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5章
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朝来と夜叉の関係について、夜叉は頬を赤らめながらも小さく”友だち”と答えた。
美男美女の友情エンドってありかよと、いつの間にか現れた神七と神児が惜しそうに頭を抱えた。
朝来がいる間、阿修羅はずっと不機嫌面でお邪魔虫のことを睨みつけていた。
「あーちゃんと影内君ってライバルなの?」
「…はぁ」
「やーちゃんが影内君に取られてすごく悔しそうだったじゃん!」
「そうでしたか?」
「うんガッツリ」
店を出た一行とおまけたちは、再び小樽の街を散策しにばらけて歩き始めた。その一番後ろを阿修羅と彦瀬が並んで歩いていた。
「ヤツのことはどうしても気に食わないので…そのせいか、やー様とヤツが一緒にいるのを見ると腹が立って仕方ない…というのはあります」
「それって────恋じゃない?」
「────恋」
阿修羅は神妙な顔になって立ち止まった。その瞬間に風にあおられた長い髪の毛が流れるように千切れて短髪になり、可愛らしく着飾ったワンピースがシンプルなワイシャツとスラックスに変わっていく。
(自分がやー様に恋を…)
ただ綺麗なだけではない。見た目に反して面倒くさがりで家事が苦手で、でも人のことは放っておけなくて時に力強い声をかける。飄々としているようでお人好しな戯人族のお姫様。
以前にも青龍に夜叉と夫婦頭領になったら、というようなことを言われたことがある。その時はそれはそれで悪くないと思ったものだ。
「…結婚したいかもしれないのは」
「け、けっこん!?」
「恋なのでしょうか」
「そ…そうだねぇ、恋でしょ。好きじゃなきゃ結婚したいって思わないでしょ」
「なるほど」
突拍子もないことを言いだした阿修羅に彦瀬は顔を真っ赤にさせた。”まさかそこまで考えてるなんて…”と小さくつぶやいている。
阿修羅は自分の長い髪の毛先をつまむとおもむろに”切ってしまおうか…”とぼやいた。
「え!? 切っちゃうの!? もったいないよ~…」
「なぜですか?」
「こんなに綺麗な色と髪質だもん。それに髪は女の命って言うじゃん」
「それもそうですね…」
とは言え自分は実は女ではない────というのは隠しているつもりはないが今さら言おうとは思わず。
彼は毛先を離して風になびかせ、前を歩く夜叉のことを見た。どこまでついてくるのか知らないがその隣をずっと朝来がキープしている。
2人の口数は少ないが1つ1つをまるでかみしめるように大切そうに言葉を交わし合っていた。
夜叉はの顔はほんのり色づいたままで眉が垂れ下がっているところを見るとやはり、朝来には他の男子たちとは違う特別な想いを抱いているのは明らかだ。
朝来も朝来で夜叉のことを見る瞳は優しく細められている。瑞恵ややまめたちに話しかけられた時も柔和な対応をしているが、夜叉との時は甘さを足しているようだ。後ろから見ているこちらが気恥ずかしくなりそうなほど。
2人が並ぶと程よい身長差で、神七と神児が”めためたいい!”と妙に褒めちぎるのもなんとなく分かる気がした。それほどまでに今の2人は誰がどう見てもお似合いのカップルだ。
だからこそなのかもしれない。自分が衝動的に髪を切ってしまおうかなんて言い出したのは。
戯人族になる以前の自分のことはあまり覚えていないが、1番最初の記憶の時から阿修羅の髪は綺麗で長かった。朱雀もほめてくれたし鬼子母神にはよく結ってもらっていた。
そのせいか男よりも女の可愛らしい格好の方が好きで。人間界と違って性別がどうのこうのにこだわる世界ではなかったから阿修羅の嗜好を咎める者はおらず、彼は自分の気の向くまま今日まで過ごしてきた。
(自分はあなたのことを…)
心の内を彼女に打ち明けられたら。
優しく微笑み合う夜叉と朝来のことを見ているとどうにも胸の奥がきゅーと締め付けられるようで、彼はそっと胸元に手を当てて目を伏せた。
