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1章
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よくよく考えたら、和馬や同じクラスメイトとは一緒に帰ることはあったが、別のクラスの人と帰るのは初めてだった。
「三大美人ってどうやって選ばれるの?」
「私も知らん。入学式で突然言われたんだ。逆にこっちが聞きたいよ」
「へ~…」
高校近くの公園に入った。ここは近道だ。ランニングしている人や、はきはきと歩くお年寄りがいる。
冬で寒いというのに元気なことで。夜叉はコートの襟もとを寄せ、マフラーを巻き直した。だが、防御できない顔面への北風が冷たい。
隣の結城を見ると、彼女は特に防寒はしていない。むしろ足は短いスパッツだ。靴下が特別長いということもない。
「織原さん…それ寒くないの?」
「あぁ、全く」
「確か夏もそのお召し物だったのでは…」
「もちろん。あ、くたびれることはないぞ。ちゃんと洗い替えもある。むしろ、生地が夏用になっているんだ」
「すごいなそれ用意した手芸部…」
制服のことや三大美人の謎。知りたいことは話し始めると尽きなかった。
「ていうか喧嘩屋? なんでなの? 今日○ら俺はリスペクト?」
「…いやそういうワケでは」
「あ…そう? てっきり相方組んでそんじゃそこらの不良をぶっ飛ばすのかと」
「桜木さんドラマの影響受けてるな…」
結城はあきれ顔で金髪をさわった。
そもそも相方なんて組む気ないし、と彼女はつぶやいた。
夜叉は公園の一番開けた所で立ち止まり、木々を見上げた。確かあの動画でそっくりさんが現れたのはこの辺りだったな…と、葉が全て落ちた木を枝から根本まで見下ろした。
「なっ…! チッ」
隣で結城が舌打ちして構えた。本業モードに突然入った彼女に、夜叉はあたふたと戸惑った。
「お…織原さん?」
「桜木さん…今日はここまでだ、早く帰れ」
命令口調になった彼女と同じ方向を見ると、明らかに全うな生徒ではない連中が6人、連れ立っていた。まるでドラマのようにガラの悪い歩き方だ…と、おふざけ気味な感想を抱いた。
「この前はどうも、結城さんよ」
「何しに来た」
リーダー格の茶髪で派手な髪型をした男は、自分だけ一歩踏み出した。守られるように後ろに控えるタイプではないらしい。
「そりゃ決まってんだろ、この前のお礼参りだ。楽しい俺らの喧嘩に野暮が入ったのも惜しくてよォ…。ていうか今日はいるじゃねぇか。普通の格好をしてっけど」
他校の不良たちが一斉に夜叉のことをにらんだ。そんなにあごを上げんでも…と、また場違いな感想を抱く。
「…彼女は関係ない。あの時と別人だ」
「ふーん…。でもいいや、美人だし連れてくかな…。てめーんとこの三大美人か」
「あ、それなら違いますよ。私はカスリもしてないんで」
「桜木さん!?」
多くの不良を前にしながら、夜叉は恐れることなく頭をかいてヘラヘラしていた。それには不良たちも呆気にとられたようで。リーダーの男は首の骨をバキッと鳴らし、肩を回し始めた。
「…ますます気に入った。これくらい度胸のある女じゃねーと見合わないからな」
「てめぇ…」
「織原さん」
夜叉は結城の肩に手を置き、にっこりと笑った。
「大丈夫、私もいるし。簡単にやられないよ」
「それは私だけだ! あんたは喧嘩なんてしたことないだろう!」
「甘いね、バカデカい弟がいんのよ? 小さい頃、生意気言った時はシメていたんだから。保育園でもいじめっ子を撃退していたし。親には怒られたけどね」
語りながら夜叉は制服の袖ボタンをはずし、寒さに構わず腕まくりをした。コートもマフラーも取って。さっきまで寒がっていたとは思えない姿に、結城は何も言えなくなった。
「いいねぇ…。強い女は好きだ」
「…まずはあんたからだ」
夜叉は軽い助走をつけてリーダーに突っ込み、腹部にパンチをくらわせた。その勢いにしては見合わない飛距離で彼は後方へ吹っ飛び、仲間を何人か巻き込んで倒れた。うめき声をあげる彼は、ガードする余裕がなかった。
彼女はその様子に表情を変えることなく、手をクイクイッと動かした。
「さぁ、頭はやった。次は誰だ?」
その様子に仲間は互いに目を合わせ、一斉に夜叉に飛び交った。
「一応女相手だって言うのに…」
ボソッとつぶやいた彼女は手首をコキッと鳴らし、今度は助走なしで後方へはねて男たちをよけた。その距離は、結城からさらに3mほど後ろで。
「なんだこの人は…」
結城は思わず構えをとき、夜叉の戦う様子に目を見開いて硬直した。
正直、こんな強いというか人間離れした喧嘩は見たことがない。まさに圧倒的で。
(この前助けてくれた人と動きが似ている…)
あの時の彼女も、跳躍力を活かして不良たちをたった1人で翻弄していた。
夜叉はそれほどではないが、あっという間に男たちをのしてしまった。結城ですらこんなに短時間でカタはつかない。
「織原さん、大丈夫?」
