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7-1 わたしはあなたの side A
9 The Twenty-fifth Spirit
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「それとも、キミは最悪殺人を犯してまで身を守ろうとしているのかな?」
「なんで」
「二十五番目の悪魔、グラシャ・ラボラス」
珠紀の言葉は、柔らかいが淡々とした声に遮られる。
目の前のメダルをかざす人物は、特に表情を変えることなく、穏やかな物腰のまま続ける。
「全ての芸術と科学を即座に教え、また過去と未来を教える流血と殺戮の権威者。術者が望めば、友と敵に愛を催させ、人を透明にする術を使う、三十六の精霊の軍団を率いる伯爵にして総統。よって、シジルは鉄か水銀を含む物に刻むのが相応しい」
すらすらと淀みなく、並べ立てられた言葉は、珠紀の顔から確実に血の気を奪って行く。
また、ひらりとメダルが指の間に消えた。
「グリモワール、『The Lesser key of Solomon』、そこでのグラシャ・ラボラスの説明と、階級に合わせたシジル媒体の種類だけど、身に覚えはあるだろ、キミ。そうじゃなきゃ、シジルに固執する必要もないしね」
「……」
珠紀は肯定も否定もせずに、血の気の失せた顔で、ぎゅっと唇を引き結んでいる。
それを見たその人は、きょときょとと完全に萎縮した珠紀を見下ろして、それから、そのままの表情で和音に顔を向けてきた。
「和音ちゃん、この子、いつもこんな借りてきたどころか、保護したばかりの猫みたいなの?」
「え、はい、いや、えと」
突然、返答に困る話題を振られて、和音はあわあわと、どう言えばいいものか困る。
「一番はセンセイが名前すら教えてないからじゃない?」
そこにロビンが冷たい声で、助け舟を出す、というよりかは釘を刺した。
「わたしも、どこでツッコめばいいかな~って」
「……もー、ロビンも弘も早く言ってよ」
弘の追い打ちに、むうと一度唇を尖らせた先生と呼ばれる人は、取り繕うように咳払いをしてから、口を開いた。
「僕は葛城紀美。一応、ロビン、弘、織歌の師匠になるかな」
「センセイ、そこは自信持って」
「というか、責任持って」
やいのやいのとロビンと弘が囃し立てるので、なんとも格好がつかない。
僕、というからには、そしてこの家の表札の苗字だし、三人の先生というからにはそれなりの歳だろう、と考えると、まあきっとたぶん男性なんだろう、と和音は思う。
「で、キミは?」
「……」
珠紀は頑なに口を割ろうとせずに、目の前の紀美を睨みつけている。
と、そこでがちゃり、と玄関が開く音がしたかと思うと、とたたた、と小走りの足音が続いて、リビングの扉が勢いよく開いて、織歌が飛び込んで来た。
「すみません! 遅くなりました」
この家に着くまでも走っていたのか、肩で息をしている。
「やあ、織歌。大丈夫、特になんにも進んでない」
「それは別の意味で大丈夫じゃないと思うんですけどねえ」
織歌を迎えた紀美に、じっとりとした視線を向けつつ、弘が呟く。
そのタイミングで和音は慌てて鞄から、昨日借りたハンカチを取り出して、織歌に差し出す。
「あの、ありがとうございました」
「あ、はい。いえ、まだ何も終わってない、のですけど……」
息を切らせたまま、困惑した顔をしつつも、織歌がハンカチを受け取る。
珠紀の恨めしそうな視線が、和音に向けられた。
「……たま」
「裏切ったの?」
珠紀、と和音が呼びかけようとしたのを遮って、珠紀の詰るような声が上がった。
珠紀の視線を遮るように、和音と珠紀の間に、ロビンが手を入れた。
「それは正しくない。オリカがワトが呪われていると気が付いて、それを解くために、キミをこうしておびき出したんだから」
「逆に、それを裏切ったと考えるなら、キミが和音ちゃんを呪ったと言ってるようなものになるよ。まあ、おびき出したなんて言っちゃう以上、やっぱりロビンはそこをわかってるんだけど」
