8 / 22
3章
1
しおりを挟む
「麓、おはよ!」
まだ聞き慣れてはいないが覚えた声がし、振り向くと紅髪の快活な娘────嵐がいた。
「おはようございます。嵐さん」
「ございますって…敬語じゃなくていいよ。歳は10しか変わらないんだから。光から聞いてたけどカタいよ~」
「じゃあ…おはよう」
「ん~それでよし!」
嵐は朝から元気に麓に話しかけ、明るい気持ちにしてくれた。
ここへ来たばかりだから、という気を遣っている素振りもない。心からの行為のようだ。
「そういえば光は?」
「まだです…じゃない、まだだよ。私が起きた時も寝てたみたい」
「ふーん。必ず一緒にいるワケじゃないんだ」
「どうして?」
「だって始業式から麓に付きっきりだったじゃん。他の女子たちがうらやましがってたよ。"いいな~あのコになりたい"って」
風紀委員の人気は囲まれるだけじゃない。女子同士でささやかれている。
その"いいな~"の対象になっている麓としては気まずい。注目されることに慣れていないから、毎日緊張気味だ。
「風紀委員ってすごいね…」
「全くだよ。たまに女子たちの醜い争いに発展することだってあるからね。恐ろしいモンだよ」
「嵐さんはそういうことは無いの?」
「あたし?」
嵐は自身を指して、それから豪快に笑った。
「ンなことあるワケないじゃん!あたしはそんなキャラじゃないのさ!」
「蔓系の植物の精霊、そのまま蔓」
「つるーにょだよ」
「降雨機の精霊、露」
「つゆにーだよ。で、赤い花の精霊、嵐はあーちゃん」
「さっきからうるさいわ光! やめてよねその恥ずかしいニックネーム」
「いーじゃん。可愛いでしょ? ね、ロクにゃん」
急に振られたロクにゃんこと麓は、苦笑いを返すことしかできない。光は風紀委員だけでなく、誰に対してもニックネーム呼びらしい。
あの後、光は遅刻ギリギリで教室に滑り込んできた。焔と一緒に寮から走ってきたので、光より校舎が遠い焔は遅刻しただろう、とのこと。
「ホムラっちはこれで留年がプラス一年になったね。ドンマ~イ」
光は完全に他人事として話していた。4月早々、焔は来年も11年生になること決定だ。
「こっちはそないな呼び方、頼んでへんで」
麓よりも濃い緑の髪を持った男子────蔓は富橋より南から来た。今では本場の者らしい話し方はできないそうだ。
「ニックネームは愛称。仲間意識を高めるのに最適」
機械のような無機質で答えた少女────露は、雨を降らす機械から生まれた。実は彼女も蒼と同じく"天"の精霊だ。
「よろしゅうな、麓」
「よろしく」
それぞれ挨拶をされ、麓はペコペコと頭を下げた。
「おっはよー。HR始めるよ~」
ガララと引き戸を開けながら教室に入ってきた扇を合図に、生徒たちは各々の席に着いた。
扇は教卓に予定帳を置き、生徒たちが座っていく様子を見守る。
「今日の連絡は…特に無いかな。ま、とりあえず。今日から授業が始まるから気を引き締めること! いつまでもダラダラと春休みボケしてるのはダメだからね。じゃあ以上。1時間目の数学は俺だから。準備、忘れずにね」
扇が最後に軽く片目をつむって教室を出ていくと、多くの女子は色めきたった。やはり扇は女子からの人気は尋常じゃない。
まだ聞き慣れてはいないが覚えた声がし、振り向くと紅髪の快活な娘────嵐がいた。
「おはようございます。嵐さん」
「ございますって…敬語じゃなくていいよ。歳は10しか変わらないんだから。光から聞いてたけどカタいよ~」
「じゃあ…おはよう」
「ん~それでよし!」
嵐は朝から元気に麓に話しかけ、明るい気持ちにしてくれた。
ここへ来たばかりだから、という気を遣っている素振りもない。心からの行為のようだ。
「そういえば光は?」
「まだです…じゃない、まだだよ。私が起きた時も寝てたみたい」
「ふーん。必ず一緒にいるワケじゃないんだ」
「どうして?」
「だって始業式から麓に付きっきりだったじゃん。他の女子たちがうらやましがってたよ。"いいな~あのコになりたい"って」
風紀委員の人気は囲まれるだけじゃない。女子同士でささやかれている。