手をはたきながら振り返った夜叉は、かすり傷はおろか制服を乱すことなく戦い終えたらしい。
結城はしばらく、まともに返事ができなかった。
「三大美人ってどうやって選ばれるの?」
「私も知らん。入学式で突然言われたんだ。逆にこっちが聞きたいよ」
「へ~…」
高校近くの公園に入った。ここは近道だ。ランニングしている人や、はきはきと歩くお年寄りがいる。
冬で寒いというのに元気なことで。夜叉はコートの襟もとを寄せ、マフラーを巻き直した。だが、防御できない顔面への北風が冷たい。
隣の結城を見ると、彼女は特に防寒はしていない。むしろ足は短いスパッツだ。靴下が特別長いということもない。
「織原さん…それ寒くないの?」
「あぁ、全く」
「確か夏もそのお召し物だったのでは…」
「もちろん。あ、くたびれることはないぞ。ちゃんと洗い替えもある。むしろ、生地が夏用になっているんだ」
「すごいなそれ用意した手芸部…」
制服のことや三大美人の謎。知りたいことは話し始めると尽きなかった。
「ていうか喧嘩屋? なんでなの? 今日○ら俺はリスペクト?」
「…いやそういうワケでは」
「あ…そう? てっきり相方組んでそんじゃそこらの不良をぶっ飛ばすのかと」
「桜木さんドラマの影響受けてるな…」
結城はあきれ顔で金髪をさわった。
そもそも相方なんて組む気ないし、と彼女はつぶやいた。
夜叉は公園の一番開けた所で立ち止まり、木々を見上げた。確かあの動画でそっくりさんが現れたのはこの辺りだったな…と、葉が全て落ちた木を枝から根本まで見下ろした。
「なっ…! チッ」
隣で結城が舌打ちして構えた。本業モードに突然入った彼女に、夜叉はあたふたと戸惑った。
「お…織原さん?」
「桜木さん…今日はここまでだ、早く帰れ」
命令口調になった彼女と同じ方向を見ると、明らかに全うな生徒ではない連中が6人、連れ立っていた。まるでドラマのようにガラの悪い歩き方だ…と、おふざけ気味な感想を抱いた。
「この前はどうも、結城さんよ」
「何しに来た」
リーダー格の茶髪で派手な髪型をした男は、自分だけ一歩踏み出した。守られるように後ろに控えるタイプではないらしい。
「そりゃ決まってんだろ、この前のお礼参りだ。楽しい俺らの喧嘩に野暮が入ったのも惜しくてよォ…。ていうか今日はいるじゃねぇか。普通の格好をしてっけど」
他校の不良たちが一斉に夜叉のことをにらんだ。そんなにあごを上げんでも…と、また場違いな感想を抱く。
「…彼女は関係ない。あの時と別人だ」
「ふーん…。でもいいや、美人だし連れてくかな…。てめーんとこの三大美人か」
「あ、それなら違いますよ。私はカスリもしてないんで」
「桜木さん!?」
多くの不良を前にしながら、夜叉は恐れることなく頭をかいてヘラヘラしていた。それには不良たちも呆気にとられたようで。リーダーの男は首の骨をバキッと鳴らし、肩を回し始めた。
「…ますます気に入った。これくらい度胸のある女じゃねーと見合わないからな」
「てめぇ…」
「織原さん」
夜叉は結城の肩に手を置き、にっこりと笑った。
「大丈夫、私もいるし。簡単にやられないよ」
「それは私だけだ! あんたは喧嘩なんてしたことないだろう!」
「甘いね、バカデカい弟がいんのよ? 小さい頃、生意気言った時はシメていたんだから。保育園でもいじめっ子を撃退していたし。親には怒られたけどね」
語りながら夜叉は制服の袖ボタンをはずし、寒さに構わず腕まくりをした。コートもマフラーも取って。さっきまで寒がっていたとは思えない姿に、結城は何も言えなくなった。
「いいねぇ…。強い女は好きだ」
「…まずはあんたからだ」
夜叉は軽い助走をつけてリーダーに突っ込み、腹部にパンチをくらわせた。その勢いにしては見合わない飛距離で彼は後方へ吹っ飛び、仲間を何人か巻き込んで倒れた。うめき声をあげる彼は、ガードする余裕がなかった。
彼女はその様子に表情を変えることなく、手をクイクイッと動かした。
「さぁ、頭はやった。次は誰だ?」
その様子に仲間は互いに目を合わせ、一斉に夜叉に飛び交った。
「一応女相手だって言うのに…」
ボソッとつぶやいた彼女は手首をコキッと鳴らし、今度は助走なしで後方へはねて男たちをよけた。その距離は、結城からさらに3mほど後ろで。
「なんだこの人は…」
結城は思わず構えをとき、夜叉の戦う様子に目を見開いて硬直した。
正直、こんな強いというか人間離れした喧嘩は見たことがない。まさに圧倒的で。
(この前助けてくれた人と動きが似ている…)
あの時の彼女も、跳躍力を活かして不良たちをたった1人で翻弄していた。
夜叉はそれほどではないが、あっという間に男たちをのしてしまった。結城ですらこんなに短時間でカタはつかない。
「織原さん、大丈夫?」
手をはたきながら振り返った夜叉は、かすり傷はおろか制服を乱すことなく戦い終えたらしい。
結城はしばらく、まともに返事ができなかった。
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