Eternal Dear2

堂宮ツキ乃

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6章

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「…凪さん。今日は遠慮なく行かせてもらいますから」

「…フン」

 一方、グランドでは。

 男子のサッカーも3回戦を迎えていた。試合は2年VS11年。風紀委員の最年少と最年長の対決でもある。

 そのためかコートの周りには、試合を終えたり出番ではないたくさんの女子が群れていた。

 凪がシュートを決めても蒼がドリブルで相手を抜いても、黄色い声が上がる。

 今回、焔は控え選手。そして彰はこの場にいない。

 そういえば、と焔が考えると彰が学校行事に参加しているのを見たことがほとんどない。

(いない人のことはいっか…。それよりどっちが勝つかだよな。蒼が暴言を吐いて凪さんがブチギレてレッドカードってのは避けて欲しいわ)

 焔の心配は必要なかった。

 試合が始まると2人共ボールの奪い合いの時にぶつかるだけで、それ以外は関わっていない。

 そんでもって今、2人がボールで小競り合いしている。

 蒼がドリブルしてきた所を凪が止めに来るが、蒼のテクニックも負けていない。器用に凪の足を避けている。

「お先!」

 蒼がドヤ顔で凪を交わす。

 だが凪がボールを捕り損ねたままで放ってとけわけがない。

「そのままシュートできると思うなよガキがァ!」

 凪は走り去ろうとする蒼に向かって、殺気を含んだ速さで追いつきスライディング。

 蒼からボールをかっさらって立ち上がり、悔しがってむくれている蒼に凪はドヤ顔返し。

「一丁前に俺に勝てると思うなよ」

 その言葉が観客に聞こえたがどうか、女子たちは湧き上がる。

 黄色い声を上げられても気に止めることなく、凪はシュートを決めた。



 クラスマッチに盛り上がる生徒がいれば、他のことで盛り上がる教師もいるのだった。

「…よっし行こうか扇」

「おうよ」

 いつものスーツではなくジャージ姿の教師コンビ、霞と扇。2人の手にはスマホ。

 昨晩、扇の部屋で秘密裏に話し合っていた。

 普段はできないが、クラスマッチという学校行事でならできることをしようと────

 そこで2人が同時に思い着いたのが、麓の様々な姿をスマホに収めよう、というもの。

 でもって今は昼休み。すでに午前中にこっそりと試合中の麓を撮影済みだ。

「ここらへんならいんじゃね?」

「そうしようか。見つかりにくいだろうし」

 彼らが選んだのはツツジが生えている場所。長身の2人がかがむにはかなりキツい低さだが、麓のためなら…と耐える。

 そしてさっそく、ツツジの枝のすき間から麓を探した。

「おっ。いたいた」

「どこよ?」

「右斜め向こう。クラスメイトといる」

 霞が瞬時に麓の姿をとらえ、2人はカメラを起動させてスマホを構えた────

「何してんだてめーら」

「うおわっ!?」

 突然の声に大げさな程飛び上がる。

「な、凪! なんでここにいんの?」

「偶然通りかかった。そしたらおめーらがいた…。今、明らかに盗撮してたよな?」

 凪は首にタオルをかけ、2人に蔑んだ視線を送っている。

「ン…なワケ!?」

「あるだろ。おめーらの行動は読めるんだよ。見せろやそれ」

「あぁっ!!」

 大事に両手で握りしめていたスマホは凪にあっさりと取られてしまう。彼は手慣れた様子で左右同時に画面をスライドさせ、カメラロールを眺める。

「ほーらなやっぱり。おめーらアイツに許可取ってんのか? 肖像権の侵害だからな。消すぞ」

「「あぁ…麓ちゃん…」」

 2人の悲痛な声をシカトして凪は非情にサクサクと削除していく。それが終わるとスマホを2人に向かって放った。

「ったくどんだけ執着してんだよ…立派なストーカーじゃねェか」

「誰がストーカーだ! 俺はな、というか俺たちはな、日に日に麓ちゃんへの愛おしさが増してくんの! 美し過ぎるわけでもなく普通過ぎるわけでもなく…そう! 白米のような!」

「下らねェこと語ってねェで見回りしろ教師共。そのうちクビだぞクビ」

「「はーい…」」

 2人の悲し気な返事と共に、麓の瞳と同じ色をしたツツジが1輪、はらりと散った。
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