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6章
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阿修羅から返事が来たのは次の日の朝だった。
「お。来た来た」
「もしかして青川さんてコ?」
「そーそー」
朝食が終わった後でスマホを手に取ってL○NEを開き、その長文に開いた口がふさがらなくなった。
「なんっじゃこのクソ長い謝罪文は…」
1つの吹き出しがこんなに縦長になっているのは見たことがない。確かに公式アカウントからのメッセージも長いが、それを遥かに超えていた。
「あのコ、こんなことで罪の意識持ち過ぎよ…。読むの大変だよ…」
驚きつつも健気で彼らしい、と笑いが込み上げてくる。阿修羅らしいと言えばらしい。
その内容は────返事が遅くなったこと、既読さえもつけない未読スルー状態で大変申し訳なかった、というもの。ざっくりとまとめると。
「さくらは青川さんを従えているというか…。妹分? 舎弟なの?」
「違うって。てか舎弟って何よ」
「いやー…。さくらの響校乗り込みの話を聞いて変なリスペクトをしてる説が俺の中で1番濃いよ」
「変なリスペクトってなんや。やんのかコラ。あん?」
「ご、ごめんて」
テーブルに肘をついて拳を握ったら、和馬は慌てて食器の片付けを始めた。幼い頃から腕っぷしは夜叉の方が上だ。ケンカで和馬に負けたことがない。…とは言え、夜叉が本気になる前に両親に止められるのだが。
スマホに目を落とすと、いつの間にか新しいメッセージが届いていた。今度はわりと標準サイズな吹き出しと文章量だ。
パッと目を通し、夜叉は涙が出そうなほほえみを浮かべた。
(舞花、目が覚めたんだ…。体もなんともないんだね。よかった…)
舞花は今、戯人族の間で朱雀の持ち物を眺めては思い出に浸っているらしい。青龍が朱雀の生前の様子を語っていたようだ。愛し合った人のことをすぐそばで感じ、傷は癒えて夜叉に会いたいと言ってるそうだ。
(私も会いたい…。舞花がいなくて、机のカドに頭ぶつけたりコケたりしたんだよ。でもそれ以上に…寂しかったなぁ…)
阿修羅は、舞花と登校するので途中で落ちあわないかと提案したところでメッセージを締めていた。
「阿修羅! 舞花!」
「おはようございます、やー様」
振り向いた阿修羅。そして────
「舞花…」
夜叉の声で、花の香りと共に現れた着物美人。ずっと会いたかった産みの親。
「心配かけんしたね。ごめんなんし、夜叉…」
「ううん」
ここでは膝から下はぼんやりと見えない舞花は、阿修羅の右後ろの空中で煙管を持ってほほえんでいた。
「…もう大丈夫?」
「大丈夫。朱雀様がいらっしゃらなくても、わっちには夜叉がおりんす。みっもとなく泣いていた自分をぶちたいくらい、情けなく思っておりんす」
「そこまで言わなくても」
ふれられないが舞花に近寄ると、彼女の花の香りが鼻腔をさらにくすぐった。自分がいかに愛されているかを実感したからか、目頭が熱くなった。
阿修羅はスクールバッグを両手で持って控えていた。こうしていると、そろそろどこぞのお嬢様に見えてくる。
「阿修羅、舞花のことありがとね」
「いえ、自分は。やー様からのご連絡に気づかなかった自分など…」
「ちょ、もうそれは終わった話…ほら暗くならない!」
阿修羅は肩を落とし、目に見えてどんよりとしたオーラを発していた。L○NEでの謝罪は彼にとって謝罪に入らないらしい。本人に直接謝らないと気が済まないようだ。
「大丈夫だから、ちょっと返事が来ないだけで気にしないから」
「本当ですか? お詫びの品など用意しなくてよいのですか?」
「いらないって! …こんなことでそこまでするって…一体戯人族でどんな教育受けて来たんや…」
夜叉が若干引いていると、舞花は口元を袖で押さえて笑った。
「阿修羅さんは主に異常に気を遣うと聞きんした。朱雀様のことを尊敬するあまり」
「は、はぁ…」
二限目の体育はバレーボールだった。暖房の効いた体育館での活動は、時間が経つにつれて白熱してきて体温が上がって汗が吹き出してくる。
「ねぇちょっと…やーちゃんと青川さんのチームとなの!?」
「あ、彦瀬。よろしくー」
「ひぃぃぃぃっ! 鬼! 鬼が2人もいるよ!」
「彦瀬…。もしもの時はわたしの盾になっておくれ…」
「瑞恵! お前許さん!」
早くもいがみ合う彦瀬と瑞恵。体育の時はポニーテールにしている夜叉は、はいはいと言いたげな笑みを浮かべた。
「彦瀬ー、当たりに来ちゃダメだよ」
「自分から行くワケないじゃん! やーちゃんのバーカ!!」
「自分とやー様のボールは本気で痛いですよ。さっき、別クラスの男子をぶちのめしました」
「なっ…」
彦瀬が本気で顔を青ざめさせた。瑞恵も引いた顔で口元を押さえた。
今日は広い体育館を半分に分けて、同じ1年の別のクラスもバレーボールを行っている。その時に、夜叉と阿修羅の強さに惹かれたモノが現れた。
金髪でチャラっとした男子生徒。聞けばバンドを組んでいるらしく。ギターとボーカルを務めていると、ご丁寧に教えてくれた。
