たとえこの恋が世界を滅ぼしても2

堂宮ツキ乃

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5章

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「え~今日は、先日行われた実力テストの結果を返しまーす」

 春の新学期が終わった後に行われる実力テストはその前の学年のまとめテストのようなもので、学年全体の順位が出る。夜叉は去年10位以内の点数を取り、そこで名前がクラス内で知られ渡るようにもなった。その冬に別のことで校内で有名になったが。

「んじゃ次、桜木姉ー」

「はい」

 2つ折りにされた紙を神崎から受け取り、席に戻ってからそれを開くと全ての教科で90点以上。順位は7位だった。

(まぁ去年と同じくらい…)

 夜叉は戯人族の能力のおかげか大して勉強をしなくても人と同じくらい、むしろそれ以上の成績を収めることができた。正直、勉強のことで悩んだことはないし怒られたこともない。

「今日はもう中途半端な時間だから授業を始めるつもりはない。各自修学旅行の下調べでもしてくれ。今の時間はスマホの使用可」

 やったーなんて声が上がって”遊ぶんじゃねぇぞ。あと騒ぎすぎるな”と神崎は釘を刺し、自身は教卓の前に椅子を引いて手帳に何やら書き込み始めた。

「やーちゃんはどこ行きたい? 彦瀬はねー、札幌のビール園でジンギスカン食べたい! いくら…海鮮丼も食べたいな! あと夕張メロンソフトが有名だよね。それに…」

「ちょっとちょっと。自分の野望が溢れだしとる!」

 席の移動もしていい、とのことで夜叉の席には彦瀬と瑞恵と阿修羅が集結した。彦瀬は家族で北海道へ旅行したことがあるらしく、食べ物がなんでもおいしくてひたすら食べていたんだとか。壮大な景色には、つい口をぽかーんと開けたまま見入っていたんだと。

 瑞恵も北海道に旅行したことがあり、富良野で広大なラベンダー畑にパッチワークの丘を楽しんだ。

「規模が違うよね、畑が。たっくさんあるんだよ! ラベンダーソフトとかじゃがバターとポテトコロッケもおいしかったな~」

「やっぱり食べ物かい」

 昼休憩はもうすぐ。言葉の食テロで夜叉のお腹がきゅうと小さく音を立てた。

「あーちゃんも行ったことあるだよね。どこ行ったの?」

「自分は蝦夷の頃に行ったきりなのであまりご存知ないかもしれませんが確か…」

「「蝦夷?」」

「あ…あぁぁぁ阿修羅は旧国名マニアだもんね! つい北海道じゃなくて蝦夷って出たんだよね!」

「あ…左様でございます」

 不思議そうに聞き返した2人に夜叉は慌てて繕い、阿修羅はそういえばと気づき夜叉の言うことにうなずいてなんでもないようにポーカーフェイスを保った。

 彦瀬と瑞恵は阿修羅のことを変わった趣味を持った女子だと納得し、修学旅行ではどこに行って何をしようねとスマホの電源を入れた。藍栄高校では登校してから授業後までスマホの使用は禁止で電源を落とすように、とされている。

「へぇ…私は北海道の最北端に行きたい。宗谷岬?」

「おもしろそー!」

「ただ今回の修学旅行では範囲外だってさ…遠すぎて…」

「また別の機会に参りましょう」

「そだね」

 夜叉もスマホで北海道の観光地を調べ始めた。行ったことのない夜叉でも知っている有名観光地やマニアな場所まであり、どれも興味深い。

「海鮮丼食べたーい。彦瀬はうに苦手だったんだけど北海道で食べたらわりと好きになったんだよ!」

「ほお。海鮮丼いいね」

「じゃあ自由行動で食べよ!」

「ジンギスカンも食べてみたいな。羊さんっておいしい?」

「おいしいよ。てかやーちゃんも食べ物気になってきてるね…」

「ん?」

 いつの間にか夜叉は「北海道に行ったらこれを食べるべき!」というブログを見てさらにお腹を空かせていた。阿修羅は神崎の目を盗んで夜叉に一口チョコを食べさせ、”餌付け?”と彦瀬と瑞恵は半笑いした。
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