Eternal Dear1

堂宮ツキ乃

文字の大きさ
19 / 22
5章

18

しおりを挟む
(馬鹿な! 中からは何をしても切れないはず…まさか他に仲間が!?)
 
 『空の箱庭』は、中はどこもかしこも空が広がり、惑わせて永遠に閉じ込めるという術だ。しかし、外からなら切って相手を脱出させることができる。

 精霊たちには1人1つずつ、あらゆる能力を所持している。

  蒼は『空の箱庭』。

 道具や武器を使う能力は、極めて強いという精霊の証。

 そういった者の腕には、生まれた時から金のブレスレットがある。

あの人・・・がいるかと思ったけど…)

 蒼は隈無く周囲を見渡したが、誰1人としていない。



 麓は初めて命の危険を感じた。自分も、蒼も。

 自分たちを囲んでいる3人は、静かに殺気を孕ませている。今にも持っている武器と共に飛びかかってきそうだ。

 ここへ来て早々、なぜこんな目に遭わなければいけないのか。 

 それでも自分ではどうしようもない。蒼のような力を持っていないから。

 彼のことを不安げに見上げると、彼は悔しそうな表情で首にかけられた紐を取り出した。そこに通されているのは、金色の小さな鈴。

 カランカラン、という音が鳴ると、3人は急に慌てて周りを見始めた。殺気があっという間に消える。

(何のための鈴? この人たちを追い払うため?)

 その時だった。

 爆音と共に周りが煙に包まれたのは。

 突然、肩を抱き寄せられたのは。

 この手は、腕は蒼?

 咳き込んだ後、爆音に驚いて閉じた目をゆっくりと開けた。 

 少しずつ視界が開けてくると、目の前で蒼が尻餅をついていた。彼は恨めしげに麓の右斜め上を見上げる。

 では自分の隣にいるのは。

「帰ってきて早々、無茶してんじゃねェ。ったく…ここに来るてめーらもてめーらだ。ホント懲りねェのな」

 低い声音。挑戦的な黄金色の瞳。

「…女1人守れねェでどうするよ」

 不敵な笑みを浮かべ、左腕で麓の肩を抱き寄せ、右手に握るは一振りの太刀。

 切っ先を向けられた蒼は不貞腐れた表情でそっぽを向いた。

「…僕はあんたと違って攻撃系の能力じゃないんですよ────凪さん」

 麓は凪の言葉で、さっきまでの恐怖心はどこかへとんでしまっていた。

(今…女って言った? バレてたの!?)

 あわわ…と1人でパニック状態に陥っていると、凪にさらに肩を引き寄せられ、耳元に口を寄せられた。

「落ち着け。性別がどうのこうのの前にアレを片付けてくる」

 内容にも驚くが、色っぽい声音と吐息が耳にふれてくすぐったくて、顔が熱くなってきた。ここに来てからこういうことが多い気がする。

「蒼。コイツのことは頼んだ」

 言葉短く、凪は麓から離れた。太刀を握って構える様子に3人はビクッと体をすくめた。それでも負けまいと、体勢を低く構える。いつ攻撃をされてもいいように。

 それでも凪と彼らとでは、オーラの格が違いすぎる。

 背を向けた凪が、刀を振り上げて口を開いた。 

「見とけ、山の者。これが我が校の風紀委員────天神地祇てんじんちぎの真の姿だ」

 凪は3人に飛びかかり、目にも止まらぬ速さで峰打ちを食らわせていく。あえて斬らなかったのは慈悲か。 

 力強く太刀を振るう姿はまさしく────白波が立つ激しい海。

「おいてめーら…そんな実力でよく、ここへ送りこまれたな」

 凪にこてんぱんにやられた3人は、1ヶ所に集められて倒れていた。もはや、聞く耳しか持てない。

「俺の相手はてめーらなんぞじゃ足りねェ。足りなさ過ぎだ。てめーら天災地変てんさいちへんの団体で挑んできな────この俺、天神地祇の頭を倒したいんなら、な」

 凪は鞘に納めた太刀を肩に担ぎ上げ、勝ち誇った顔で3人を見下ろした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~

Kore
恋愛
「余計なこと考えさせないくらい愛せば、男として見てくれる?」そう囁く義弟の愛は重くて、危険で、究極に甘い。 ———勉強が大の苦手であり、巷で有名なヤンキー高校しか入れなかった宇佐美莉子。そんな義理姉のボディーガードになるため、後追いで入学してきた偏差値70以上の義理弟、宇佐美櫂理。しかし、ボディーガードどころか、櫂理があまりにも最強過ぎて、誰も莉子に近寄ることが出来ず。まるで極妻的存在で扱われる中、今日も義理弟の重い愛が炸裂する。———

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

#秒恋9 初めてのキスは、甘い別れと、確かな希望

ReN
恋愛
春休みが明け、それぞれに、新しい生活に足を踏み入れた悠里と剛士。 学校に向かう悠里の目の前に、1つ年下の幼なじみ アキラが現れる。 小学校時代に引っ越した彼だったが、高校受験をし、近隣の北高校に入学したのだ。 戻ってきたアキラの目的はもちろん、悠里と再会することだった。 悠里とアキラが再会し、仲良く話している とき、運悪く、剛士と拓真が鉢合わせ。 「俺には関係ない」 緊張感漂う空気の中、剛士の言い放った冷たい言葉。 絶望感に包まれる悠里に対し、拓真は剛士に激怒。 拗れていく友情をよそに、アキラは剛士をライバルと認識し、暴走していく―― 悠里から離れていく、剛士の本心は? アキラから猛烈なアピールを受ける悠里は、何を思う? いまは、傍にいられない。 でも本当は、気持ちは、変わらない。 いつか――迎えに来てくれる? 約束は、お互いを縛りつけてしまうから、口にはできない。 それでも、好きでいたい。 いつか、を信じて。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉

朝陽七彩
恋愛
突然。 同居することになった。 幼なじみの一輝くんと。 一輝くんは大人しくて子羊みたいな子。 ……だったはず。 なのに。 「結菜ちゃん、一緒に寝よ」 えっ⁉ 「結菜ちゃん、こっちにおいで」 そんなの恥ずかしいよっ。 「結菜ちゃんのこと、どうしようもなく、 ほしくてほしくてたまらない」 そんなにドキドキさせないでっ‼ 今までの子羊のような一輝くん。 そうではなく。 オオカミになってしまっているっ⁉ 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* 如月結菜(きさらぎ ゆな) 高校三年生 恋愛に鈍感 椎名一輝(しいな いつき) 高校一年生 本当は恋愛に慣れていない 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* オオカミになっている。 そのときの一輝くんは。 「一緒にお風呂に入ったら教えてあげる」 一緒にっ⁉ そんなの恥ずかしいよっ。 恥ずかしくなる。 そんな言葉をサラッと言ったり。 それに。 少しイジワル。 だけど。 一輝くんは。 不器用なところもある。 そして一生懸命。 優しいところもたくさんある。 そんな一輝くんが。 「僕は結菜ちゃんのこと誰にも渡したくない」 「そんなに可愛いと理性が破壊寸前になる」 なんて言うから。 余計に恥ずかしくなるし緊張してしまう。 子羊の部分とオオカミの部分。 それらにはギャップがある。 だから戸惑ってしまう。 それだけではない。 そのギャップが。 ドキドキさせる。 虜にさせる。 それは一輝くんの魅力。 そんな一輝くんの魅力。 それに溺れてしまう。 もう一輝くんの魅力から……? ♡何が起こるかわからない⁉♡

処理中です...