まるで心の中でつぶやいた続きの言葉を押し留めるように。
美男美女の友情エンドってありかよと、いつの間にか現れた神七と神児が惜しそうに頭を抱えた。
朝来がいる間、阿修羅はずっと不機嫌面でお邪魔虫のことを睨みつけていた。
「あーちゃんと影内君ってライバルなの?」
「…はぁ」
「やーちゃんが影内君に取られてすごく悔しそうだったじゃん!」
「そうでしたか?」
「うんガッツリ」
店を出た一行とおまけたちは、再び小樽の街を散策しにばらけて歩き始めた。その一番後ろを阿修羅と彦瀬が並んで歩いていた。
「ヤツのことはどうしても気に食わないので…そのせいか、やー様とヤツが一緒にいるのを見ると腹が立って仕方ない…というのはあります」
「それって────恋じゃない?」
「────恋」
阿修羅は神妙な顔になって立ち止まった。その瞬間に風にあおられた長い髪の毛が流れるように千切れて短髪になり、可愛らしく着飾ったワンピースがシンプルなワイシャツとスラックスに変わっていく。
(自分がやー様に恋を…)
ただ綺麗なだけではない。見た目に反して面倒くさがりで家事が苦手で、でも人のことは放っておけなくて時に力強い声をかける。飄々としているようでお人好しな戯人族のお姫様。
以前にも青龍に夜叉と夫婦頭領になったら、というようなことを言われたことがある。その時はそれはそれで悪くないと思ったものだ。
「…結婚したいかもしれないのは」
「け、けっこん!?」
「恋なのでしょうか」
「そ…そうだねぇ、恋でしょ。好きじゃなきゃ結婚したいって思わないでしょ」
「なるほど」
突拍子もないことを言いだした阿修羅に彦瀬は顔を真っ赤にさせた。”まさかそこまで考えてるなんて…”と小さくつぶやいている。
阿修羅は自分の長い髪の毛先をつまむとおもむろに”切ってしまおうか…”とぼやいた。
「え!? 切っちゃうの!? もったいないよ~…」
「なぜですか?」
「こんなに綺麗な色と髪質だもん。それに髪は女の命って言うじゃん」
「それもそうですね…」
とは言え自分は実は女ではない────というのは隠しているつもりはないが今さら言おうとは思わず。
彼は毛先を離して風になびかせ、前を歩く夜叉のことを見た。どこまでついてくるのか知らないがその隣をずっと朝来がキープしている。
2人の口数は少ないが1つ1つをまるでかみしめるように大切そうに言葉を交わし合っていた。
夜叉はの顔はほんのり色づいたままで眉が垂れ下がっているところを見るとやはり、朝来には他の男子たちとは違う特別な想いを抱いているのは明らかだ。
朝来も朝来で夜叉のことを見る瞳は優しく細められている。瑞恵ややまめたちに話しかけられた時も柔和な対応をしているが、夜叉との時は甘さを足しているようだ。後ろから見ているこちらが気恥ずかしくなりそうなほど。
2人が並ぶと程よい身長差で、神七と神児が”めためたいい!”と妙に褒めちぎるのもなんとなく分かる気がした。それほどまでに今の2人は誰がどう見てもお似合いのカップルだ。
だからこそなのかもしれない。自分が衝動的に髪を切ってしまおうかなんて言い出したのは。
戯人族になる以前の自分のことはあまり覚えていないが、1番最初の記憶の時から阿修羅の髪は綺麗で長かった。朱雀もほめてくれたし鬼子母神にはよく結ってもらっていた。
そのせいか男よりも女の可愛らしい格好の方が好きで。人間界と違って性別がどうのこうのにこだわる世界ではなかったから阿修羅の嗜好を咎める者はおらず、彼は自分の気の向くまま今日まで過ごしてきた。
(自分はあなたのことを…)
心の内を彼女に打ち明けられたら。
優しく微笑み合う夜叉と朝来のことを見ているとどうにも胸の奥がきゅーと締め付けられるようで、彼はそっと胸元に手を当てて目を伏せた。
まるで心の中でつぶやいた続きの言葉を押し留めるように。
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