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7章
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「…認めん。私は認めないからな」
「ゆ…結城さん? 何か誤解しているのでは…?」
「全くもってその通りです、織原さん」
夕方、札幌駅へ移動した一行はクラスや班もバラバラになって今日行った場所ややったことなんかを報告しあっていた。
その中で夜叉たちの班は相変わらず固まっていて、そこにクラスの仲のいい人たちが集まってくる。
先ほど札幌駅に到着したばかりの藍栄の守護神こと結城は、同じ班の手芸部の人たちと楽しそうにおしゃべりしながら歩いていたのだが。
「なぜ響高のアタマとやーさんが一緒にいるんだ…!」
「あ、織原さん久しぶりー」
朝来がヘラっと笑うと結城は肩をいからせて眉間にシワを寄せた。彼女と同じような表情の阿修羅は”最もだ”と言わんばかりに大きく何度もうなずいている。
歴史を変えたとは言え結城が朝来にいい感情を持っていないのは一目瞭然だし、ある意味当然ではある。夜叉が結城と親しくなる前から響高とは何度か衝突していたようだ。
「やーさん…あんたに男を見る目が無いのは意外だったな」
「えぇ!? 私!?」
「あぁ…その様子じゃ付き合っているようだが」
「へっ? 別にまだ付き合ってなんかないよ…」
「ふ~ん…?」
「まだ、か…」
意味ありげな笑みを浮かべる朝来と、いっそう顔の影を濃くした結城を見て夜叉は顔から湯気をふかせて手を振ってうつむいた。
「や…やだ! そんなんじゃないってば! 付き合ってないしそんな予定なんかない…ない、よね?」
「ん?」
夜叉は近い距離で寄り添うように立つ朝来のことを見つめた。彼は底の見えないほほえみで彼女を見つめるだけで。そこで自分が何を言ったのか理解した彼女は”何もない”とつぶやくように言い、前髪を引っ張って顔を隠そうとした。
彼女の珍しい様子や甘いシーンを目の前で繰り広げられた彦瀬と瑞恵は小さく声にならない悲鳴を上げ、やまめは興奮気味にスマホを向けて連続でシャッター音を鳴らした。
いかにも女子高生な反応をしている3人の様子に結城と阿修羅の顔はますます不機嫌にゆがめられていく。
「おーいさくらー。例の生田君なんだけどさー」
その輪の雰囲気の温度差を露知らず、和馬が手をぶんぶんと振りながら割って入った。しかもその隣には彼らのほとんどが知らない男子高校生が1人。本当に自分が入っていいのかと迷いながら照れているような表情で頬をかいている。
「あ、和馬。と、梶原君じゃん」
「だから樫原だっての!」
また夜叉に名前を間違えられた1個上で響高の男子────樫原は自分のことを指さしながら怒鳴った。
「な、まっ…お前まで!」
「あ…守護神も一緒なのか」
腰を低くして身構えた結城に樫原は両手を軽く上げて敵意がないことを示した。その顔は決まり悪そうに眉の端を下げて視線を落としている。
「どったの2人で」
「うん、響高も札幌駅に集合らしくて今偶然会ったとこでね。先輩を迎えに来たらしいんだ」
「先輩って…朝来?」
「…おう。そろそろ集合時間だしホテルに向かうから先生が呼んで来いって」
「もうそんな時間? じゃあしょうがないか」
小樽から夜叉たちの班にまぎれて行動していた朝来は若干惜しそうな顔をして、夜叉の手を引いて輪から離れると彼女と向かい合った。
「楽しかったよ、お姫様。高3の修学旅行なんて変だけどさ、君とどこかで会えたらいいなんて思いながら街をフラフラしてたんだ」
「あ、そういえば2年生じゃないのに…」
「まぁちょっとね。ウチと君んとこの日程がほぼ同じだと知った時は運命感じちゃったよ」
「またそんな」
よく恥ずかしいこと言えるよね、と夜叉が目を細めると以外にも彼はいかにも少年のような明るくて可愛らしい笑顔になった。先ほどまで彦瀬たちの前で浮かべていた大人っぽくてどこか色気を感じさせるものとは違う。
(あ…)
八の字になった眉と糸になった目、唇のすき間からのぞかせた歯。時々見せる子どものような表情に自分でも驚くくらい胸が高鳴ってみとれてしまった。
確かに他の皆が言う通り朝来は顔が整っていてかっこいいし大人っぽい服装もよく似合う。しかし彼の本当の魅力はそれだけじゃない。
時々見せる意外な表情にどうしようもなく惹かれてしまう。こんなこと、今までに誰にも思ったことはなかった。
彼女の表情に首をかしげた朝来は夜叉の手を取って顔を近づけると、額を合わせて彼女だけに聞こえる声量でささやいた。
「とりあえず今はここまで。また後で迎えに行くよ、お姫様」
