Eternal Dear2

堂宮ツキ乃

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2章

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 公園へは寮長が運転する車で向かった。

 車内から見える流れていく景色は、麓にとって珍しいものばかり。

 少し街の方に出ただけで、高い建物がたくさん建ち並んでいた。いつも花巻山から見ていた景色を今、目の前で見ている。麓は始終、周囲をキョロキョロと見渡していた。

 その様子に、横の運転席にいる寮長は微笑んでいる。

「さ。着きましたよ。ここが富橋とみはしの桜の名所の一つ、向川むかいがわ公園でございます」

「1年振りだな。今年はちょっと満開が過ぎちゃったけど」

「あら焔様。桜はいつでも美しいものですよ。花びらが散る姿は儚さがあって、それはまた趣があるものではございませんか」

 車を出ると、地面は桜の花弁でピンクに染められていた。 

 嗅覚に集中すると、わずかだが食べ物のにおいがした。

「寮長のお弁当も屋台も楽しみだなー!」

「光さん…。毎年、花より団子ですね」

「当たり前! 祭りと言ったら屋台でしょ!」

 光と蒼の話の内容の通り、公園内の道の両脇に屋台が立ち並んでいる。

 初めて見るたくさんの人間、屋台。麓は全てを珍しそうに見ていた。

「麓ちゃんはキョロキョロしてて可愛いね。普段の倍くらい」

「え…?」

 扇の言葉にトキメキかけたら、彼が前に吹っ飛んだ。足を上げた凪が代わりに現れる。

「おいコラてめー…手は出さない約束だろーがよォ。口説き文句ほざいてんじゃねェぞコノヤロー」

「何もしてません! 断固として! …凪君嫉妬?」

「ンなわけあるか白髪」

(う、うわ~…相変わらずお強い…)

 凪は麓に視線を投げかけ、扇に向かって顎をしゃくった。

「こういう危ない男に何かされそうになったら迷わず誰か呼べ。カラカラを鳴らすのも良し」

 カラカラ、と言われて麓は首にかけてある紐を引き出した。

 普段は服の中に入れてあるそれには、小さな金色の鈴がついている。実は凪のお手製で、天神地祇である証と同時に危険を知らせるためのものでもあるらしい。ネーミングセンスがちょっとズレているのはご愛嬌。



  桜舞い散る中、良さげな場所を見つけた一同はブルーシートを敷き、その上に弁当を広げた。

「つーことで今年も1年、各々が精進できるように────乾杯」

「ちょっとナギりん! それ堅いよ。おまけに新年会のあいさつっぽいし」

「るっせーよチャラチャラできるか」

「チャラチャラの前にあんたの場合、精進する所か毎年留年がたまっていってるじゃないスか」

「留年のことはほっとけ焔! 斬るぞ!」

 凪が豪腕で焔の首を締め上げると、腕の中の焔の顔色が青く変色していく…。

「凪よせ!武器化身は出すなよ、ここ人間界!」

「はん、別にいーだろ。治癒能力を持つ精霊がいるんだからよ」

「焔斬る気満々!? やめろ! そういう問題じゃねェ!」

 ギャーギャーとさっそく騒がしくなり、不謹慎かもしれないが麓の顔には微笑みが浮かんできた。こんなに賑やかな花見は初めてだ。

  同じ500歳の凪、扇、霞の3人の中で1人だけ生徒だということを、凪は実は気にしているようだ。そんなところをちょいちょいおちょくるのは、凪と同学年の焔。

「るっさいですよ皆さん。これ以上続けるんなら僕の箱庭に閉じ込めますよ…?」

 春なのに吹雪が吹き付けてきた。蒼の一言で、桜吹雪が冷たい雪になったようだ。それだけ、蒼がブレスレットに手をかけて冷徹に話す姿は恐ろしい。

「チッ…悪かったよ」

 凪は舌打ち混じりに焔を離した。
 
 一同が気を取り直したと同時に、辺りは夜の闇に包まれてきていた。



「へ~。麓さんは料理がお上手なんですね。見た目からして女子力高そうです」

「そうでもないよ」

 蒼に微笑みかけられてたじろぐ麓。ブルーシートの上では麓と寮長が用意したお重が広げられた。

 光と同様、麓に"タメでいい"と言った蒼。それ以来、敬語になりかけるとあの冷たい表情で見られるのだった。一応麓の方が年齢も学年も上だが、年下の彼がたまに発する威圧感は重い。だが基本はおとなしくて誠実で、冷静さの中に温厚さをにじませている性格だ。

「卵焼きおいしいですよ。甘くないのが僕の好みです」

「味覚も大人っぽいね。光君の方が幼くに見えるかも」

「よく言われます」

 そう言って2人は笑い合った。その隣で寮長がクーラーボックスを開け、何本か缶を取り出した。それに素早く反応したのは凪。

「おっ。寮長気が利くじゃねェか。酒ぇー」

「はいはいどうぞ」

「僕も下さい」

「いいですけど…呑みすぎてはいけませんよ、蒼様は」

「気を付けます」

 念入りに言ってから寮長は蒼に缶を渡した。麓がその様子をじっと見ていると、寮長が缶を差し出した。

「麓様もお呑みになりますか?いろいろ持って参りましたよ」

「私は大丈夫です。お酒は呑んだことないから怖いです…」

「その心持ち、大事です。精霊は酔うことは基本ありませんがたまに、ごくたまーに呑んで変わってしまう精霊がいますから」

 そう言って寮長は、缶を煽る精霊たちのことをチラッと見た。
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