その手首を掴んだまま、びくともしないし、動こうとしない。
そして、その脛を蹴ろうとしたのか、珠紀が後ろに振り上げた足は、和音があっと言う間もなく――びくり、と驚いたように、そのまま止まった。
「そうそう、無駄な抵抗はやめてくださいねー。お前は既に包囲されている~」
どこか軽い調子で、にやにやと弘は笑うが、珠紀の顔色は悪い。
すると、玄関側と反対側の方から、ぱすぱすと気の抜ける足音が聞こえてきた。
そんな昨日の、今日の放課後、である。
「ああ、これ、うちの方だわ」
「そしたら、珠紀、道、わかる?」
「うん、こっち」
ロビンからもらった住所メモを、珠紀と頭を突き合わせながら、道を辿る。
やがて辿り着いたのは、一棟二軒のテラスハウス形式の建物が並ぶ一角だった。
表札には「葛城」と出ている。
「住所だと、ここよ」
「う、うん」
色々な意味で緊張しながら、門の中、玄関口の脇にあるインターホンに向けて和音は歩いていく。
珠紀も、その後ろについて来ていた。
「……」
間違ってたらどうしよう、と頭の片隅で思いながら、ごくりと唾を飲み込んで、和音がインターホンを押す決心をした瞬間――
ぶつっ
と何かが切れたような音と、遅れて、かつん、と何かが落ちる音が、和音の背後から聞こえた。
インターホンを押そうと上げた手をそのままに振り向けば、珠紀が驚いた顔で地面で跳ねているメダルのようなものを見下ろしている。
かつん、かつんと二度ほど跳ねたメダルは、物理法則としては少しおかしい軌道を見せながら、転がっていく。
「待って!」
「珠紀?」
慌てて珠紀が、ともすれば誘導されるように、転がるメダルを追いかけて、そして家の角を曲がった先で、たんっと強く地面を踏みしめる音がした。
珠紀を追って、和音が覗き込んだ先には、珠紀の後ろ姿と、その奥に、昨日の織歌よりも背の高い、ウルフショートのボーイッシュな出で立ちの女性が立っていた。その口には、首にかかった紐に繋がった、銀色に光る小さな棒のようなものをくわえている。
「返してよっ! 返しなさいよ!」
珠紀が叫ぶ様子からして、先程の地面を踏みしめた音は、その左足を少しも動かそうとしない彼女が立てたものらしい。恐らくはその足の下に、転がったメダルがあるのだろう。
要望を黙殺された珠紀が、実力行使と言わんばかりに彼女に飛びかかろうとすると、女性は口を開いて銀の棒を胸元に落としてから、一度短いため息をついて、
「こんっの、クソガキがっ!」
ごっ、と痛そうな音を立てて、飛びかかった珠紀の頭が、女性の突き出した拳骨に激突する。
「いっ、あっ……なっ、何すんのよ!」
「それはこっちのセリフというもんです。オカルト趣味を否定する気はありませんが、その下手な実践には専門家として口出しする権利がこちらにはあります。まして、それが人を害するようなものならば」
軽蔑するような眼差しを珠紀に向けて、ボーイッシュな女性はそう言い切った。
そして、頭を抱える珠紀の両手首を、しっかと掴む。
「こうしてシジルを刻んだものがない以上、少なくともあなたは無力なわけです。より本格的に行ったものなのか、それともたまたま出来てしまったものなのかはこの後聴取しますが」
そうして珠紀の両腕を拘束してから、女性は和音の方を向いた。
「あなたが葉山和音さんですね。わたしは唐国弘。ロビンと織歌から話は聞いてます」
「え、あ、はい……えっと、あの」
「ああ、ちょーっとまだこの子を放すのは無理ですねー」
「放しなさいよ、暴力女!」
珠紀が、きいきいと騒ぐが、弘と名乗った女性は、その手首を掴んだまま、びくともしないし、動こうとしない。
そして、その脛を蹴ろうとしたのか、珠紀が後ろに振り上げた足は、和音があっと言う間もなく――びくり、と驚いたように、そのまま止まった。
「そうそう、無駄な抵抗はやめてくださいねー。お前は既に包囲されている~」
どこか軽い調子で、にやにやと弘は笑うが、珠紀の顔色は悪い。
すると、玄関側と反対側の方から、ぱすぱすと気の抜ける足音が聞こえてきた。
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