異世界でも主人公は奥さんでした?!〜異世界でも始まる奥さん無双〜

コンビニウルフ

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第1話 タイムスリップと異世界転移?!

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 どうやらここは夢の中ではないらしい。
 美鈴さん(奥さん)はオレよりも数時間早く過去に来てしまっていたようだ。ヤケにリアルだと思ったらまさかのタイムスリップとか……

「美鈴さんは本当に未来から来たの???」

って言ったけど、オレもこの時代の人ではないから来たって表現は合ってるか分からないが。

「いつも通りの美鈴ちゃんでいいよ。真面目に『さん』付けで呼ばれると変な感じだし……」

 うちでは名前で呼び合っている。未来では高校に受かった息子と小学校を卒業した愛娘がいるが、ママやお母さん呼びは寂しいから嫌だと言われたのだ。
 オレも名前で呼びたいしね。

「オレもビックリだよ。これ元に戻れるのかな」

「わかんないけど、まぁ何とかなるんじゃない?湊と咲が心配だけど、戻れなくても未来で生まれてくるし?」

 まぁ確かに20年後にはそうなってるかもしれないが、全く同じにならないかもしれないと思うんだけど…

「相変わらず、流石と言うか何と言うか」

「ちょっと待って。褒めて無いよね?」

「落ち着きすぎじゃない?」

「和馬が来るのわかってたからねー」

「オレが夢かもって思ってたの、よく分かったね」

「だって和馬だもん」

 過去に戻っても変わらないなー。と言うか中身はよんじゅう…ゲフンゲフン。
 でも出逢った時から変わってない気がする。
最後の一言はめっちゃ嬉しいけど。

「これからどうしようか美鈴ちゃん?」

「とりあえず、この二次会終わったらカラオケに行くはずだから同じようにしてみようよ」

「確かに!とりあえず同じにしないと未来が変わっちゃうかもしれないよね」

 タイムスリップしたはずなのに、思ったよりも慌てて無いのは、オレもそれなりの経験を重ねたからかな?
 いや……奥さんがやけに落ち着いてるからだろうなぁ。
 確か二次会終わって朝までカラオケだったよな。今なら撃沈間違い無しだ。
 果たして朝まで歌っていられるかな……

「ここのカラオケ屋さん懐かしいねー」

「今もまだあるのかな?」

「今っていうか20年後だけどねー」

 他愛のない会話が不安を期待に変えて行く。
ワクワクしている奥さんを見ると、心がポカポカして自然と笑顔になってしまうのだ。
 新郎新婦の先輩たちはそのままハネムーンに向かい、大学時代の先輩たちと奥さんの友達数名でカラオケルームに向かう。
 この頃のオレはかなり気合を入れて練習していたから、トップバッターで歌わせて貰った。

「どうだった??」

「う~ん」

「ダメだった……?」

 あれっ?この頃の方が絶対に上手いはずなんだけど……
 奥さんは困ったような顔をしながらクネクネしている。

「めっちゃ照れるー」

 うん?どう言うことかな?

「この歌を聴いて、和馬のこと好きになっちゃったんだよね……」

「……オレも照れるんですけど……」

このままオールで行けそうだ……

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 若い身体って素晴らしい!
 40代半ばなら確実に寝落ちしてたはずだけど、ちょっと眠いで済むぞ。
 奥さんはここからなら1時間あれば帰れるし、2時間後にはきっと布団の中だ。
 オレは帰るのに3時間はかかるな……電車で寝てしまうと、とんでもない所まで行ってしまうから何とか頑張ろう。
 駅の改札で他の先輩たちに分からないように手を繋ぎ重ね合うと、お互いに名残惜しく自然と唇も重なり合った。

「帰ったらメールするね」

 照れながら小さく走って行く後ろ姿を見ていると、ぽーっとしてしまうのは眠いからだけではないはずだ。
 電車に揺られ1時間ほどするとメールが来た。

『この頃はガラケーでメールしかなかったよなぁ』

 なんて思いながら画面を見ると

『ゴメンもう眠くて限界。今日は本当に楽しかった。朝起きたら元に戻ってるかな?お風呂出たらすぐ寝ちゃうと思う。ゴメンね。和馬大好き♡』

 眠いのにニヤニヤしながら携帯を眺めてしまった。
 オレの返信の内容は、眠気と嬉しさの変なテンションで書いてしまった為ここでは割愛します……

「ただいま」

 実家に帰って来ると父と母が居間にいた。

「やっぱり若い!!」

 つい大声をだしてしまうと怪訝な目で見られてしまった。

『ヤバいヤバい。テンションおかしい』

 とりあえず風呂に入ってオレも寝よう。そう思いながら何とか二階まで上がってベッドに入ると、あっという間に意識を手放してしまった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「和馬!」

 揺さぶられて目を擦ると、目の前には見慣れた奥さんがいた。

「うーん。こっちの美鈴ちゃんも可愛いなぁ」
「何寝ぼけてるの!会社に遅れちゃうよ!!」

 こういう時、何故かスパーンと目が覚めるのはどうしてだろう。

「えっ?えっ?今何時??」
「とにかく早く起きて!」

 時計は普段なら家を出る10分前を示している。
 急いで着替えて玄関に向かう。これなら15分くらいの遅れで済みそうだ。

「あのさ、夢見た?!」

 慌てて靴を履きながら伝えると、コクンと頷き笑顔で手を振る奥さんが辛うじて見えた。電車も遅延してしまい会社には30分遅れ。正直、慌てすぎて会社での事はほとんど記憶にない。   
 でも、ミスを連発してしまった事は何故か覚えてるんだよな……
 帰りの電車でLI◯Eすると『お家でゆっくり話そう』と返信が来た。

「ただいま!」
「おかえり!」

 いつもの日常だ。朝は慌ててたからほとんど覚えて無いけど、笑顔と優しい声で落ち着いて行くのが分かる。
 ただ、その分眠気も尋常じゃなくやってきた。風呂で寝なかったのは奇跡としか言いようがない。

「ゴハンは?」
「ちょっとだけ休ませて……」

 布団に沈み込むように暗転した。

 目が覚めるとまだ夜なのに、窓から差すやけに明るい夜空で目を覚ました。

「月が二つある……」

 もう一回寝ようかな……
 しかし朝以上にスパーンと目が覚めてしまう光景に、今回の睡魔は勝てるわけが無かった。
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