異世界でも主人公は奥さんでした?!〜異世界でも始まる奥さん無双〜

コンビニウルフ

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第7話 やってて良かった格闘技?!

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 お昼ゴハンの余韻から1時間、子供たちは各々の仕事に戻る。薪拾いや畑の世話などだ。乳幼児はおらず、1番小さな子でも4歳。皆、自分のやるべき事をわかっているのだ。

「小さいのに偉いな。オレが4歳の頃なんて遊んでるだけだったけど」

「私だってそうだよ。何とかしてあげたいよね」

 ポンプが出来れば多少だが畑仕事も楽にはなるだろう。あとは食べ物をどうにかしてあげたい。
 この世界の野菜は、地球と似ている物が多く、名前も似ている。安易だが同じように育てれば収穫は上がるのでは無いかと考えた。

『となればやっぱり肥料かな?』

 オレのスキル『百均』から園芸を選択。草花の肥料しか無かったのでそれを10個選択した。胡椒も10個購入したので残金は3600円だ。少し心許ないが、胡椒を売れば銀貨10枚(10万円)になるので当面は何とかなるだろう。

「みんなちょっと見てくれるかな?」

「「「これ、な~に~?」」」

 小さな尻尾を振る姿を見るとほっこりする。何とかお腹いっぱいになるようにしなければ。

「これは肥料と言って、野菜のゴハンになる物だよ。そうすればたくさん野菜が取れて、美味しいゴハンがいっぱい食べられるようになるよ」

「「「すご~い!」」」

 みんな目をキラキラさせている。美味しいゴハンを2回食べた事で、すんなり信用してくれているようだ。
 子供たちと一緒に肥料を撒いて土と混ぜる。すでに野菜が出来始めている所は、特に丁寧に混ぜる。子供たちと土にまみれながら1時間ほどで作業を終えた。
 その時、教会の方で騒ぎ声が聞こえた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「いい加減にウチに来た方がいいんじゃ無いのか???」

「ニャミーちゃんはロンド商会には行かせないから!」

「部外者は引っ込んでろ!!!」

「私はニャミーちゃんの友達よ!」

 奥さんがいかにもガラの悪そうな二人を相手に揉めている。ニャミーさんは子供たちを守るようにしていた。

「何をやってるんだ!」

「なんだテメェは!」

 獣人の一人がオレの胸ぐらを左手で掴んでくる。オレも左手で相手の首を取り、相手を引き寄せながら右手でも首の後ろを掴む。いわゆる首相撲だ。左のヒザ蹴りを相手の腹にめり込ませる。前のめりになった瞬間に、相手の首を左の脇に抱え込み首を絞り上げる。フロントチョークと言われる技だ。その間、もう一人を睨みながら目で制す。ゆっくり10秒数えてから離すと、そのまま相手は崩れ落ちた。

『人が相手なら5秒だけど、獣人だからな』

 もう一人も殴り掛かってきた。オレは半歩バックステップをしながら後ろ向きに蹴りを出す。カカトが相手の鳩尾に刺さり、お腹を抱えながら倒れた。

「まだやる?」

「……」

 ヨタヨタとしながら気絶しているもう一人を起こし『ただで済むと思うなよ』と言いながら二人とも逃げて行った。

「ありがとう和馬!」

「格闘技やってて良かったよ」

「……和馬さんありがとうございます。とっても強いんですね……」

 空手、総合格闘技、テコンドー を合計して17年やってる。元の世界では路上で戦う事は無いが、異世界では非常に役に立った。しかも25歳の時の身体だから非常に軽い。ただ、それだけでは無いような……

「イヤな事は美味しいゴハンで吹き飛ばしちゃおう!」

 奥さんが元気いっぱいにみんなに向かって微笑んだ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 トラブルがあったが、それから各々の仕事を終えて、ちょっと早いが晩ご飯の用意を始めることになった。子供たちは何を作るのか興味深々だ。奥さんがオレに『百均』で頼んだのはカレーだ。
 甘口と中辛を人数分購入。具材は朝のスープシチューと同じだ。肉は無いが、とりあえずベーコンで代用するしかないかな。台所で奥さんとカレーの準備をする。

「う~ん。やっぱりお肉が欲しいなぁ。和馬、猪とか狩ってこれない?」

「前も言ったけどムリムリムリ。簡単に言うけど……しかも解体とかできないし……」

「和馬さんと美鈴さんはいらっしゃいますか!」

「「???」」

 ニャミーさんが慌ててこちらへやってきた。

「ホフマンさんと、もうひと方いらっしゃいました……」

 背は低いが、ガッシリとした体格。髭はかなり長く、太い腕。ドワーフ?

「お前たちがポンプを考えたのか?!?!」

 ギムルさんと言うらしい。やはりドワーフだった。正に異世界の鍛冶職。ホフマンさんはポンプのデッサンをそのままギムルさんに見せたらしい。かなり興奮した状態で食い入るように詰めてくる。

「こいつぁかなりの代物だ。ワシらドワーフですら思いもつかなかった。どうやって考えた?!」

「オレが考えた訳では無いですが、元々住んでいた所では使われていました」

 オレが子供の頃、実家の裏には蓋をして落ちないようにしてあった。近所の家で実際にポンプを使ったこともある。嘘は言ってない。

「どんな所に住んでたんだ?他にも何かあるのか?!それから、それから……」

「ちょっと待って下さい」

 奥さんが話し出す。また温度が下がったような気がした。ホフマンさんの目が泳ぎ始めた。

「先程ロイド商会の人たちがやってきて、乱闘になりました。子供たちも怯えているので、教会の中でお話ししませんか?」

 ギムルさんもホフマンさんも顔が引きつっている。大丈夫だろうか?

「ロイド商会が……それは災難でしたね」

「ワシも年甲斐もなく興奮してしまってすまなかった」

 先ほどとは別人のようだ。奥さんが少し話すと大人しくなってしまった。

「ところでホフマンさん、お肉って売ってますか?」

「オークの肉なら飲食店に卸している分が、まだ少しあったはずです」

「胡椒を10個売りますので、そこから引いて譲って頂けませんか?」

「わかりました。すぐに持って参ります!」

 ホフマンさんはギムルさんを残して走り去ってしまった。

「改めてすまなかった。しかしポンプか。あれは世界に名を残す発明だぞ。他にも何かあれば教えて欲しいんだが」

 奥さんは夕ご飯の準備をキャミーさんと始めていた。こちらに視線を向けながら……

「ギムルさん、もし良かったら一緒に夕食を食べながら話しませんか?カレーというオレの故郷で一番とも言える料理ですよ」

「う、うむ。奥方の視線も気になるしな……」

10分ほどすると……

「はぁ、はぁ、オーク肉お待たせしました!」

 ホフマンさんが急いで持ってきてくれたようだ。カレーの準備は整った。きっと奥さんのカレー食べて驚くぞ!
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