その"いいな~"の対象になっている麓としては気まずい。注目されることに慣れていないから、毎日緊張気味だ。
「風紀委員ってすごいね…」
「全くだよ。たまに女子たちの醜い争いに発展することだってあるからね。恐ろしいモンだよ」
「嵐さんはそういうことは無いの?」
「あたし?」
嵐は自身を指して、それから豪快に笑った。
「ンなことあるワケないじゃん!あたしはそんなキャラじゃないのさ!」
「蔓系の植物の精霊、そのまま蔓」
「つるーにょだよ」
「降雨機の精霊、露」
「つゆにーだよ。で、赤い花の精霊、嵐はあーちゃん」
「さっきからうるさいわ光! やめてよねその恥ずかしいニックネーム」
「いーじゃん。可愛いでしょ? ね、ロクにゃん」
急に振られたロクにゃんこと麓は、苦笑いを返すことしかできない。光は風紀委員だけでなく、誰に対してもニックネーム呼びらしい。
あの後、光は遅刻ギリギリで教室に滑り込んできた。焔と一緒に寮から走ってきたので、光より校舎が遠い焔は遅刻しただろう、とのこと。
「ホムラっちはこれで留年がプラス一年になったね。ドンマ~イ」
光は完全に他人事として話していた。4月早々、焔は来年も11年生になること決定だ。
「こっちはそないな呼び方、頼んでへんで」
麓よりも濃い緑の髪を持った男子────蔓は富橋より南から来た。今では本場の者らしい話し方はできないそうだ。
「ニックネームは愛称。仲間意識を高めるのに最適」
機械のような無機質で答えた少女────露は、雨を降らす機械から生まれた。実は彼女も蒼と同じく"天"の精霊だ。
「よろしゅうな、麓」
「よろしく」
それぞれ挨拶をされ、麓はペコペコと頭を下げた。
「おっはよー。HR始めるよ~」
ガララと引き戸を開けながら教室に入ってきた扇を合図に、生徒たちは各々の席に着いた。
扇は教卓に予定帳を置き、生徒たちが座っていく様子を見守る。
「今日の連絡は…特に無いかな。ま、とりあえず。今日から授業が始まるから気を引き締めること! いつまでもダラダラと春休みボケしてるのはダメだからね。じゃあ以上。1時間目の数学は俺だから。準備、忘れずにね」
扇が最後に軽く片目をつむって教室を出ていくと、多くの女子は色めきたった。やはり扇は女子からの人気は尋常じゃない。
0
あなたにおすすめの小説
【続編】ダイヤの指輪─先生と私の歩む未来─
七転び八起き
恋愛
◇こちらの作品は以下の作品の続編です。
「ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─」https://www.alphapolis.co.jp/novel/306629704/557024090
◇あらすじ
主人公の水島白乃(みずしましの)と、婚約者の夏雄先生のその後の物語です。
まだちゃんとした夫婦になってない二人はどうなるのか。
そして、先生の従弟の遼が出会った不思議な女の子、篠山あやめ。彼女は遼にどう影響を与えるのか。
それぞれの未来が動き出す。
◇前作のあらすじ◇
主人公の水島白乃(みずしましの)は、高校三年生の時の担任の夏雄先生に恋をした。
卒業して再会した夏雄は別人のようだった。
夏雄の歪んだ愛、執着に翻弄される中、白乃はさらに夏雄に惹かれいく。
様々な困難を乗り越え、二人は結ばれた。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜
氷萌
恋愛
30歳を迎えた私は彼氏もいない地味なOL。
そんな私が、突然、人気モデルに?
陰気な私が光り輝く外の世界に飛び出す
シンデレラ・ストーリー
恋もオシャレも興味なし:日陰女子
綺咲 由凪《きさき ゆいな》
30歳:独身
ハイスペックモデル:太陽男子
鳴瀬 然《なるせ ぜん》
26歳:イケてるメンズ
甘く優しい年下の彼。
仕事も恋愛もハイスペック。
けれど実は
甘いのは仕事だけで――――
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる