Eternal Dear4

堂宮ツキ乃

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4章

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 別荘のすぐそばには和風の作りの沖田家が建っている。

 凪は海風に軽く髪を煽られながら沖田家のチャイムを鳴らす。

 ピンポーン、という軽快な音の後にドタバタと走ってくる気配がし、引き戸が開いた。

「凪兄!」

「梨音か。悪ィんだけど櫛とゴキブリホイホイねェか? じーちゃんかとーちゃんかーちゃんに聞いてくれ」

「わかった! お母さーん~凪兄がね~」

 梨音はデカい声を発しながらドタバタと戻っていった。

 取り残された気分の凪は中に入って戸を閉め、玄関先に腰を下ろした。再び足音が返ってきたので振り向くと、来たのは梨音ではなくその姉、麻緒。

「なっぎに~いぃ~」

「お。麻緒か。相変わらずオタクなのか?」

 凪がおどけて片頬を上げて見せると麻緒はムッとして不平な声を上げた。

「何それ! 久しぶりに会って第一声がそれぇ!?  確かにオタ充キメてるけど…もっと気の利いたことの1つや2つ言ってくれてもよくない!? カスミンは"去年よりキレイになったね"って言ってくれたのに…」

「そりゃおめー…お世辞だろーが。アイツは社交辞令でそういうこと誰にでもしょっちゅう言ってるぞ」

「それでも別にいいのー。本心じゃなくても嬉しいもん」

 麻緒はツンっと顔をそらして腰に手を当てた。

「っつーか梨音は? 頼んだモンがあるんだけど」

「あーうん。ゴキブリホイホイならすぐにあったけどブラシがなくて。今、沙奈さな姉の部屋を物色してる。使ってない新品があるはずって言ってるよ」

「マジでか。頼むぞー。ウチの風紀委員が困ってるから…」

 沙奈はきょうだいの中で1番上の19歳。今大学生で彼氏がいるというリア充だ。

「急にすまん、ありがとな」

 やって来たのは麻緒を大人っぽくした姿の姉、沙奈。その後を梨音がちょこちょことついてきている。

 沙奈は包装されたままの櫛を差し出した。持ち手の裏側には宝石を思わせるプラスチックの装飾品が埋め込まれている。麓も喜びそうだ。

「うーうん、いいの。よかったらそのままもらっちゃって。私からのプレゼントということで」

「わかった。お礼はまた持ってくるわ」

「あ! じゃあ緑髪のコを連れてきてよ。女の子の精霊と話してみたい」

「お~…アイツか。 会ったのか? よく知ってんな」

「うん、お母さんから聞いた」

「そっか。とりあえず今日はおやすみ」

「「「おやすみ!」」」

 凪は3人に見送られて別荘へ向かった。



 焔と光はコンビニから帰ってきて、扇と霞もやっと目が覚めた。なぜか冷たい廊下の隅に放り投げられており、服にはホコリがくっついていた。

 脱衣所からどのようにしてこんな状況になったのか…。2人は襟が伸びてシワになっているのを直しながら頭をひねった。

 唯一分かったのは鼻血の正体。麓の悲鳴が聞こえて真っ先に駆けつけて目にとびこんできたのは────

「ヤバい。思い出したらまた鼻血出そう…」



 2人が血を洗い流して和室に入ると、焔と光はアイスを食べていた。

「あ、お2人さん。しばらく姿を見ないと思ってたんスけど…。どこにいたんスか?」

「う~ん…。気にするな」

 細かい説明が面倒なので扇はお茶を濁した。いい歳して鼻血なんて恥だろう。

「そーいや他のメンツは? 特に麓ちゃん」

「寮長はお風呂掃除でナギりんとアオくんとロクにゃんはそっちの和室にいるよ」

「何その変な組み合わせ。ま、いいや…」

「いやよくねェ。何してんの3人で!」

 扇がスパンッと襖を開けると、麓はすでにパジャマ姿。その彼女は畳の上で正座をして長い髪を梳かしている。前には蒼が大きな手鏡を持ち、凪はゴキブリホイホイを部屋の四隅に設置していた。

 その彼は蔑んだ目で2人のことを見る。

「…なんだおめーら起きたのか。変態×2」

「「やめろその不名誉な呼び方!」」

 2人同時に抗議すると、髪を梳かし終わったらしい麓がおずおずと声をかけた。

「あの…先程はお見苦しい所をお見せし、申し訳ございませんでした」

「いやいやいや!大丈夫、気にしてないから!」

「そだよ。むしろ目の保養だしこれからたまに拝ませてもらえたら…」

「ほざけ。もっかい廊下で寝るか? あん?」

「どこの田舎のヤンキーだよ…」

 そんな中、麓は扇と目を合わせないように目を伏せた。頬はほんのりと赤い。

「どしたの? 麓ちゃん」

「あ…あっ! いえ! そろそろ寝ようかと思っただけです」

「あーそう? じゃあ俺と一緒に────」

「いやいやそこは私が────」

「もうおめーら2人ここ出禁!!」

 凪の怒声と蹴りで扇と霞は強制退場させられ、麓と寮長の和室はやっと静かになった。

 蒼は部屋から出る直前に振り向いてほほえんだ。

「おやすみなさい、麓さん。ごゆっくり」

「ありがと、蒼君」

 麓もほほえみ返し、もらったブラシを大切そうにそっと置いた。
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