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3章
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「麓、おはよ!」
まだ聞き慣れてはいないが覚えた声がし、振り向くと紅髪の快活な娘────嵐がいた。
「おはようございます。嵐さん」
「ございますって…敬語じゃなくていいよ。歳は10しか変わらないんだから。光から聞いてたけどカタいよ~」
「じゃあ…おはよう」
「ん~それでよし!」
嵐は朝から元気に麓に話しかけ、明るい気持ちにしてくれた。
ここへ来たばかりだから、という気を遣っている素振りもない。心からの行為のようだ。
「そういえば光は?」
「まだです…じゃない、まだだよ。私が起きた時も寝てたみたい」
「ふーん。必ず一緒にいるワケじゃないんだ」
「どうして?」
「だって始業式から麓に付きっきりだったじゃん。他の女子たちがうらやましがってたよ。"いいな~あのコになりたい"って」
風紀委員の人気は囲まれるだけじゃない。女子同士でささやかれている。
その"いいな~"の対象になっている麓としては気まずい。注目されることに慣れていないから、毎日緊張気味だ。
「風紀委員ってすごいね…」
「全くだよ。たまに女子たちの醜い争いに発展することだってあるからね。恐ろしいモンだよ」
「嵐さんはそういうことは無いの?」
「あたし?」
嵐は自身を指して、それから豪快に笑った。
「ンなことあるワケないじゃん!あたしはそんなキャラじゃないのさ!」
「蔓系の植物の精霊、そのまま蔓」
「つるーにょだよ」
「降雨機の精霊、露」
「つゆにーだよ。で、赤い花の精霊、嵐はあーちゃん」
「さっきからうるさいわ光! やめてよねその恥ずかしいニックネーム」
「いーじゃん。可愛いでしょ? ね、ロクにゃん」
急に振られたロクにゃんこと麓は、苦笑いを返すことしかできない。光は風紀委員だけでなく、誰に対してもニックネーム呼びらしい。
あの後、光は遅刻ギリギリで教室に滑り込んできた。焔と一緒に寮から走ってきたので、光より校舎が遠い焔は遅刻しただろう、とのこと。
「ホムラっちはこれで留年がプラス一年になったね。ドンマ~イ」
光は完全に他人事として話していた。4月早々、焔は来年も11年生になること決定だ。
「こっちはそないな呼び方、頼んでへんで」
麓よりも濃い緑の髪を持った男子────蔓は富橋より南から来た。今では本場の者らしい話し方はできないそうだ。
「ニックネームは愛称。仲間意識を高めるのに最適」
機械のような無機質で答えた少女────露は、雨を降らす機械から生まれた。実は彼女も蒼と同じく"天"の精霊だ。
「よろしゅうな、麓」
「よろしく」
それぞれ挨拶をされ、麓はペコペコと頭を下げた。
「おっはよー。HR始めるよ~」
ガララと引き戸を開けながら教室に入ってきた扇を合図に、生徒たちは各々の席に着いた。
扇は教卓に予定帳を置き、生徒たちが座っていく様子を見守る。
「今日の連絡は…特に無いかな。ま、とりあえず。今日から授業が始まるから気を引き締めること! いつまでもダラダラと春休みボケしてるのはダメだからね。じゃあ以上。1時間目の数学は俺だから。準備、忘れずにね」
扇が最後に軽く片目をつむって教室を出ていくと、多くの女子は色めきたった。やはり扇は女子からの人気は尋常じゃない。
まだ聞き慣れてはいないが覚えた声がし、振り向くと紅髪の快活な娘────嵐がいた。
「おはようございます。嵐さん」
「ございますって…敬語じゃなくていいよ。歳は10しか変わらないんだから。光から聞いてたけどカタいよ~」
「じゃあ…おはよう」
「ん~それでよし!」
嵐は朝から元気に麓に話しかけ、明るい気持ちにしてくれた。
ここへ来たばかりだから、という気を遣っている素振りもない。心からの行為のようだ。
「そういえば光は?」
「まだです…じゃない、まだだよ。私が起きた時も寝てたみたい」
「ふーん。必ず一緒にいるワケじゃないんだ」
「どうして?」
「だって始業式から麓に付きっきりだったじゃん。他の女子たちがうらやましがってたよ。"いいな~あのコになりたい"って」
風紀委員の人気は囲まれるだけじゃない。女子同士でささやかれている。
その"いいな~"の対象になっている麓としては気まずい。注目されることに慣れていないから、毎日緊張気味だ。
「風紀委員ってすごいね…」
「全くだよ。たまに女子たちの醜い争いに発展することだってあるからね。恐ろしいモンだよ」
「嵐さんはそういうことは無いの?」
「あたし?」
嵐は自身を指して、それから豪快に笑った。
「ンなことあるワケないじゃん!あたしはそんなキャラじゃないのさ!」
「蔓系の植物の精霊、そのまま蔓」
「つるーにょだよ」
「降雨機の精霊、露」
「つゆにーだよ。で、赤い花の精霊、嵐はあーちゃん」
「さっきからうるさいわ光! やめてよねその恥ずかしいニックネーム」
「いーじゃん。可愛いでしょ? ね、ロクにゃん」
急に振られたロクにゃんこと麓は、苦笑いを返すことしかできない。光は風紀委員だけでなく、誰に対してもニックネーム呼びらしい。
あの後、光は遅刻ギリギリで教室に滑り込んできた。焔と一緒に寮から走ってきたので、光より校舎が遠い焔は遅刻しただろう、とのこと。
「ホムラっちはこれで留年がプラス一年になったね。ドンマ~イ」
光は完全に他人事として話していた。4月早々、焔は来年も11年生になること決定だ。
「こっちはそないな呼び方、頼んでへんで」
麓よりも濃い緑の髪を持った男子────蔓は富橋より南から来た。今では本場の者らしい話し方はできないそうだ。
「ニックネームは愛称。仲間意識を高めるのに最適」
機械のような無機質で答えた少女────露は、雨を降らす機械から生まれた。実は彼女も蒼と同じく"天"の精霊だ。
「よろしゅうな、麓」
「よろしく」
それぞれ挨拶をされ、麓はペコペコと頭を下げた。
「おっはよー。HR始めるよ~」
ガララと引き戸を開けながら教室に入ってきた扇を合図に、生徒たちは各々の席に着いた。
扇は教卓に予定帳を置き、生徒たちが座っていく様子を見守る。
「今日の連絡は…特に無いかな。ま、とりあえず。今日から授業が始まるから気を引き締めること! いつまでもダラダラと春休みボケしてるのはダメだからね。じゃあ以上。1時間目の数学は俺だから。準備、忘れずにね」
扇が最後に軽く片目をつむって教室を出ていくと、多くの女子は色めきたった。やはり扇は女子からの人気は尋常じゃない。
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