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5章
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(馬鹿な! 中からは何をしても切れないはず…まさか他に仲間が!?)
『空の箱庭』は、中はどこもかしこも空が広がり、惑わせて永遠に閉じ込めるという術だ。しかし、外からなら切って相手を脱出させることができる。
精霊たちには1人1つずつ、あらゆる能力を所持している。
蒼は『空の箱庭』。
道具や武器を使う能力は、極めて強いという精霊の証。
そういった者の腕には、生まれた時から金のブレスレットがある。
(あの人がいるかと思ったけど…)
蒼は隈無く周囲を見渡したが、誰1人としていない。
麓は初めて命の危険を感じた。自分も、蒼も。
自分たちを囲んでいる3人は、静かに殺気を孕ませている。今にも持っている武器と共に飛びかかってきそうだ。
ここへ来て早々、なぜこんな目に遭わなければいけないのか。
それでも自分ではどうしようもない。蒼のような力を持っていないから。
彼のことを不安げに見上げると、彼は悔しそうな表情で首にかけられた紐を取り出した。そこに通されているのは、金色の小さな鈴。
カランカラン、という音が鳴ると、3人は急に慌てて周りを見始めた。殺気があっという間に消える。
(何のための鈴? この人たちを追い払うため?)
その時だった。
爆音と共に周りが煙に包まれたのは。
突然、肩を抱き寄せられたのは。
この手は、腕は蒼?
咳き込んだ後、爆音に驚いて閉じた目をゆっくりと開けた。
少しずつ視界が開けてくると、目の前で蒼が尻餅をついていた。彼は恨めしげに麓の右斜め上を見上げる。
では自分の隣にいるのは。
「帰ってきて早々、無茶してんじゃねェ。ったく…ここに来るてめーらもてめーらだ。ホント懲りねェのな」
低い声音。挑戦的な黄金色の瞳。
「…女1人守れねェでどうするよ」
不敵な笑みを浮かべ、左腕で麓の肩を抱き寄せ、右手に握るは一振りの太刀。
切っ先を向けられた蒼は不貞腐れた表情でそっぽを向いた。
「…僕はあんたと違って攻撃系の能力じゃないんですよ────凪さん」
麓は凪の言葉で、さっきまでの恐怖心はどこかへとんでしまっていた。
(今…女って言った? バレてたの!?)
あわわ…と1人でパニック状態に陥っていると、凪にさらに肩を引き寄せられ、耳元に口を寄せられた。
「落ち着け。性別がどうのこうのの前にアレを片付けてくる」
内容にも驚くが、色っぽい声音と吐息が耳にふれてくすぐったくて、顔が熱くなってきた。ここに来てからこういうことが多い気がする。
「蒼。コイツのことは頼んだ」
言葉短く、凪は麓から離れた。太刀を握って構える様子に3人はビクッと体をすくめた。それでも負けまいと、体勢を低く構える。いつ攻撃をされてもいいように。
それでも凪と彼らとでは、オーラの格が違いすぎる。
背を向けた凪が、刀を振り上げて口を開いた。
「見とけ、山の者。これが我が校の風紀委員────天神地祇の真の姿だ」
凪は3人に飛びかかり、目にも止まらぬ速さで峰打ちを食らわせていく。あえて斬らなかったのは慈悲か。
力強く太刀を振るう姿はまさしく────白波が立つ激しい海。
「おいてめーら…そんな実力でよく、ここへ送りこまれたな」
凪にこてんぱんにやられた3人は、1ヶ所に集められて倒れていた。もはや、聞く耳しか持てない。
「俺の相手はてめーらなんぞじゃ足りねェ。足りなさ過ぎだ。てめーら天災地変の団体で挑んできな────この俺、天神地祇の頭を倒したいんなら、な」
凪は鞘に納めた太刀を肩に担ぎ上げ、勝ち誇った顔で3人を見下ろした。
『空の箱庭』は、中はどこもかしこも空が広がり、惑わせて永遠に閉じ込めるという術だ。しかし、外からなら切って相手を脱出させることができる。
精霊たちには1人1つずつ、あらゆる能力を所持している。
蒼は『空の箱庭』。
道具や武器を使う能力は、極めて強いという精霊の証。
そういった者の腕には、生まれた時から金のブレスレットがある。
(あの人がいるかと思ったけど…)
蒼は隈無く周囲を見渡したが、誰1人としていない。
麓は初めて命の危険を感じた。自分も、蒼も。
自分たちを囲んでいる3人は、静かに殺気を孕ませている。今にも持っている武器と共に飛びかかってきそうだ。
ここへ来て早々、なぜこんな目に遭わなければいけないのか。
それでも自分ではどうしようもない。蒼のような力を持っていないから。
彼のことを不安げに見上げると、彼は悔しそうな表情で首にかけられた紐を取り出した。そこに通されているのは、金色の小さな鈴。
カランカラン、という音が鳴ると、3人は急に慌てて周りを見始めた。殺気があっという間に消える。
(何のための鈴? この人たちを追い払うため?)
その時だった。
爆音と共に周りが煙に包まれたのは。
突然、肩を抱き寄せられたのは。
この手は、腕は蒼?
咳き込んだ後、爆音に驚いて閉じた目をゆっくりと開けた。
少しずつ視界が開けてくると、目の前で蒼が尻餅をついていた。彼は恨めしげに麓の右斜め上を見上げる。
では自分の隣にいるのは。
「帰ってきて早々、無茶してんじゃねェ。ったく…ここに来るてめーらもてめーらだ。ホント懲りねェのな」
低い声音。挑戦的な黄金色の瞳。
「…女1人守れねェでどうするよ」
不敵な笑みを浮かべ、左腕で麓の肩を抱き寄せ、右手に握るは一振りの太刀。
切っ先を向けられた蒼は不貞腐れた表情でそっぽを向いた。
「…僕はあんたと違って攻撃系の能力じゃないんですよ────凪さん」
麓は凪の言葉で、さっきまでの恐怖心はどこかへとんでしまっていた。
(今…女って言った? バレてたの!?)
あわわ…と1人でパニック状態に陥っていると、凪にさらに肩を引き寄せられ、耳元に口を寄せられた。
「落ち着け。性別がどうのこうのの前にアレを片付けてくる」
内容にも驚くが、色っぽい声音と吐息が耳にふれてくすぐったくて、顔が熱くなってきた。ここに来てからこういうことが多い気がする。
「蒼。コイツのことは頼んだ」
言葉短く、凪は麓から離れた。太刀を握って構える様子に3人はビクッと体をすくめた。それでも負けまいと、体勢を低く構える。いつ攻撃をされてもいいように。
それでも凪と彼らとでは、オーラの格が違いすぎる。
背を向けた凪が、刀を振り上げて口を開いた。
「見とけ、山の者。これが我が校の風紀委員────天神地祇の真の姿だ」
凪は3人に飛びかかり、目にも止まらぬ速さで峰打ちを食らわせていく。あえて斬らなかったのは慈悲か。
力強く太刀を振るう姿はまさしく────白波が立つ激しい海。
「おいてめーら…そんな実力でよく、ここへ送りこまれたな」
凪にこてんぱんにやられた3人は、1ヶ所に集められて倒れていた。もはや、聞く耳しか持てない。
「俺の相手はてめーらなんぞじゃ足りねェ。足りなさ過ぎだ。てめーら天災地変の団体で挑んできな────この俺、天神地祇の頭を倒したいんなら、な」
凪は鞘に納めた太刀を肩に担ぎ上げ、勝ち誇った顔で3人を見下ろした。
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