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7章
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「夜叉、母が戯人族の間に常駐してぬしの元を離れるのは寂しいかえ?」
「どしたの急に…」
雨の日の日曜日。夜叉は自室で宿題をやっていたら舞花がベッドの端に腰かけて煙管を吹かした。
外からの光は今日は無いので1日中電気をつけている。雨音が不規則に聴こえるのは外側の窓枠に雫が滴っているからだろう。
夜叉はシャーペンを置いて伸びをし、手元のコップで水を飲みながら首をかしげた。
「寂しいってよりは心細い…初めて会ってからほぼずっと一緒だったからさ…」
彼女は少し眉を落として上目遣いで舞花を見つめた。産みの母親ではあるが”舞花”と呼び、まるで友人のように接しているが心強い味方の1人だ。
「もう私も跳躍訓練をしてる身だから自分の身は自分で守らないといけない部分はあるけど、舞花にはそばにいてほしいかなって思う。あ、もしかして青龍さんに頼まれたの?」
「そんなところでありんす。鬼子母神さんから聞きんした…」
「そう」
「霊体だからこそできる仕事がある、と。わっちにとって現世で初めての仕事になるかもしれんせん。わっちが役に立てることであればやってみたいと思いんした」
舞花も子が離れる時期なのか、否、夜叉が親離れするべき時が来たのか。
夜叉はコップの水を眺めた後、迷った表情を首を振って消して少し寂し気にほほえんだ。
「舞花がやりたいことなら私は止めないよ。駄々をこねる歳でもないしさ。たまに会えるんだったらそれでいい」
「ぬしには寂しい思いをさせないよう、できるだけ会いに来んす。青龍様も仕事は自分の好きなタイミングでいいとおっしゃって下さいんした」
舞花は空中を浮遊して夜叉を抱きしめた。お互いに感触はないが舞花の花の香りは夜叉の鼻腔をくすぐってツン、と鼻の奥が痛くなってすすった。
「どしたの急に…」
雨の日の日曜日。夜叉は自室で宿題をやっていたら舞花がベッドの端に腰かけて煙管を吹かした。
外からの光は今日は無いので1日中電気をつけている。雨音が不規則に聴こえるのは外側の窓枠に雫が滴っているからだろう。
夜叉はシャーペンを置いて伸びをし、手元のコップで水を飲みながら首をかしげた。
「寂しいってよりは心細い…初めて会ってからほぼずっと一緒だったからさ…」
彼女は少し眉を落として上目遣いで舞花を見つめた。産みの母親ではあるが”舞花”と呼び、まるで友人のように接しているが心強い味方の1人だ。
「もう私も跳躍訓練をしてる身だから自分の身は自分で守らないといけない部分はあるけど、舞花にはそばにいてほしいかなって思う。あ、もしかして青龍さんに頼まれたの?」
「そんなところでありんす。鬼子母神さんから聞きんした…」
「そう」
「霊体だからこそできる仕事がある、と。わっちにとって現世で初めての仕事になるかもしれんせん。わっちが役に立てることであればやってみたいと思いんした」
舞花も子が離れる時期なのか、否、夜叉が親離れするべき時が来たのか。
夜叉はコップの水を眺めた後、迷った表情を首を振って消して少し寂し気にほほえんだ。
「舞花がやりたいことなら私は止めないよ。駄々をこねる歳でもないしさ。たまに会えるんだったらそれでいい」
「ぬしには寂しい思いをさせないよう、できるだけ会いに来んす。青龍様も仕事は自分の好きなタイミングでいいとおっしゃって下さいんした」
舞花は空中を浮遊して夜叉を抱きしめた。お互いに感触はないが舞花の花の香りは夜叉の鼻腔をくすぐってツン、と鼻の奥が痛くなってすすった。
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