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1章
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始業式と担任からの諸連絡だけだったのでこの日は午前中のみの登校。午後からは寮で過ごしたり、街へ出かけたりという生徒が多い。
麓は渡された大量の教科書に記名するべく、自室でペンを走らせていた。今日の出来事を思い出しながら。
緊張した自己紹介、新しく出会った精霊たち。
嵐のことは特に頭に残っている。活発な娘で、こっちにも元気が移りそうだ。
昼ご飯ができた、と寮長の声がしたので麓は部屋を出た。
ドアを開けたら、偶然にも焔と同時だった。
彼は麓の姿を見つけ、わっと驚いたような声を上げた。その瞬間に彼の頬が桜色に染まったのは麓の気のせいか。
「焔さん、私服に着替えたんですね」
「これか? まぁな。麓は着替えないのか?」
「このままでもいいかな、と思って」
麓は自分の制服を見渡した。朝と違ってジャケットではなく薄いカーディガン。こっちの方がずっと動きやすい。
「朝よりもっと可愛い…」
「え?」
「い、いやなんでもない! …食堂に行こっか」
「はい」
焔の心のつぶやきは麓に届かなかったようだ。良かったような、残念なような気持ちに包まれる。彼は麓が女子だと分かって以来、つい意識してしまっている。
(だって可愛すぎんだろ…いかにも純情って感じだし…今時めったにいないよあんな女の子)
だがなかなか普通に話しかけられないのが焔の性分。
彼女と気軽に話せるようになるまで、しばらくかかるだろう。
「お花見ですか?」
「あぁ。街の方に桜が綺麗な公園があるから、弁当持って夜桜でも見に行くか」
昼食中の凪の提案は、麓の興味を誘った。ちなみに本日の昼食は卵とツナ、玉ねぎのチャーハン。
「夜桜かぁ…いいですね。見に行きたいです!」
「じゃ決まりだな。寮長、弁当頼んだぜ」
「かしこまりました」
その公園は夜になると桜がライトアップされ、幻想的で美しいらしい。特に今は満開を迎えて散り際だから、風が吹く度に花弁が舞う姿は格別だそうだ。
「毎年行ってる風紀委員の春の行事だ。ついでに聞いとくけど洋服はあるのか?」
そう言う凪は、安定の着流し姿だ。
「和服しかないんですがマズイでしょうか?」
「そりゃマズイだろ。今、何時代だと思ってんだ」
「ナギりんだってロクにゃんのこと言えないでしょ」
「俺はいいよ。コレ以外のモン、持ってっから」
麓の制服、凪の着流し以外、全員洋服だ。扇と霞も午後からは仕事が無いということでスーツから着替えている。
「でしたら私が麓様に貸して差し上げますわ。なんなら今度、一緒に買いに行きましょう」
「そうだな。そうしてもらえ」
「寮長さん、ありがとうございます」
「サイズ大丈夫だろうな? デカすぎるとか…」
ドスッ。凪の言葉の途中で、彼の手元にヘアピンが刺さった。しかもスレスレに。
「あっぶね!」
「ホホホ…凪様ったら。私と麓様の体型がいかように見えて? いい加減にしないとその手に風穴開けますわよ」
「冗談だろーが冗談! あともう少しで傷害事件が起きてたぞ! 仮に委員長相手に…」
「どんな地位を持っていようが関係ありません! レディの気持ちが分からない男はただのゴミクズ野郎ですわ」
寮長怖っ! 彼女の言動には誰しもが恐れる。だが寮長がこんな態度を取るのは凪相手だけだ。
「ったく…悪かったよ」
凪はムスッとした顔でレンゲを口に運んだ。
麓は渡された大量の教科書に記名するべく、自室でペンを走らせていた。今日の出来事を思い出しながら。
緊張した自己紹介、新しく出会った精霊たち。
嵐のことは特に頭に残っている。活発な娘で、こっちにも元気が移りそうだ。
昼ご飯ができた、と寮長の声がしたので麓は部屋を出た。
ドアを開けたら、偶然にも焔と同時だった。
彼は麓の姿を見つけ、わっと驚いたような声を上げた。その瞬間に彼の頬が桜色に染まったのは麓の気のせいか。
「焔さん、私服に着替えたんですね」
「これか? まぁな。麓は着替えないのか?」
「このままでもいいかな、と思って」
麓は自分の制服を見渡した。朝と違ってジャケットではなく薄いカーディガン。こっちの方がずっと動きやすい。
「朝よりもっと可愛い…」
「え?」
「い、いやなんでもない! …食堂に行こっか」
「はい」
焔の心のつぶやきは麓に届かなかったようだ。良かったような、残念なような気持ちに包まれる。彼は麓が女子だと分かって以来、つい意識してしまっている。
(だって可愛すぎんだろ…いかにも純情って感じだし…今時めったにいないよあんな女の子)
だがなかなか普通に話しかけられないのが焔の性分。
彼女と気軽に話せるようになるまで、しばらくかかるだろう。
「お花見ですか?」
「あぁ。街の方に桜が綺麗な公園があるから、弁当持って夜桜でも見に行くか」
昼食中の凪の提案は、麓の興味を誘った。ちなみに本日の昼食は卵とツナ、玉ねぎのチャーハン。
「夜桜かぁ…いいですね。見に行きたいです!」
「じゃ決まりだな。寮長、弁当頼んだぜ」
「かしこまりました」
その公園は夜になると桜がライトアップされ、幻想的で美しいらしい。特に今は満開を迎えて散り際だから、風が吹く度に花弁が舞う姿は格別だそうだ。
「毎年行ってる風紀委員の春の行事だ。ついでに聞いとくけど洋服はあるのか?」
そう言う凪は、安定の着流し姿だ。
「和服しかないんですがマズイでしょうか?」
「そりゃマズイだろ。今、何時代だと思ってんだ」
「ナギりんだってロクにゃんのこと言えないでしょ」
「俺はいいよ。コレ以外のモン、持ってっから」
麓の制服、凪の着流し以外、全員洋服だ。扇と霞も午後からは仕事が無いということでスーツから着替えている。
「でしたら私が麓様に貸して差し上げますわ。なんなら今度、一緒に買いに行きましょう」
「そうだな。そうしてもらえ」
「寮長さん、ありがとうございます」
「サイズ大丈夫だろうな? デカすぎるとか…」
ドスッ。凪の言葉の途中で、彼の手元にヘアピンが刺さった。しかもスレスレに。
「あっぶね!」
「ホホホ…凪様ったら。私と麓様の体型がいかように見えて? いい加減にしないとその手に風穴開けますわよ」
「冗談だろーが冗談! あともう少しで傷害事件が起きてたぞ! 仮に委員長相手に…」
「どんな地位を持っていようが関係ありません! レディの気持ちが分からない男はただのゴミクズ野郎ですわ」
寮長怖っ! 彼女の言動には誰しもが恐れる。だが寮長がこんな態度を取るのは凪相手だけだ。
「ったく…悪かったよ」
凪はムスッとした顔でレンゲを口に運んだ。
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