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2章
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「ったくよぉ…。350年も留年してやがんのに委員長たぁどういうことなんだよ…。ざっけんじゃねぇぞコノヤロー!」
「テメーの方こそふざけんじゃねェよ!!」
「落ち着け凪ー!」
一方、宴会状態の残り組は、というと。
精霊のほとんどが酒に酔わない、の例外が暴言を吐きまくっているのだった────蒼が。
彼はチューハイが2缶以上入ると悪酔いし、普段のおとなしめの性格の裏に隠している毒を吐き出す。特に凪に対して。
「ぜってー俺の方が委員長に向いt…zzz~…」
「あ。寝ましたわ」
「やっと落ちたか…。凪も怒りを鎮めろよ」
「ホント腹立つわこのクソガキ…」
蒼に殴りかかろうとした凪は、苛立ちを抑えつつも不機嫌な顔で舌打ちをした。
「アルコールが入りすぎると別人ですわね」
「腹黒さヤバいな蒼は」
「それに比べて麓ちゃんは女の子として過ごすようになってからさらにいいコに見えるよね。可愛いしおしとやかだし」
「おい、何の話してんだ」
「おまけに賢いんだよな!あの娘が卒業したら俺の秘書に欲しいわ~」
「お二方。麓様は気もよく利くのですよ。このお弁当を用意している時だって、さっと調味料を用意して下さったり」
「うわ! それ聞くとますます燃えるわ」
「本気で狙おっかな…」
「今まで冗談だったのかよ」
安い愛を売りまくっている男たちを、凪は半眼で見る。だが彼らに悪びれた様子は皆無。
もしかしたらバカ共…(凪以外の)風紀委員で麓の取り合い的な争いがその内起きるかもしれない。
(下らねェ…勝手にやってやがれ)
凪はため息まじりに暗い空を見上げた。
「夜だけど意外とにぎやかなんですね」
「毎年こんな感じだな」
光は先へ先へと進み、麓と焔はゆっくりと歩いていく。全てが珍しいのか、いろんなものに見入っている麓の歩調に焔が合わせる。
夜でも屋台の熱気は下がらない。新たに多くなった会社帰りの者たちを呼び込むためだろう。
焔が少し目を離すと、麓はすぐに人影で見えなくなってしまう。彼女は女子の中では高身長な方だがさすがに男には勝てない。
焔の隣に戻ってきた麓は息をついた。規模は小さくても人ごみから抜け出すまで息詰まりしていたようだ。
焔は一度ためらったが、スッと右手を彼女に差し出した。
「焔さん?」
彼女が不思議そうに首を傾げたその仕草にドキッとしつつ、焔は思い切って口を開いた。
「手…つなごっか。人多いからさ…」
おまけになんとなく言い訳感のある言葉がついてきた。それよりも誘ったことに体温が上がってくる。炎の精霊であるだけに、燃えさかりそうだ。
麓から返事が来なくてドン引きされたか、と後悔し始めた時。
差し出した右手に、小さくて白い左手が重ねられた。
「お気遣い、ありがとうございます」
ひんやりとした麓の手の平は、熱くなりつつあった焔の手に心地よい温度を与えた。
それから手をつないで歩く姿は、さながら恋人のようだった。
だがその後、宴会組の元へ戻って集団リンチに遭ったことは言うまでもない。
「テメーの方こそふざけんじゃねェよ!!」
「落ち着け凪ー!」
一方、宴会状態の残り組は、というと。
精霊のほとんどが酒に酔わない、の例外が暴言を吐きまくっているのだった────蒼が。
彼はチューハイが2缶以上入ると悪酔いし、普段のおとなしめの性格の裏に隠している毒を吐き出す。特に凪に対して。
「ぜってー俺の方が委員長に向いt…zzz~…」
「あ。寝ましたわ」
「やっと落ちたか…。凪も怒りを鎮めろよ」
「ホント腹立つわこのクソガキ…」
蒼に殴りかかろうとした凪は、苛立ちを抑えつつも不機嫌な顔で舌打ちをした。
「アルコールが入りすぎると別人ですわね」
「腹黒さヤバいな蒼は」
「それに比べて麓ちゃんは女の子として過ごすようになってからさらにいいコに見えるよね。可愛いしおしとやかだし」
「おい、何の話してんだ」
「おまけに賢いんだよな!あの娘が卒業したら俺の秘書に欲しいわ~」
「お二方。麓様は気もよく利くのですよ。このお弁当を用意している時だって、さっと調味料を用意して下さったり」
「うわ! それ聞くとますます燃えるわ」
「本気で狙おっかな…」
「今まで冗談だったのかよ」
安い愛を売りまくっている男たちを、凪は半眼で見る。だが彼らに悪びれた様子は皆無。
もしかしたらバカ共…(凪以外の)風紀委員で麓の取り合い的な争いがその内起きるかもしれない。
(下らねェ…勝手にやってやがれ)
凪はため息まじりに暗い空を見上げた。
「夜だけど意外とにぎやかなんですね」
「毎年こんな感じだな」
光は先へ先へと進み、麓と焔はゆっくりと歩いていく。全てが珍しいのか、いろんなものに見入っている麓の歩調に焔が合わせる。
夜でも屋台の熱気は下がらない。新たに多くなった会社帰りの者たちを呼び込むためだろう。
焔が少し目を離すと、麓はすぐに人影で見えなくなってしまう。彼女は女子の中では高身長な方だがさすがに男には勝てない。
焔の隣に戻ってきた麓は息をついた。規模は小さくても人ごみから抜け出すまで息詰まりしていたようだ。
焔は一度ためらったが、スッと右手を彼女に差し出した。
「焔さん?」
彼女が不思議そうに首を傾げたその仕草にドキッとしつつ、焔は思い切って口を開いた。
「手…つなごっか。人多いからさ…」
おまけになんとなく言い訳感のある言葉がついてきた。それよりも誘ったことに体温が上がってくる。炎の精霊であるだけに、燃えさかりそうだ。
麓から返事が来なくてドン引きされたか、と後悔し始めた時。
差し出した右手に、小さくて白い左手が重ねられた。
「お気遣い、ありがとうございます」
ひんやりとした麓の手の平は、熱くなりつつあった焔の手に心地よい温度を与えた。
それから手をつないで歩く姿は、さながら恋人のようだった。
だがその後、宴会組の元へ戻って集団リンチに遭ったことは言うまでもない。
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