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7-2 わたしはあなたの side B
1 木星のⅢ、土星のⅠ、そして真鍮の器
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賢木織歌は、どうにも自身は「noblesse oblige」から離れがたそうだ、と思う。
持たざる者か持つ者か、で言えば、なかなかの規模の経営者一族に属する織歌は圧倒的に持つ者である。
それもあって、自身に起こる軽い不幸の異常なまでの連続は、もしこの世に幸せと不幸せの天秤があるならば、と思えば、「まあ、仕方ない」というように流していた。
そんな織歌は、転機は、と問われれば、「先生」と呼ぶ紀美と会ったことだと答えるし、実際、それで不幸の連続については一つの解釈と、制御に行き着いた。
それでも、「noblesse oblige」的な、どこか自己犠牲的な考えが今でもちょくちょくよぎることは多い。雀百まで踊り忘れず、三つ子の魂百まで、といったところなのかもしれない。
――そして、その上で、なんとなく、その辺り、先生は自分と似ている、ような気がする。
◆
「タマキはこれとこれ」
ロビンがクリアファイルから取り出した二枚の、七センチ四方ぐらいの紙を珠紀の前に置く。
片方は昨日、和音に渡されたもののように青いペンで二重円と円の間のヘブライ文字、そして内側の円は四分割され、左上には円とそれを斜めに四分割したヘブライ文字の記入された図形、左下にはヘアピンカーブを二連続して突如鋭角に折れる図形、右上と右下にはそれぞれ異なるヘブライ文字が記入されている。
もう片方は黒いペンで描かれていて、変わらずに二重円と円の間のヘブライ文字、そして円の内側には四✕四マスに区切られた正方形のそれぞれのマスに、ヘブライ文字が一つずつ収まっていた。
どちらも、昨日帰ってから、織歌に説明を投げ出してロビンが用意したものだ。
「これって、惑星の護符……?」
「ああ、まあ、シジルのメダルなんて持ってたから、知っててもおかしくはないか。本格的に作ったというには程遠いけど、多少はいろいろしてる」
そのいろいろの中身も織歌は知っている。
まず、最初に時間をチェックして、戸棚の奥底から引っ張り出したお香を焚きつつ、ぶつぶつと何やら少なくとも英語でもない言語を呟きながら描いていた。
多少じゃなくて、十分、いろいろしている、と織歌は思う。
それでも本式に満たないから多少、と言っているのだろうけれど。
「オリカ」
「はい」
そして、最後にロビンは織歌にも同じサイズの紙を一枚差し出した。
事前に聞いていた織歌はそれを受け取る。
円の上部左右に取っ手があり、その真ん中には穴のように半円が描かれていて、更に円の半ばより上の所にこの円を球体に見立てるように、湾曲してぐるりとヘブライ語で何かが書かれている。
そして、この円というよりは球体を支えるように、台形の脚がついていた。
――一応、念のため、緊急措置用に。オリカならたぶんこれを武器に変えられる、はず。
そう、事前に言われてはいた紙をひらりと裏返すと、ほのかに染みついたお香の匂いが香り、眼の前に現れた裏面には筆記体でBrassと走り書きがされていた。
昨日、ロビンがばたばたと忙しく準備をして部屋にこもってしまってから、織歌は紀美と弘に事の次第を説明して、そして説明を求めた。
結果的に織歌が得られたのは、それらが西洋の魔導書系列の呪い、その中でも有名どころで、だからこそロビンは即座に対応策の準備に入ったということだった。
まあ、下地的には妥当である。イギリスにおけるキリスト教が多少複雑でも、ロビンがそもそもその枠の外の妖精に干渉された人物であっても、この中では一番西洋系のものを扱うのに長けていておかしくはない。
持たざる者か持つ者か、で言えば、なかなかの規模の経営者一族に属する織歌は圧倒的に持つ者である。
それもあって、自身に起こる軽い不幸の異常なまでの連続は、もしこの世に幸せと不幸せの天秤があるならば、と思えば、「まあ、仕方ない」というように流していた。
そんな織歌は、転機は、と問われれば、「先生」と呼ぶ紀美と会ったことだと答えるし、実際、それで不幸の連続については一つの解釈と、制御に行き着いた。
それでも、「noblesse oblige」的な、どこか自己犠牲的な考えが今でもちょくちょくよぎることは多い。雀百まで踊り忘れず、三つ子の魂百まで、といったところなのかもしれない。
――そして、その上で、なんとなく、その辺り、先生は自分と似ている、ような気がする。
◆
「タマキはこれとこれ」
ロビンがクリアファイルから取り出した二枚の、七センチ四方ぐらいの紙を珠紀の前に置く。
片方は昨日、和音に渡されたもののように青いペンで二重円と円の間のヘブライ文字、そして内側の円は四分割され、左上には円とそれを斜めに四分割したヘブライ文字の記入された図形、左下にはヘアピンカーブを二連続して突如鋭角に折れる図形、右上と右下にはそれぞれ異なるヘブライ文字が記入されている。
もう片方は黒いペンで描かれていて、変わらずに二重円と円の間のヘブライ文字、そして円の内側には四✕四マスに区切られた正方形のそれぞれのマスに、ヘブライ文字が一つずつ収まっていた。
どちらも、昨日帰ってから、織歌に説明を投げ出してロビンが用意したものだ。
「これって、惑星の護符……?」
「ああ、まあ、シジルのメダルなんて持ってたから、知っててもおかしくはないか。本格的に作ったというには程遠いけど、多少はいろいろしてる」
そのいろいろの中身も織歌は知っている。
まず、最初に時間をチェックして、戸棚の奥底から引っ張り出したお香を焚きつつ、ぶつぶつと何やら少なくとも英語でもない言語を呟きながら描いていた。
多少じゃなくて、十分、いろいろしている、と織歌は思う。
それでも本式に満たないから多少、と言っているのだろうけれど。
「オリカ」
「はい」
そして、最後にロビンは織歌にも同じサイズの紙を一枚差し出した。
事前に聞いていた織歌はそれを受け取る。
円の上部左右に取っ手があり、その真ん中には穴のように半円が描かれていて、更に円の半ばより上の所にこの円を球体に見立てるように、湾曲してぐるりとヘブライ語で何かが書かれている。
そして、この円というよりは球体を支えるように、台形の脚がついていた。
――一応、念のため、緊急措置用に。オリカならたぶんこれを武器に変えられる、はず。
そう、事前に言われてはいた紙をひらりと裏返すと、ほのかに染みついたお香の匂いが香り、眼の前に現れた裏面には筆記体でBrassと走り書きがされていた。
昨日、ロビンがばたばたと忙しく準備をして部屋にこもってしまってから、織歌は紀美と弘に事の次第を説明して、そして説明を求めた。
結果的に織歌が得られたのは、それらが西洋の魔導書系列の呪い、その中でも有名どころで、だからこそロビンは即座に対応策の準備に入ったということだった。
まあ、下地的には妥当である。イギリスにおけるキリスト教が多少複雑でも、ロビンがそもそもその枠の外の妖精に干渉された人物であっても、この中では一番西洋系のものを扱うのに長けていておかしくはない。
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