たとえこの恋が世界を滅ぼしても1

堂宮ツキ乃

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6章

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「阿修羅ってバレーボールやったことある?」

「ありません」

「そ、そうか…」

「要は返ってくるボールを返し続ければいいのでしょう? これなら自分にもできそうです」

 二限目が始まる前の放課中のこと。早々に準備ができたらしい彦瀬と瑞恵に置いていかれた夜叉は、阿修羅と体育館へ向かっていた。彼はいつも通り、長い髪を白いリボンで2つでまとめている。

 体育館につくと、夜叉たち1組のクラスメイトはほとんど人はおらず。体育館を合同で使う3組の生徒が多く集まっていた。

「あれ。彦瀬もみーちゃんもいないね」

「そうですね」

「トイレか?」

「かもしれないですね」

「ねぇねぇ1組のコたち? こんなかわいいコいたんだ…」

「は?」

 後ろから聞こえた声に2人で同時に振り向くと、見るからにチャラそうな金髪の男子生徒。身長はそこそこある。和馬と同じくらいだろうか。

「1組とはあんま接点ないからさ」

「はぁ…」

「ねぇよかったら今度、俺らのライブ見に来てよ。そこそこ名前知られてんだ」

「断る」

「阿修羅!? どしたの急に」

 あまりにも潔い断り方。確かに初対面での誘いは断るに限るが。夜叉ですら適当に理由をつけようとしていたのに。

 阿修羅は真顔で夜叉の方を見た。

「3B…バーテンダーと美容師とバンドマンには関わるなと常日頃言われておりますゆえ。もちろんやー様、口車に乗ってはいけませんよ」

 彼は男子生徒から守るように夜叉の前で盾となった。

 男子生徒の方は苦笑いだ。

「えっと…なんかごめん…。でも下心なんてないし…それにそれ、関わるなと言うより付き合っちゃいけないリストだと思うよ」

「ほら。阿修羅、恥ずかしいからやめなさい」

「俺の方こそ怪しかったでしょ。ごめんね」

「申し訳ございませんでした…」

 阿修羅はシュンとして2人に頭を下げた。また落ち込ませてしまった、と夜叉は阿修羅の頭をなでた。

「そこまで反省しなくていいから。彦瀬とみーちゃんを待っていよ、ね?」

「はい」

 阿修羅は妙に、控えめではあるがうれしそうにうなずいた。彼に尻尾がついていたら振っていそうなほど。

「あ、じゃあさ。授業始まるまで遊ばない? もうコートの準備できてるし。俺も適当にメンバー集めてくるよ」

 それもいいか、と2人がうなずいたのが悲劇の始まり。

 コートのネット越し、さっきの男子生徒が笑いかけた。

「俺、早瀬昴はやせすばる。君たちは?」

「私は桜木夜叉」

「自分は青川阿修羅です」

 1組のコートには2人。彦瀬と瑞恵が来たら入れたかったから。相手方は4人。一応、女相手だけど…というのは特に言わなかった。夜叉は自分がいるチームが、例え現役運動部相手でも負けたことはない。今回は屈強な相手ではないし、阿修羅は同じ戯人族であるし心配はないだろう。

「さて────行くよ、1組の美人さんたち」

 昴のサーブが来た────と、さてどう返そうかと考えた時。

 真横を風が切った。

「青川さん!?」

 昴たち、3組の男子たちが口を開けて夜叉の上空を見上げていた。

 え。何々。夜叉がのんきに顔を上げると、阿修羅が飛び上がってボールを殴りにかかっていた。

「あ、あしゅ…」

 名前を呼び終わる前にボールは昴の顔面一直線に、彗星のごとく向かっていた。そして────



「彦瀬がいない間にそんなことが…青川さん怪力説?」

「怪力と言うかちょーっと身体能力が高いだけ」

「へ~…。まぁ言われてみれば、今日は3組と合同なのに、有名人がいないなぁとはちょっと思ってた」

 というのを試合前に報告。

 昴は保健室にて休憩中。阿修羅も少し反省中だ。手加減はした、と言い訳めいたことをつぶやいていたが。

 休憩中と言えば。夜叉はチラリと体育館の壁際を見た。

 2つのおさげの女子生徒、徳水日奈子。図書室で声をかけられたことを思い出した。

 病弱で学校行事にはあまり参加できず、体育は決まって見学。確かに改めて見ると肌は青白い。手足もかなり細い。

(そっか。3組なんだあのコ…)

「やー様、どうしました? 試合を早く始めろと先生が」

「それはすまん。始めよっか」

 いつか彼女と話す時が来るだろうか。夜叉は体育担当の教師からボールを受け取り、高く放り上げた。
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