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1章
6
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カルラとおしゃべりを楽しんでいたが、流石に毘沙門天と阿修羅を待たせ過ぎていると気付いて夜叉はお暇することにした。
久しぶりに同じ戯人族の、しかも朱雀族の女性と話せて楽しかった。
カルラの話し方はさまざまな方言が混ざっていて可愛い。しかも話題が豊富で尽きない。おまけに聞き上手な面もあり、夜叉もついつい話し過ぎてしまった。
「阿修羅たちには会わないんですか?」
「うん。今はね」
夜叉を見送ると言ってカルラは入り口の鳥居の外まで共に出てきた。
聞けば今の彼女は最低限の荷物で放浪生活をしており、時々こうして神社の関係者の元に居候しているらしい。今はここの神社の神主であるおばあさんの家に滞在する代わりに、神社の掃除や御朱印授与をしている。
「巫女さんみたいな感じですか?」
「うーうん、全然。ただのバイトだよ。私は巫女の気質なんて持っとらんから」
「巫女の気質…」
「戯人族の始祖は巫女だったっていうけどね。私は純血の戯人族じゃないからその人の血を引いてないんよ」
「へ~」
彼女もまた、元は人間や精霊でスカウトされて転生したのだろう。
自分もある意味純血ではないんだよな、と夜叉はそばを飛んでいった鳥を目で追った。カルラはそんな彼女と視線を合わせるように首を傾げて顔をのぞき込んだ。
「君の場合は他人事じゃないやろう?」
「え、なんでですか?」
「あ…まぁその内分かるんじゃないかな」
「はぁ…」
カルラの言うことはよく分からなかったがまぁいい。彼女の言うとおりその内分かるのなら。
もうそろそろ行かなきゃ、と夜叉は最後にずっと気になっていたことを口にした。
「あのっ、ここに巫女さんがいますよね。紫の髪と目を持った綺麗な巫女さん。この神社に入った時に話しかけられたんですけどどっかに行っちゃったみたいで」
彼女の話を聞きながらカルラは訝しげな表情になっていったが一つうなずいた。その顔に話づらくなったが構わず続けた。
「その人が帰ってきたらありがとうって伝えて欲しいです。名前を褒めてくれたので…。本当はちゃんと自分で言いたいんですけど」
うんうん、とカルラはうなずいたが言いづらそうに視線をそらして鼻をかいた。
「悪いんだけど夜叉」
彼女は困ったような小さな笑顔で後ろ手で頭をかいた。
「ここには巫女なんていないよ」
カルラの言葉に一瞬固まる。彼女は何を言っているんだろう。彼女もまた夜叉が何を言っているんだ、と言いたげな表情をしている。
あの巫女がいないはずはない。短い間だったが言葉を交わし、あの清廉な声だってまだ耳が覚えている。
またカルラを困らせてしまうことになりそうだが、夜叉は階段を上を指さして必死に説明した。
「確かにここに入った時に話かけられました。階段の上の木にもたれていたんですよ。赤と白の巫女服を着て紫の髪と目の綺麗な女の人でした。ここに何年も居候してるって本人も言ってました」
「う~ん…。それはもしかしてさっきの落武者パターンやない?」
「落武者パターン?」
「うん。ここに住み着いている巫女の霊だったんやないかねぇ。神社だしあながち無くはない気がする」
「そうなんですかねぇ…」
やたらめったら幽霊を怖がるもんじゃないと阿修羅に悟られたばかりだが背筋に霜ができてきた気がする。やはり怖いものは怖い。慣れるまで時間と努力が必要そうだ。
カルラとはもうお別れなのと不思議な巫女がこの世の人では無いかもしれないと知って残念な気持ちを抱えながら夜叉は小さな神社を後にした。
久しぶりに同じ戯人族の、しかも朱雀族の女性と話せて楽しかった。
カルラの話し方はさまざまな方言が混ざっていて可愛い。しかも話題が豊富で尽きない。おまけに聞き上手な面もあり、夜叉もついつい話し過ぎてしまった。
「阿修羅たちには会わないんですか?」
「うん。今はね」
夜叉を見送ると言ってカルラは入り口の鳥居の外まで共に出てきた。
聞けば今の彼女は最低限の荷物で放浪生活をしており、時々こうして神社の関係者の元に居候しているらしい。今はここの神社の神主であるおばあさんの家に滞在する代わりに、神社の掃除や御朱印授与をしている。
「巫女さんみたいな感じですか?」
「うーうん、全然。ただのバイトだよ。私は巫女の気質なんて持っとらんから」
「巫女の気質…」
「戯人族の始祖は巫女だったっていうけどね。私は純血の戯人族じゃないからその人の血を引いてないんよ」
「へ~」
彼女もまた、元は人間や精霊でスカウトされて転生したのだろう。
自分もある意味純血ではないんだよな、と夜叉はそばを飛んでいった鳥を目で追った。カルラはそんな彼女と視線を合わせるように首を傾げて顔をのぞき込んだ。
「君の場合は他人事じゃないやろう?」
「え、なんでですか?」
「あ…まぁその内分かるんじゃないかな」
「はぁ…」
カルラの言うことはよく分からなかったがまぁいい。彼女の言うとおりその内分かるのなら。
もうそろそろ行かなきゃ、と夜叉は最後にずっと気になっていたことを口にした。
「あのっ、ここに巫女さんがいますよね。紫の髪と目を持った綺麗な巫女さん。この神社に入った時に話しかけられたんですけどどっかに行っちゃったみたいで」
彼女の話を聞きながらカルラは訝しげな表情になっていったが一つうなずいた。その顔に話づらくなったが構わず続けた。
「その人が帰ってきたらありがとうって伝えて欲しいです。名前を褒めてくれたので…。本当はちゃんと自分で言いたいんですけど」
うんうん、とカルラはうなずいたが言いづらそうに視線をそらして鼻をかいた。
「悪いんだけど夜叉」
彼女は困ったような小さな笑顔で後ろ手で頭をかいた。
「ここには巫女なんていないよ」
カルラの言葉に一瞬固まる。彼女は何を言っているんだろう。彼女もまた夜叉が何を言っているんだ、と言いたげな表情をしている。
あの巫女がいないはずはない。短い間だったが言葉を交わし、あの清廉な声だってまだ耳が覚えている。
またカルラを困らせてしまうことになりそうだが、夜叉は階段を上を指さして必死に説明した。
「確かにここに入った時に話かけられました。階段の上の木にもたれていたんですよ。赤と白の巫女服を着て紫の髪と目の綺麗な女の人でした。ここに何年も居候してるって本人も言ってました」
「う~ん…。それはもしかしてさっきの落武者パターンやない?」
「落武者パターン?」
「うん。ここに住み着いている巫女の霊だったんやないかねぇ。神社だしあながち無くはない気がする」
「そうなんですかねぇ…」
やたらめったら幽霊を怖がるもんじゃないと阿修羅に悟られたばかりだが背筋に霜ができてきた気がする。やはり怖いものは怖い。慣れるまで時間と努力が必要そうだ。
カルラとはもうお別れなのと不思議な巫女がこの世の人では無いかもしれないと知って残念な気持ちを抱えながら夜叉は小さな神社を後にした。
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