やんわりと、それでも確かに珠紀を追い詰めるように、ロビンの言葉に紀美が言葉を重ねる。
まるで、将棋かチェスで相手を追い詰めるような感じだ。
「なんで」
「二十五番目の悪魔、グラシャ・ラボラス」
珠紀の言葉は、柔らかいが淡々とした声に遮られる。
目の前のメダルをかざす人物は、特に表情を変えることなく、穏やかな物腰のまま続ける。
「全ての芸術と科学を即座に教え、また過去と未来を教える流血と殺戮の権威者。術者が望めば、友と敵に愛を催させ、人を透明にする術を使う、三十六の精霊の軍団を率いる伯爵にして総統。よって、シジルは鉄か水銀を含む物に刻むのが相応しい」
すらすらと淀みなく、並べ立てられた言葉は、珠紀の顔から確実に血の気を奪って行く。
また、ひらりとメダルが指の間に消えた。
「グリモワール、『The Lesser key of Solomon』、そこでのグラシャ・ラボラスの説明と、階級に合わせたシジル媒体の種類だけど、身に覚えはあるだろ、キミ。そうじゃなきゃ、シジルに固執する必要もないしね」
「……」
珠紀は肯定も否定もせずに、血の気の失せた顔で、ぎゅっと唇を引き結んでいる。
それを見たその人は、きょときょとと完全に萎縮した珠紀を見下ろして、それから、そのままの表情で和音に顔を向けてきた。
「和音ちゃん、この子、いつもこんな借りてきたどころか、保護したばかりの猫みたいなの?」
「え、はい、いや、えと」
突然、返答に困る話題を振られて、和音はあわあわと、どう言えばいいものか困る。
「一番はセンセイが名前すら教えてないからじゃない?」
そこにロビンが冷たい声で、助け舟を出す、というよりかは釘を刺した。
「わたしも、どこでツッコめばいいかな~って」
「……もー、ロビンも弘も早く言ってよ」
弘の追い打ちに、むうと一度唇を尖らせた先生と呼ばれる人は、取り繕うように咳払いをしてから、口を開いた。
「僕は葛城紀美。一応、ロビン、弘、織歌の師匠になるかな」
「センセイ、そこは自信持って」
「というか、責任持って」
やいのやいのとロビンと弘が囃し立てるので、なんとも格好がつかない。
僕、というからには、そしてこの家の表札の苗字だし、三人の先生というからにはそれなりの歳だろう、と考えると、まあきっとたぶん男性なんだろう、と和音は思う。
「で、キミは?」
「……」
珠紀は頑なに口を割ろうとせずに、目の前の紀美を睨みつけている。
と、そこでがちゃり、と玄関が開く音がしたかと思うと、とたたた、と小走りの足音が続いて、リビングの扉が勢いよく開いて、織歌が飛び込んで来た。
「すみません! 遅くなりました」
この家に着くまでも走っていたのか、肩で息をしている。
「やあ、織歌。大丈夫、特になんにも進んでない」
「それは別の意味で大丈夫じゃないと思うんですけどねえ」
織歌を迎えた紀美に、じっとりとした視線を向けつつ、弘が呟く。
そのタイミングで和音は慌てて鞄から、昨日借りたハンカチを取り出して、織歌に差し出す。
「あの、ありがとうございました」
「あ、はい。いえ、まだ何も終わってない、のですけど……」
息を切らせたまま、困惑した顔をしつつも、織歌がハンカチを受け取る。
珠紀の恨めしそうな視線が、和音に向けられた。
「……たま」
「裏切ったの?」
珠紀、と和音が呼びかけようとしたのを遮って、珠紀の詰るような声が上がった。
珠紀の視線を遮るように、和音と珠紀の間に、ロビンが手を入れた。
「それは正しくない。オリカがワトが呪われていると気が付いて、それを解くために、キミをこうしておびき出したんだから」
「逆に、それを裏切ったと考えるなら、キミが和音ちゃんを呪ったと言ってるようなものになるよ。まあ、おびき出したなんて言っちゃう以上、やっぱりロビンはそこをわかってるんだけど」
やんわりと、それでも確かに珠紀を追い詰めるように、ロビンの言葉に紀美が言葉を重ねる。
まるで、将棋かチェスで相手を追い詰めるような感じだ。
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