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7章
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「じゃあね。やーちゃん、あーちゃん。後でまたどっちかの部屋に集まって明日の作戦会議しよー」
「うん。じゃあシャワったら連絡するね」
ホテルの広間で夕飯を終え、自分たちの部屋に戻った夜叉と阿修羅は交代でシャワーを浴びることにした。
阿修羅はさも当然と言わんばかりにシャワー室に向かって手を伸ばして夜叉のことを見た。
「ではやー様から…」
「ダーメ。今日は阿修羅からだよ」
夜叉は部屋にある椅子に座ってスマホをさわっていたが顔を上げた。
「昨日私を先にしてたじゃない。今日は阿修羅からどうぞ」
そして頑として動かないという意志の表れかソファの端を両手で掴んで眉に力をこめている。
阿修羅はこめかみに汗を浮かべて苦笑交じりに頭をかいた。
「そうは言っても…やー様より先に汗を流すなどおこがましい」
「もうそういうのいいから! …あ」
夜叉は不意に声を上げてスマホを横に置いてソファに座り直した。
「そういえばずっと思ってたんだけど。もしさ、大浴場? みたいなとこで一斉に風呂るぞーってなってたらどうしてたの?」
「その場合は頑なに拒否して1人で入浴させて頂きます」
「お…さすが…。私しか知らないもんね、阿修羅がおと────」
「────そうです」
阿修羅は突然いつもと違う低い声色になって夜叉の隣に座り、彼女の手を取ってまっすぐに見つめた。
「私は男です。だから…あなたが他の男と一緒にいるのを見るとどうしようもなく妬けます」
「あ…しゅら」
「だから、私があなたのことを────」
「私のスマホふんでるから!!」
夜叉は阿修羅のおさげを引っ張って彼を避けさせるとスマホを救いだして頬を膨らませた。
「もうっ。阿修羅ったら変なところで抜けてるよね」
「すみません…」
「罰として今からシャワー浴びてきなさい!」
「は…はい!」
彼女に怒られた阿修羅は素早く立ち上がると風の速さでシャワー室にかけこんで勢いよく扉を閉めた。
夜叉は”ようやく行ったか…”とため息をついて再びスマホの画面を眺め始めた。
明日は午前中はクラスごとで移動をして工場の見学だ。午後からはまた、今日よりは短時間だが自由行動になる。
夜叉たちはざっくりと動物園に行ったり山でロープウェイに乗ろうか? など考えている。
(またクリオネを見つけたら阿修羅は怒るかな…)
午前中の彼を思い出して夜叉はくすくすと笑い、誰かに見られているわけではないのに口元に手を当てて声を抑えた。そしてとある人物から連絡が来ていることに気づくとこらえきれず吹き出した。
「…美百合だ」
彼女とは初めて会った日に連絡先を交換し、ちょくちょくやり取りをしている。
美百合からは芸能界の話、夜叉からは学校生活の話。お互いに知らない世界を知るのはもちろん初めてだし新鮮だ。
彼女はクールに見えて学校生活というものに興味津々で夜叉の話すことに文面ではあるが、楽しそうに聞いているようだ。
もちろん今日の阿修羅とクリオネの因縁の対峙も写真と合わせて送ったら大層喜んでくれた。阿修羅には悪いがあの時の彼はおもしろかったので美百合には話したくなった。今頃彼女は仕事を終えて、広いらしい自宅のマンションでくつろぎながらくすっ…と笑っているかもしれない。
戯人族の中で同性で同年代を見つけたのは初めてだったから彼女と知り合えてうれしかった。彼女は東の大地に住んでいて職業も夜叉とは全く違うから次いつ会えるのか分からないが、こうして連絡を取り合っているだけでも楽しい。
「うん。じゃあシャワったら連絡するね」
ホテルの広間で夕飯を終え、自分たちの部屋に戻った夜叉と阿修羅は交代でシャワーを浴びることにした。
阿修羅はさも当然と言わんばかりにシャワー室に向かって手を伸ばして夜叉のことを見た。
「ではやー様から…」
「ダーメ。今日は阿修羅からだよ」
夜叉は部屋にある椅子に座ってスマホをさわっていたが顔を上げた。
「昨日私を先にしてたじゃない。今日は阿修羅からどうぞ」
そして頑として動かないという意志の表れかソファの端を両手で掴んで眉に力をこめている。
阿修羅はこめかみに汗を浮かべて苦笑交じりに頭をかいた。
「そうは言っても…やー様より先に汗を流すなどおこがましい」
「もうそういうのいいから! …あ」
夜叉は不意に声を上げてスマホを横に置いてソファに座り直した。
「そういえばずっと思ってたんだけど。もしさ、大浴場? みたいなとこで一斉に風呂るぞーってなってたらどうしてたの?」
「その場合は頑なに拒否して1人で入浴させて頂きます」
「お…さすが…。私しか知らないもんね、阿修羅がおと────」
「────そうです」
阿修羅は突然いつもと違う低い声色になって夜叉の隣に座り、彼女の手を取ってまっすぐに見つめた。
「私は男です。だから…あなたが他の男と一緒にいるのを見るとどうしようもなく妬けます」
「あ…しゅら」
「だから、私があなたのことを────」
「私のスマホふんでるから!!」
夜叉は阿修羅のおさげを引っ張って彼を避けさせるとスマホを救いだして頬を膨らませた。
「もうっ。阿修羅ったら変なところで抜けてるよね」
「すみません…」
「罰として今からシャワー浴びてきなさい!」
「は…はい!」
彼女に怒られた阿修羅は素早く立ち上がると風の速さでシャワー室にかけこんで勢いよく扉を閉めた。
夜叉は”ようやく行ったか…”とため息をついて再びスマホの画面を眺め始めた。
明日は午前中はクラスごとで移動をして工場の見学だ。午後からはまた、今日よりは短時間だが自由行動になる。
夜叉たちはざっくりと動物園に行ったり山でロープウェイに乗ろうか? など考えている。
(またクリオネを見つけたら阿修羅は怒るかな…)
午前中の彼を思い出して夜叉はくすくすと笑い、誰かに見られているわけではないのに口元に手を当てて声を抑えた。そしてとある人物から連絡が来ていることに気づくとこらえきれず吹き出した。
「…美百合だ」
彼女とは初めて会った日に連絡先を交換し、ちょくちょくやり取りをしている。
美百合からは芸能界の話、夜叉からは学校生活の話。お互いに知らない世界を知るのはもちろん初めてだし新鮮だ。
彼女はクールに見えて学校生活というものに興味津々で夜叉の話すことに文面ではあるが、楽しそうに聞いているようだ。
もちろん今日の阿修羅とクリオネの因縁の対峙も写真と合わせて送ったら大層喜んでくれた。阿修羅には悪いがあの時の彼はおもしろかったので美百合には話したくなった。今頃彼女は仕事を終えて、広いらしい自宅のマンションでくつろぎながらくすっ…と笑っているかもしれない。
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