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プロローグ
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「よう桐生!久しぶり!よく来たなー」
大学時代の山川先輩だ。卒業してからは4年振りくらいだろうか。
「お、お久しぶりです……」
結婚式の二次会に呼ばれて新宿までやってきた時のお店だ。
仲は良かったがどうしても疎遠になってしまい、年賀状だけは欠かさず出していて、結婚の連絡を電話で貰ったのだ。
「桐生は変わってないなー」
そう言ってくれる、若かりし頃の山川先輩を見ながらオレはとても困惑している。
『どう見ても先輩だよな……夢??』
上から下まで先輩を眺めてしまった。
『確か仕事で疲れ果てて、布団に飛び込んだ所までは覚えているんだが……いきなり先輩が出てくるとはいよいよヤバイな』
黙り込んでいるオレに、山川先輩は首を傾げながら手招きをする。
「まあ、とりあえず中に入れよー」
あの頃と変わらない笑顔でオレを導いてくれた。
楽しそうな、心地良いざわめきの店内。
ドアをくぐると、彼女の顔だけがクローズアップしてくる。
『ああ、やっぱり』
忘れもしないあの瞬間。
忘れることのできないあの横顔。
身体中に電気が走って恋に落ちた瞬間。
『20年経っても一目惚れってできるんだな……』
眠る前のオレは45歳の営業マン。
目の前にいるのは出会ったときの奥さんだ。
ヤケにリアルな夢だが、この感覚を思い出させてくれて感謝だな。
「どうした?とりあえずどこでもいいから座っちゃえよ」
先輩に言われた瞬間に、足は勝手に動いていた。
「すみません。ここ良いですか?」
振り向く彼女はビックリして困った顔で答える。
「え、ええ大丈夫ですよ。でも友達がもう少ししたら来るかも……」
友達の女の子はかなり遅れてくるのは知っている。
「友達が来るまでで大丈夫なので、ここ良いですか?」
頷く彼女を確認してから向かいの席に座った。流れるような黒髪に似合う、黒いドレスが身体のある部分を強調している。
『うーん。このラインにもドキドキしたなぁ』
ときめきと、不意に締め付けられる胸の痛みに気が付かれないように、彼女との会話が始まる。
「初めまして。山川さんの大学の後輩で、桐生和馬と言います」
「私は新婦と同じ職場の如月美鈴です。このお店も一緒に探したんですよ」
何気ないひとときが心を軽く、そして熱くする。
『やっぱりこの娘じゃなきゃダメなんだな』
改めて心の底から実感した。夢なのに緊張してるなんて、どれだけこの頃から惹かれていたんだろう。
『そりゃあ20年後も頭が上がらないわけだ』
変に納得してしまった。
そんな時に新郎新婦の挨拶が始まる。新婦は全く知らない人だが、とても可愛らしく優しそうだ。二人とも嬉しそうで、とても気持ちの良い夢を見られて幸せだ。
この夢は仕事を頑張ってるオレへのご褒美かな?
感動の余韻に浸っていると奥さんから声が掛けられた
「あの……」
「どうしました?」
「もしかして歌手を目指してますか……?」
あれ?何で知ってるんだ?夢だから?
「はい!会社を辞めてアルバイトをしながらボイトレのスクールに通ってます!」
ドラックストアに勤めていたが、これまた大学時代の親友に「桐生なら歌手に絶対なれるよ!」と言われ、勢いで辞めてしまった。
「やっぱり!和馬だ!」
「えっ??」
「これ、夢とかじゃないから!」
「!?」
「二人とも昔に戻っちゃってる!」
夢じゃなかったの……?
大学時代の山川先輩だ。卒業してからは4年振りくらいだろうか。
「お、お久しぶりです……」
結婚式の二次会に呼ばれて新宿までやってきた時のお店だ。
仲は良かったがどうしても疎遠になってしまい、年賀状だけは欠かさず出していて、結婚の連絡を電話で貰ったのだ。
「桐生は変わってないなー」
そう言ってくれる、若かりし頃の山川先輩を見ながらオレはとても困惑している。
『どう見ても先輩だよな……夢??』
上から下まで先輩を眺めてしまった。
『確か仕事で疲れ果てて、布団に飛び込んだ所までは覚えているんだが……いきなり先輩が出てくるとはいよいよヤバイな』
黙り込んでいるオレに、山川先輩は首を傾げながら手招きをする。
「まあ、とりあえず中に入れよー」
あの頃と変わらない笑顔でオレを導いてくれた。
楽しそうな、心地良いざわめきの店内。
ドアをくぐると、彼女の顔だけがクローズアップしてくる。
『ああ、やっぱり』
忘れもしないあの瞬間。
忘れることのできないあの横顔。
身体中に電気が走って恋に落ちた瞬間。
『20年経っても一目惚れってできるんだな……』
眠る前のオレは45歳の営業マン。
目の前にいるのは出会ったときの奥さんだ。
ヤケにリアルな夢だが、この感覚を思い出させてくれて感謝だな。
「どうした?とりあえずどこでもいいから座っちゃえよ」
先輩に言われた瞬間に、足は勝手に動いていた。
「すみません。ここ良いですか?」
振り向く彼女はビックリして困った顔で答える。
「え、ええ大丈夫ですよ。でも友達がもう少ししたら来るかも……」
友達の女の子はかなり遅れてくるのは知っている。
「友達が来るまでで大丈夫なので、ここ良いですか?」
頷く彼女を確認してから向かいの席に座った。流れるような黒髪に似合う、黒いドレスが身体のある部分を強調している。
『うーん。このラインにもドキドキしたなぁ』
ときめきと、不意に締め付けられる胸の痛みに気が付かれないように、彼女との会話が始まる。
「初めまして。山川さんの大学の後輩で、桐生和馬と言います」
「私は新婦と同じ職場の如月美鈴です。このお店も一緒に探したんですよ」
何気ないひとときが心を軽く、そして熱くする。
『やっぱりこの娘じゃなきゃダメなんだな』
改めて心の底から実感した。夢なのに緊張してるなんて、どれだけこの頃から惹かれていたんだろう。
『そりゃあ20年後も頭が上がらないわけだ』
変に納得してしまった。
そんな時に新郎新婦の挨拶が始まる。新婦は全く知らない人だが、とても可愛らしく優しそうだ。二人とも嬉しそうで、とても気持ちの良い夢を見られて幸せだ。
この夢は仕事を頑張ってるオレへのご褒美かな?
感動の余韻に浸っていると奥さんから声が掛けられた
「あの……」
「どうしました?」
「もしかして歌手を目指してますか……?」
あれ?何で知ってるんだ?夢だから?
「はい!会社を辞めてアルバイトをしながらボイトレのスクールに通ってます!」
ドラックストアに勤めていたが、これまた大学時代の親友に「桐生なら歌手に絶対なれるよ!」と言われ、勢いで辞めてしまった。
「やっぱり!和馬だ!」
「えっ??」
「これ、夢とかじゃないから!」
「!?」
「二人とも昔に戻っちゃってる!」
夢じゃなかったの……?
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