「え? 後でって…」
彼の言葉の意味は理解できずほうけていると、朝来は最後にゆっくりと顔を和らげると彼女の頭をポンポンとなでて手を振りながら背を向けた。
「ゆ…結城さん? 何か誤解しているのでは…?」
「全くもってその通りです、織原さん」
夕方、札幌駅へ移動した一行はクラスや班もバラバラになって今日行った場所ややったことなんかを報告しあっていた。
その中で夜叉たちの班は相変わらず固まっていて、そこにクラスの仲のいい人たちが集まってくる。
先ほど札幌駅に到着したばかりの藍栄の守護神こと結城は、同じ班の手芸部の人たちと楽しそうにおしゃべりしながら歩いていたのだが。
「なぜ響高のアタマとやーさんが一緒にいるんだ…!」
「あ、織原さん久しぶりー」
朝来がヘラっと笑うと結城は肩をいからせて眉間にシワを寄せた。彼女と同じような表情の阿修羅は”最もだ”と言わんばかりに大きく何度もうなずいている。
歴史を変えたとは言え結城が朝来にいい感情を持っていないのは一目瞭然だし、ある意味当然ではある。夜叉が結城と親しくなる前から響高とは何度か衝突していたようだ。
「やーさん…あんたに男を見る目が無いのは意外だったな」
「えぇ!? 私!?」
「あぁ…その様子じゃ付き合っているようだが」
「へっ? 別にまだ付き合ってなんかないよ…」
「ふ~ん…?」
「まだ、か…」
意味ありげな笑みを浮かべる朝来と、いっそう顔の影を濃くした結城を見て夜叉は顔から湯気をふかせて手を振ってうつむいた。
「や…やだ! そんなんじゃないってば! 付き合ってないしそんな予定なんかない…ない、よね?」
「ん?」
夜叉は近い距離で寄り添うように立つ朝来のことを見つめた。彼は底の見えないほほえみで彼女を見つめるだけで。そこで自分が何を言ったのか理解した彼女は”何もない”とつぶやくように言い、前髪を引っ張って顔を隠そうとした。
彼女の珍しい様子や甘いシーンを目の前で繰り広げられた彦瀬と瑞恵は小さく声にならない悲鳴を上げ、やまめは興奮気味にスマホを向けて連続でシャッター音を鳴らした。
いかにも女子高生な反応をしている3人の様子に結城と阿修羅の顔はますます不機嫌にゆがめられていく。
「おーいさくらー。例の生田君なんだけどさー」
その輪の雰囲気の温度差を露知らず、和馬が手をぶんぶんと振りながら割って入った。しかもその隣には彼らのほとんどが知らない男子高校生が1人。本当に自分が入っていいのかと迷いながら照れているような表情で頬をかいている。
「あ、和馬。と、梶原君じゃん」
「だから樫原だっての!」
また夜叉に名前を間違えられた1個上で響高の男子────樫原は自分のことを指さしながら怒鳴った。
「な、まっ…お前まで!」
「あ…守護神も一緒なのか」
腰を低くして身構えた結城に樫原は両手を軽く上げて敵意がないことを示した。その顔は決まり悪そうに眉の端を下げて視線を落としている。
「どったの2人で」
「うん、響高も札幌駅に集合らしくて今偶然会ったとこでね。先輩を迎えに来たらしいんだ」
「先輩って…朝来?」
「…おう。そろそろ集合時間だしホテルに向かうから先生が呼んで来いって」
「もうそんな時間? じゃあしょうがないか」
小樽から夜叉たちの班にまぎれて行動していた朝来は若干惜しそうな顔をして、夜叉の手を引いて輪から離れると彼女と向かい合った。
「楽しかったよ、お姫様。高3の修学旅行なんて変だけどさ、君とどこかで会えたらいいなんて思いながら街をフラフラしてたんだ」
「あ、そういえば2年生じゃないのに…」
「まぁちょっとね。ウチと君んとこの日程がほぼ同じだと知った時は運命感じちゃったよ」
「またそんな」
よく恥ずかしいこと言えるよね、と夜叉が目を細めると以外にも彼はいかにも少年のような明るくて可愛らしい笑顔になった。先ほどまで彦瀬たちの前で浮かべていた大人っぽくてどこか色気を感じさせるものとは違う。
(あ…)
八の字になった眉と糸になった目、唇のすき間からのぞかせた歯。時々見せる子どものような表情に自分でも驚くくらい胸が高鳴ってみとれてしまった。
確かに他の皆が言う通り朝来は顔が整っていてかっこいいし大人っぽい服装もよく似合う。しかし彼の本当の魅力はそれだけじゃない。
時々見せる意外な表情にどうしようもなく惹かれてしまう。こんなこと、今までに誰にも思ったことはなかった。
彼女の表情に首をかしげた朝来は夜叉の手を取って顔を近づけると、額を合わせて彼女だけに聞こえる声量でささやいた。
「とりあえず今はここまで。また後で迎えに行くよ、お姫様」
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