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1章
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(う~…さむさむ…)
「おはよう、さくら」
リビングに入ると、弟の和馬がエプロン姿でフライパンを持っていた。食事を用意するのは彼の担当。
「おはよ…」
さくらと呼ばれた────桜木夜叉は、和馬と同じ高校に通う高校1年生。同じ歳だが、双子ではない。
すでに朝食は用意されており、彼女はテーブルの中央にあるジャムの瓶を手に取った。
「今度また、母さんと父さんが遊びにくるって」
「ホントに子どもラブね。もう私たちそんな小さくないのに」
「まぁまぁ…高校生で家を出るのも早いからね…とか?」
にへら、と笑った和馬の顔は両親にそっくりだ。
ワケあって桜木一家に引き取られた、という形でお世話になっている夜叉は、家族からは愛称として"さくら"と呼ばれている。
濃ゆい桜色の髪に由来したそれは、本人はあまり似合わない…と遠慮気味だ。
藍栄高校。夜叉たちが通う、私立でなかなか大きい共学。2人は大体毎朝一緒に登校する。
「やーちゃんおっはよー!」
「おはよー」
彦瀬と瑞恵は夜叉と同じクラスで、3人は入学した時から大抵一緒にいる。
「彦瀬とみーちゃん、マフラーモフモフだね」
「もー! やーちゃん彦瀬のことも"凛子ちゃん"って呼んでよ!」
「え~…。彦瀬は凛子ちゃんって顔じゃないでしょ。ね?」
「うん。中学の時からずっと呼ばれないね」
2人は電車登校で、毎朝この時間に会うことが多い。
女子が増えた所で和馬はお先に行こうとしたが、2人に絡まれる。
「和馬! やーちゃんにお家帰ったら言っておいてね」
「え?」
「凛子ちゃんって呼んでって!」
「はいはいもう分かったから彦瀬。明日からはきっと呼ぶよ彦瀬」
「ダメじゃん! しつこく彦瀬って呼んでるじゃん!」
「彦瀬、朝からキャンキャンうるさいよ」
瑞恵に額をはたかれた彦瀬は小さくなった。
いつもテンション高めな彼女をおさえるのは瑞恵の仕事になっている。
「ぐぬぬ…やーちゃんぐぬぬ…」
「ていうか彦ちゃん…。自分のこと言う前に俺の名前の呼び方どうなの…。なんでおれだけ思っくそ呼び捨て…」
1人、やたら飛び抜けて身長が高い和馬は、トホホと言わんばかりに自分のことを指さして嘆いた。
「いいじゃない、和馬は親しみやすいキャラってことで」
「ねぇそれいじられキャラの間違いとかじゃない? ん? さくら?」
同じ頃。校内では。
「ねぇ鹿島っち大変!」
「何よ香取」
「1組のピンクの髪のコ知ってる? なんかやたら名前が強そうな…眼帯してる人」
「えーと…さくらぎやしゃさん?」
「確かそんな感じ。でね! 昨日の晩にバイト帰りで自転車で走っていたら、急に目の前を横切ったのがその人なの!」
「はぁ…?」
夜叉たちとは違うクラスの男女2人。"鹿島っち"と呼ばれた男子は自分の席に座っており、"香取"と呼ばれた女子は彼の席の前で興奮気味に語っている。
「自転車でってこと?」
「そんな危険なワケないでしょー。違うの、ものすごいクオリティ高いコスプレしてたの!」
「コスプレ…! まさか彼女は隠れオタ…!?」
「やっぱそう思うよね!? 眼帯してるしさ、名前もすごいし絶対オタだよ!」
「言ってもそんな雰囲気はなかったような…。隠すのがうまい?」
「まぁそんなごちゃごちゃした推察はいいって! あー話してみたいな…。美人と話して癒されたい…」
「それどっちかと言うと俺のセリフなのではオブなのでは」
昼休み。和馬の作ったお弁当を食べながら、夜叉は彦瀬と瑞恵と談笑していた。
彦瀬の愛犬"りゅうちゃん"の話で盛り上がっていると、瑞恵が廊下を見てキョトンとした。
「…ねぇねぇやーちゃん、もしかしてあのコたち────」
「どしたの?」
夜叉も廊下を見ると、黒髪の男女2人がこちらを見ており、女子の方はうれしそうに小さく"キャー!"と言いながら走り去り、男子の方は"やれやれ"と言うように後を追った。その後に教師が注意する声が飛んできた。
「なんか…彦瀬みたいだったね」
「え? 彦瀬みたいに可愛い!?」
「いや、あんな感じで走ったとこ」
「それとなく否定しないでやーちゃん…」
彦瀬は泣きながら弁当のミートボールをつまんだ。
「今の2人、やーちゃんのことを見てたよ」
「そうなの? 知らない人たちだし…気のせいだよ」
「でもやーちゃんが振り向いた時に走り去ったよ。なんでだろ…」
「やーちゃんのファンだよ! やーちゃん美人だしおっぱい大きいし!」
「大きい声でそういうこと言うんじゃないの!」
夜叉はムッとしてご飯をパクパクと食べ進めた。今日は細かく刻んだ漬け物が混ぜ込んである。朝から凝る和馬は完全に主夫だ。
「彦瀬はうらやましいよ、やーちゃんの胸様」
「彦瀬はお胸小さいからね。まな板だからね」
