異世界でも主人公は奥さんでした?!〜異世界でも始まる奥さん無双〜

コンビニウルフ

文字の大きさ
7 / 28

第6話 ドラゴンとの商談?!

しおりを挟む
 ニャミーさんとホフマン商店に向かった。子供たちは、年長者が下の子供たちを見てくれているので、洗濯さえ終わればお昼までは多少自由に出来るようだ。

「ホフマン商店は私も利用させて頂いています。とても親身に相談に乗ってもらっています。ただ、ロンド商会には全く歯が立たないようです」

 ニャミーさんが言うには、父から引き継いだ商店でやる気はあるものの、人族では無いため中々上手くは行っていないようだ。

「シスター、本日はどのようなご用件でしょうか?そちらの方々は……」

 物腰も低く、丁寧な対応だ。虎の縞模様の猫族。この人がホフマンさんらしい。

「本日は紹介したい方を連れてきました」

 ニャミーさんに紹介してもらう。どことなく誇らしげだ。

「初めまして、和馬と申します。今回は商品を買って頂けないかと思い、ニャミーさんにお願いして来店させていただきました。こちらは妻の美鈴です」

「妻の美鈴です。宜しくお願い致します」

 丁寧な挨拶をあまり受けた事がないのか、少し慌てたように店内に案内された。元の世界で営業をやっていて良かった。ただ、奥さんの方を見て慌てていたような……

「狭くて申し訳ありませんが、どうぞこちらへ!!」

 慌てているというよりは怯えているような気がする。振り向くと、奥さんはいつもの優しく可愛らしい笑顔だ。何に怯えてるんだ?

「この胡椒なんですが、買取はできますか?」

「お預かり致します」

 小さな袋に入れ替えた胡椒を、ホフマンさんは少量をつまんでから、入念に確認している。時々奥さんをチラチラ見ているのは、やはり魅力的だからだろう。

「素晴らしい品質の胡椒です。大銅貨7枚で買い取らせていただきます」

 大銅貨7枚は銅貨70枚。つまり7000円だ。銅貨1枚で買った物が70倍とは……

「それでお願いし……」

「お待ちください」

 オレの言葉を遮るように、奥さんは静かな声で呟いた。周りの温度が5度くらい下がった気がするのは俺だけだろうか。ホフマンさんの目が泳いでいる。

「失礼ですが、素晴らしい品質の割には正当な評価では無かったと思いますが?」

「しかし初めての買い取りとしては、かなり頑張らせて頂いたのですが……」

「銀貨1枚と大銅貨2枚が適正では?」

 流石に12000円はやり過ぎでは……

「?!それはいくらなんでも高すぎます!!」

 ですよねー。

「これから定期的に卸させて頂こうと思っています。ロイド商会にも行こうと思っているのですが……」

「……もう少し頑張らせて頂きます……」

 それから数分だったと思うが、結局1袋で銀貨1枚(10000円)での取引となった。奥さんが味方で本当に良かった……

「有意義な時間を過ごさせて頂きました。店内を拝見しても宜しいでしょうか?」

「どうぞご覧になってください……」

 奥さんはウキウキしながら店内をみている。
ホフマンさんは10歳くらい老けた様な気がするが大丈夫だろうか……?近づいて話してみる。

「グッタリしてますが大丈夫ですか?」

「あの方は何者なんですか?まるでドラゴンを相手に商談している様でしたよ……」

 流石は商売人だ冗談が上手い。後ろで奥さんの目が光った気がする。

「ところでこの道具なのですが、作ることは出来ますか?」

「どの様な道具なのでしょうか?」

 ネット検索で調べたポンプを、木の板に木炭で書いてみた。咲なら絵が上手いからもっとすぐに伝わったのに…とりあえず時間は掛かったが伝わったようだ。

「すっ、すっ、スゴいですよこれは!!!」

 今度は若返ってる。この人元気だなー。

「是非、ホフマン商店で取り扱わせて下さい!絶対に売れます!売ってみせます!」

 テンションが凄い。どうやら領主に売り込もうとしているようだ。商店を大きく出来ると目を輝かせている。野心はかなりありそうだ。こういう人(猫族だから厳密には違うが)の方が信用出来る。

「ありがとうございました!!」

 ホフマンさんはペコペコしながら最後まで見送ってくれた。ニャミーさんは大金を見ながら、同じくらい奥さんを見てぽーっとしている。

「これで軍資金ができたね♡」

「とりあえず何を買おうか?」

「もちろん、まずは美味しいゴハンだよ!」

「確かに!」

 お昼ゴハンに子供たちが喜びそうなのは……オレのスキル『百均』でホットケーキミックスと牛乳、バターとケーキシロップを人数分購入。

「やっぱり百均じゃあ生クリームは売ってないかぁ。そしたら代りにジャムを塗れば美味しいよね♡」

 奥さんはさっきの商談が成功した以上に、ウキウキしながら購入する商品を考えている。

「それにしても、よくあんな金額を提示できたね」

「話してれば何となくわかるよー」

 元の世界では、某・有名百貨店に勤務していた時に何度も売上トップになっていた。今回はお客さんではなく商人相手だが、何ら問題無いらしい。

「お互いにメリットがあるんだから、高くてもいいんだよ。いくらで仕入れたかよりも、どれだけの価値があるかってことだから」

「……」

 奥さんは『ふふっ』と微笑んだ。その横顔は小悪魔のような、ゾクリとする笑顔だった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 お昼ゴハンのホットケーキはあっと言う間に無くなってしまった。ポンポコリンになった子供たちが幸せそうに寝転んでいる。
 ニャミーさんは幸せそうに苦しんでいる。
 スープシチューのときはまだ大丈夫だったが、ホットケーキはの時は制御不能になってしまったようだ。

「こんなに美味しいもの食べたのは生まれて初めてなので……恥ずかしいです……」

「喜んでくれて嬉しい!!たくさん作ったかいがあったなぁ」

「オレもこんなに喜んでくれて良かった!」

「晩ご飯は何にしようかなぁ~♡」

「もう晩ご飯のこと考えてるの??」

「だって喜んでほしいじゃん!」

 奥さんは聖母のような、そして少女のような表情を見せてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

処理中です...