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5章
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「天神地祇?天災地変?」
晩ご飯の後、全員が食堂に残っていた。麓が風紀委員のことを知るために。
蒼は1人で無茶をしようとした罰として、寮長の食器洗いの手伝いをしている。
「まぁ面倒だからいろいろ省くが…"天"っつー高貴な精霊…理事長に認められたヤツらは、人間でいう家族みたいなモン。蒼もその1人だ」
各々に配られたのは食後のほうじ茶。麓はそれが入ったマグカップを両手で握りしめた。
「その"天"の中に厄介なヤツがいてな…千年前に存在した、極めて悪どいヤツの生まれ変わりらしい。"前世で暴れ足りなかった分、今世をさらなる破壊神として生きてやる…"なんて中二くせー御託を並べてやがる」
「中二?」
麓が首を傾げると、入学すればきっと分かる、と焔が苦笑いした。
「んでその厄介なヤツが"天"に生まれたのをいいことに活動を再開した。それに惹かれてヤツについていく精霊も多い。夕方に見たアレがそうだ。そいつらは"天災地変"って名乗ってる」
麓が神妙にうなずいた時、ガシャンという音がした。
蒼が食器を落としてしまったらしい。
「すみません、寮長」
「いいえ、大丈夫ですよ。それよりおケガはございませんか?」
「はい。片付けは僕が────痛っ」
蒼は顔をしかめた。よく見ると、指先から赤い液体が流れている。拾いかけた破片で切ってしまったらしい。
麓は思わずといった感じで立ち上がり、蒼に歩み寄った。
「麓さん?」
皆がきょとんとしている中、麓はしゃがみこんで蒼の手を取り、いつも花巻山でやっていたことをここで初めて行った。
麓が放つ淡い緑色のオーラに包まれた蒼の指先がきれいに治っていく。傷跡が全く残っていない。
「「「おお…!」」」
風紀委員も寮長も、思わず感嘆の声をもらした。
やがて麓が蒼の手を離すと、彼は不思議そうに自分の手を見つめてから麓に向かってほほえんだ。
「ありがとうございます。これが麓さんの能力なんですね」
「能力かどうか…山にいる時から当たり前にやってきたことなので」
麓が答えると、離れた所にいる凪がテーブルに肘をついて頭を抱えた。
「マズい…別の意味で厄介なヤツが入学するのか…」
「え? 厄介?」
「安心して。ケガを治すこと自体は悪いことなんかじゃないから。────ひとつ聞きたいんだけど、それって自然にも使えるの?」
そう聞く扇の頬はピクピクしている。麓は素直にうなずいた。
「えぇもちろん。植物だけじゃなくて、土にも水にも使えます」
その瞬間、麓以外の全員の顔が青ざめた。寮長が恐る恐る口を開く。
「麓様…今まで"天災地変"に会ったことはございませんか?あやつらはあなた様のような精霊を…真っ先に狙うのですよ?」
「なかったですけど…えぇっ!?」
自分が狙われる?この能力を持っていることで?しかし、山の中では危険物を察知したことがない。それに外部からの麓の知り合いは、アマテラスと獣たちだけだ。
「運良く知られてなかっただけとか?」
「かもしんないね…」
焔と光が恐ろしさに震えている。
麓も思いもよらぬ真実に、疑問と恐怖が入り交じっていた。
寮長曰く、アマテラスが"天災地変"の侵入を許さない結界を張っていたのかもしれない、とのことだった。
晩ご飯の後、全員が食堂に残っていた。麓が風紀委員のことを知るために。
蒼は1人で無茶をしようとした罰として、寮長の食器洗いの手伝いをしている。
「まぁ面倒だからいろいろ省くが…"天"っつー高貴な精霊…理事長に認められたヤツらは、人間でいう家族みたいなモン。蒼もその1人だ」
各々に配られたのは食後のほうじ茶。麓はそれが入ったマグカップを両手で握りしめた。
「その"天"の中に厄介なヤツがいてな…千年前に存在した、極めて悪どいヤツの生まれ変わりらしい。"前世で暴れ足りなかった分、今世をさらなる破壊神として生きてやる…"なんて中二くせー御託を並べてやがる」
「中二?」
麓が首を傾げると、入学すればきっと分かる、と焔が苦笑いした。
「んでその厄介なヤツが"天"に生まれたのをいいことに活動を再開した。それに惹かれてヤツについていく精霊も多い。夕方に見たアレがそうだ。そいつらは"天災地変"って名乗ってる」
麓が神妙にうなずいた時、ガシャンという音がした。
蒼が食器を落としてしまったらしい。
「すみません、寮長」
「いいえ、大丈夫ですよ。それよりおケガはございませんか?」
「はい。片付けは僕が────痛っ」
蒼は顔をしかめた。よく見ると、指先から赤い液体が流れている。拾いかけた破片で切ってしまったらしい。
麓は思わずといった感じで立ち上がり、蒼に歩み寄った。
「麓さん?」
皆がきょとんとしている中、麓はしゃがみこんで蒼の手を取り、いつも花巻山でやっていたことをここで初めて行った。
麓が放つ淡い緑色のオーラに包まれた蒼の指先がきれいに治っていく。傷跡が全く残っていない。
「「「おお…!」」」
風紀委員も寮長も、思わず感嘆の声をもらした。
やがて麓が蒼の手を離すと、彼は不思議そうに自分の手を見つめてから麓に向かってほほえんだ。
「ありがとうございます。これが麓さんの能力なんですね」
「能力かどうか…山にいる時から当たり前にやってきたことなので」
麓が答えると、離れた所にいる凪がテーブルに肘をついて頭を抱えた。
「マズい…別の意味で厄介なヤツが入学するのか…」
「え? 厄介?」
「安心して。ケガを治すこと自体は悪いことなんかじゃないから。────ひとつ聞きたいんだけど、それって自然にも使えるの?」
そう聞く扇の頬はピクピクしている。麓は素直にうなずいた。
「えぇもちろん。植物だけじゃなくて、土にも水にも使えます」
その瞬間、麓以外の全員の顔が青ざめた。寮長が恐る恐る口を開く。
「麓様…今まで"天災地変"に会ったことはございませんか?あやつらはあなた様のような精霊を…真っ先に狙うのですよ?」
「なかったですけど…えぇっ!?」
自分が狙われる?この能力を持っていることで?しかし、山の中では危険物を察知したことがない。それに外部からの麓の知り合いは、アマテラスと獣たちだけだ。
「運良く知られてなかっただけとか?」
「かもしんないね…」
焔と光が恐ろしさに震えている。
麓も思いもよらぬ真実に、疑問と恐怖が入り交じっていた。
寮長曰く、アマテラスが"天災地変"の侵入を許さない結界を張っていたのかもしれない、とのことだった。
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