「瑞恵ー!」
「分けられるモンなら分けたいよ」
「おはよう、さくら」
リビングに入ると、弟の和馬がエプロン姿でフライパンを持っていた。食事を用意するのは彼の担当。
「おはよ…」
さくらと呼ばれた────桜木夜叉は、和馬と同じ高校に通う高校1年生。同じ歳だが、双子ではない。
すでに朝食は用意されており、彼女はテーブルの中央にあるジャムの瓶を手に取った。
「今度また、母さんと父さんが遊びにくるって」
「ホントに子どもラブね。もう私たちそんな小さくないのに」
「まぁまぁ…高校生で家を出るのも早いからね…とか?」
にへら、と笑った和馬の顔は両親にそっくりだ。
ワケあって桜木一家に引き取られた、という形でお世話になっている夜叉は、家族からは愛称として"さくら"と呼ばれている。
濃ゆい桜色の髪に由来したそれは、本人はあまり似合わない…と遠慮気味だ。
藍栄高校。夜叉たちが通う、私立でなかなか大きい共学。2人は大体毎朝一緒に登校する。
「やーちゃんおっはよー!」
「おはよー」
彦瀬と瑞恵は夜叉と同じクラスで、3人は入学した時から大抵一緒にいる。
「彦瀬とみーちゃん、マフラーモフモフだね」
「もー! やーちゃん彦瀬のことも"凛子ちゃん"って呼んでよ!」
「え~…。彦瀬は凛子ちゃんって顔じゃないでしょ。ね?」
「うん。中学の時からずっと呼ばれないね」
2人は電車登校で、毎朝この時間に会うことが多い。
女子が増えた所で和馬はお先に行こうとしたが、2人に絡まれる。
「和馬! やーちゃんにお家帰ったら言っておいてね」
「え?」
「凛子ちゃんって呼んでって!」
「はいはいもう分かったから彦瀬。明日からはきっと呼ぶよ彦瀬」
「ダメじゃん! しつこく彦瀬って呼んでるじゃん!」
「彦瀬、朝からキャンキャンうるさいよ」
瑞恵に額をはたかれた彦瀬は小さくなった。
いつもテンション高めな彼女をおさえるのは瑞恵の仕事になっている。
「ぐぬぬ…やーちゃんぐぬぬ…」
「ていうか彦ちゃん…。自分のこと言う前に俺の名前の呼び方どうなの…。なんでおれだけ思っくそ呼び捨て…」
1人、やたら飛び抜けて身長が高い和馬は、トホホと言わんばかりに自分のことを指さして嘆いた。
「いいじゃない、和馬は親しみやすいキャラってことで」
「ねぇそれいじられキャラの間違いとかじゃない? ん? さくら?」
同じ頃。校内では。
「ねぇ鹿島っち大変!」
「何よ香取」
「1組のピンクの髪のコ知ってる? なんかやたら名前が強そうな…眼帯してる人」
「えーと…さくらぎやしゃさん?」
「確かそんな感じ。でね! 昨日の晩にバイト帰りで自転車で走っていたら、急に目の前を横切ったのがその人なの!」
「はぁ…?」
夜叉たちとは違うクラスの男女2人。"鹿島っち"と呼ばれた男子は自分の席に座っており、"香取"と呼ばれた女子は彼の席の前で興奮気味に語っている。
「自転車でってこと?」
「そんな危険なワケないでしょー。違うの、ものすごいクオリティ高いコスプレしてたの!」
「コスプレ…! まさか彼女は隠れオタ…!?」
「やっぱそう思うよね!? 眼帯してるしさ、名前もすごいし絶対オタだよ!」
「言ってもそんな雰囲気はなかったような…。隠すのがうまい?」
「まぁそんなごちゃごちゃした推察はいいって! あー話してみたいな…。美人と話して癒されたい…」
「それどっちかと言うと俺のセリフなのではオブなのでは」
昼休み。和馬の作ったお弁当を食べながら、夜叉は彦瀬と瑞恵と談笑していた。
彦瀬の愛犬"りゅうちゃん"の話で盛り上がっていると、瑞恵が廊下を見てキョトンとした。
「…ねぇねぇやーちゃん、もしかしてあのコたち────」
「どしたの?」
夜叉も廊下を見ると、黒髪の男女2人がこちらを見ており、女子の方はうれしそうに小さく"キャー!"と言いながら走り去り、男子の方は"やれやれ"と言うように後を追った。その後に教師が注意する声が飛んできた。
「なんか…彦瀬みたいだったね」
「え? 彦瀬みたいに可愛い!?」
「いや、あんな感じで走ったとこ」
「それとなく否定しないでやーちゃん…」
彦瀬は泣きながら弁当のミートボールをつまんだ。
「今の2人、やーちゃんのことを見てたよ」
「そうなの? 知らない人たちだし…気のせいだよ」
「でもやーちゃんが振り向いた時に走り去ったよ。なんでだろ…」
「やーちゃんのファンだよ! やーちゃん美人だしおっぱい大きいし!」
「大きい声でそういうこと言うんじゃないの!」
夜叉はムッとしてご飯をパクパクと食べ進めた。今日は細かく刻んだ漬け物が混ぜ込んである。朝から凝る和馬は完全に主夫だ。
「彦瀬はうらやましいよ、やーちゃんの胸様」
「彦瀬はお胸小さいからね。まな板だからね」
「瑞恵ー!」
「分けられるモンなら分けたいよ」
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