夜叉と阿修羅が似ている上にどちらも可愛い、謎めいた雰囲気がいい、と口説いている風な言葉を語りかけてきた。
「お。来た来た」
「もしかして青川さんてコ?」
「そーそー」
朝食が終わった後でスマホを手に取ってL○NEを開き、その長文に開いた口がふさがらなくなった。
「なんっじゃこのクソ長い謝罪文は…」
1つの吹き出しがこんなに縦長になっているのは見たことがない。確かに公式アカウントからのメッセージも長いが、それを遥かに超えていた。
「あのコ、こんなことで罪の意識持ち過ぎよ…。読むの大変だよ…」
驚きつつも健気で彼らしい、と笑いが込み上げてくる。阿修羅らしいと言えばらしい。
その内容は────返事が遅くなったこと、既読さえもつけない未読スルー状態で大変申し訳なかった、というもの。ざっくりとまとめると。
「さくらは青川さんを従えているというか…。妹分? 舎弟なの?」
「違うって。てか舎弟って何よ」
「いやー…。さくらの響校乗り込みの話を聞いて変なリスペクトをしてる説が俺の中で1番濃いよ」
「変なリスペクトってなんや。やんのかコラ。あん?」
「ご、ごめんて」
テーブルに肘をついて拳を握ったら、和馬は慌てて食器の片付けを始めた。幼い頃から腕っぷしは夜叉の方が上だ。ケンカで和馬に負けたことがない。…とは言え、夜叉が本気になる前に両親に止められるのだが。
スマホに目を落とすと、いつの間にか新しいメッセージが届いていた。今度はわりと標準サイズな吹き出しと文章量だ。
パッと目を通し、夜叉は涙が出そうなほほえみを浮かべた。
(舞花、目が覚めたんだ…。体もなんともないんだね。よかった…)
舞花は今、戯人族の間で朱雀の持ち物を眺めては思い出に浸っているらしい。青龍が朱雀の生前の様子を語っていたようだ。愛し合った人のことをすぐそばで感じ、傷は癒えて夜叉に会いたいと言ってるそうだ。
(私も会いたい…。舞花がいなくて、机のカドに頭ぶつけたりコケたりしたんだよ。でもそれ以上に…寂しかったなぁ…)
阿修羅は、舞花と登校するので途中で落ちあわないかと提案したところでメッセージを締めていた。
「阿修羅! 舞花!」
「おはようございます、やー様」
振り向いた阿修羅。そして────
「舞花…」
夜叉の声で、花の香りと共に現れた着物美人。ずっと会いたかった産みの親。
「心配かけんしたね。ごめんなんし、夜叉…」
「ううん」
ここでは膝から下はぼんやりと見えない舞花は、阿修羅の右後ろの空中で煙管を持ってほほえんでいた。
「…もう大丈夫?」
「大丈夫。朱雀様がいらっしゃらなくても、わっちには夜叉がおりんす。みっもとなく泣いていた自分をぶちたいくらい、情けなく思っておりんす」
「そこまで言わなくても」
ふれられないが舞花に近寄ると、彼女の花の香りが鼻腔をさらにくすぐった。自分がいかに愛されているかを実感したからか、目頭が熱くなった。
阿修羅はスクールバッグを両手で持って控えていた。こうしていると、そろそろどこぞのお嬢様に見えてくる。
「阿修羅、舞花のことありがとね」
「いえ、自分は。やー様からのご連絡に気づかなかった自分など…」
「ちょ、もうそれは終わった話…ほら暗くならない!」
阿修羅は肩を落とし、目に見えてどんよりとしたオーラを発していた。L○NEでの謝罪は彼にとって謝罪に入らないらしい。本人に直接謝らないと気が済まないようだ。
「大丈夫だから、ちょっと返事が来ないだけで気にしないから」
「本当ですか? お詫びの品など用意しなくてよいのですか?」
「いらないって! …こんなことでそこまでするって…一体戯人族でどんな教育受けて来たんや…」
夜叉が若干引いていると、舞花は口元を袖で押さえて笑った。
「阿修羅さんは主に異常に気を遣うと聞きんした。朱雀様のことを尊敬するあまり」
「は、はぁ…」
二限目の体育はバレーボールだった。暖房の効いた体育館での活動は、時間が経つにつれて白熱してきて体温が上がって汗が吹き出してくる。
「ねぇちょっと…やーちゃんと青川さんのチームとなの!?」
「あ、彦瀬。よろしくー」
「ひぃぃぃぃっ! 鬼! 鬼が2人もいるよ!」
「彦瀬…。もしもの時はわたしの盾になっておくれ…」
「瑞恵! お前許さん!」
早くもいがみ合う彦瀬と瑞恵。体育の時はポニーテールにしている夜叉は、はいはいと言いたげな笑みを浮かべた。
「彦瀬ー、当たりに来ちゃダメだよ」
「自分から行くワケないじゃん! やーちゃんのバーカ!!」
「自分とやー様のボールは本気で痛いですよ。さっき、別クラスの男子をぶちのめしました」
「なっ…」
彦瀬が本気で顔を青ざめさせた。瑞恵も引いた顔で口元を押さえた。
今日は広い体育館を半分に分けて、同じ1年の別のクラスもバレーボールを行っている。その時に、夜叉と阿修羅の強さに惹かれたモノが現れた。
金髪でチャラっとした男子生徒。聞けばバンドを組んでいるらしく。ギターとボーカルを務めていると、ご丁寧に教えてくれた。
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